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♪CRUSIN' STORY 1955-1960

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Crusin' Story / Various Artists

さてさて、いろんなコンビレーション盤についていろいろ紹介して参りましたが、結局のところ一番よく聴くのは何だ、と言いますと、こーゆーべたべたなオムニバスだったりします。
とにかく50年代後半のヒット曲をこれでもか、とぶちこんだ3枚組。ジャケットこそかなり軽いですが、けっこう骨太のロックンロールやロカビリーと甘々のドゥー・ワップやR&Bを網羅しているアルバムです。

まずロックンロールの王様チャック・ベリーからは、“Maybelline”、“Roll Over Beethoven” 、“School Day”に“Rock and Roll Music”。リトル・リチャードは“Tutti Frutti”に“Long Tall Sally” 、エディー・コクランは“Summertime Blues”、プレスリーから“Mystery Train”、バディー・ホリーは“That'll Be the Day”と“Rave On”、ジェリー・リー・ルイスの“Whole Lotta Shakin' Goin' On”、カール・パーキンスの“Blue Suede Shoes”、ファッツ・ドミノ“Ain't That a Shame”、ボ・ディドリー“Bo Diddley”、デイル・ホーキンス“Susie-Q”とロックンロール創成期の名曲が満載。
後に映画で有名になったリッチー・ヴァレンスの“La Bamba”、バディ・ホリーやリッチー・ヴァレンスと共に飛行機事故で亡くなったビッグ・ボッパーの“Chantilly Lace”、「夕焼けにゃんにゃん」でも使われていたボビー・フリーマンの“Do You Wanna Dance?”。ルースターズが演っていたゴキゲンなインスト、ザ・チャンプスの“Tequila”も収録。
そんなロックンロールをを生み出したプレ・ロックンロールな世代からは、ビル・ドゲットのいなたいインスト・ナンバー“Honky Tonk, Pt. 1”、 ビッグ・ジョー・ターナーの“Flip Flop and Fly”、ビル・ヘイリーはボビー・チャールズ作の“See You Later Alligator”。ボイド・べネット&ヒズ・ロケッツの“Seventeen”やジョニー・エースのぐっとくる切ない系バラード“Pledging My Love”。ロックンロールのシャープさやいかがわしさこそ薄めだけれど、ジャンプ・ブルースやジャズからブルース感覚やソウル・スピリットがロックンロールに引き継がれていったことがよくわかります。
そしてこの時代、花盛りだったのが、ドゥー・ワップ。
有名どころでいえば、ムーングロウズの“Sincerely”、デル・ヴァイキングスの“Come Go with Me” 、コースターズの“Yakety Yak”にスパニエルズの“Goodnight, Sweetheart, Goodnight”、フランキー・ライモン&ティーンエイジャーズの“Why Do Fools Fall in Love”といったあたりから、ペンギンズ“Earth Angel”、クローヴァーズ“Blue Velvet”、ハートビーツの“A Thousand Miles Away”、ザ・ファイヴ・サテンズ“In the Still of the Night” みたいなゴスペル・ルーツを感じさせるブルーで渋めのもの、ザ・クロウズ“Gee”、ダイヤモンズ“Little Darlin' ”、ザ・クレスツ“Sixteen Candles”、キャディラックス“Speedo”みたいな軽めでポップなものまでよりどりみどりの百花繚乱。
ザ・ティーン・クイーンズの“Eddie My Love” 、チューン・ウィーヴァーズの“Happy, Happy Birthday Baby”なんて女性ヴォーカルものもじわっと味があるし、後のカヴァー曲で知ったフィル・フィリップス&トワイライツの“Sea of Love”や、モーリス・ウィリアムス&ザ・ゾディアックスの“Stay”なんかはこのアルバムで初めてちゃんと原曲を聴きました。
あ、もちろん忘れちゃいけない、ブラックチャートだけではなくポップチャートをも席巻したザ・プラターズの“Only You”や“Great Pretender”,、ドリフターズの“There Goes My Baby”、サム・クックは“You Send Me ”、ロイ・オービソンは“Only the Lonely” 、キャロル・キングの出世作であるシュレルズの“Will You Love Me Tomorrow” 、若き日のポール・サイモンとアート・ガーファンクルがしびれたというエヴァリー・ブラザース“Wake Up Little Susie”・・・などなど枚挙にいとまがありません。
あと渋いところではシカゴ・ブルースのリトル・ウォルター“My Babe” 、南部っぽい泥くさい系ではロイド・プライス“Personality”、ウィルバート・ハリソン“Kansas City”、リトル・ウィリー・ジョン“Fever”なんてのも入ってます。

こういうコンピレーション盤のいいところは、ジャンルに偏らずに雑多な曲がごちゃごちゃにぶっこんであるところ。
音楽好きの世界はなぜかジャンルごとに分かれていることがありがち、例えばブルース・マニアの人たちはプラターズなんて小馬鹿にするし、ロカビリー好きの人たちはドゥー・ワップとは相入れない。チャック・ベリーやプレスリーをロックンロールの源流と取り扱うような本ではそれより前の音楽に触れることがないことが多いし、でもこうやって並んでいると全部いいんですよね。白人も黒人も、ジャズっぽいのもゴスペルっぽいのもカントリーっぽいのも。そういう雑多で多様なものがそれぞれに影響を受けたり与えたりしながら、素晴らしい音楽が生み出されてきたわけで、雑多な多様性を認めない世の中っていうのはきっとつまらないんじゃないかと思うんですがね。

この「蔵出しCD番外地」シリーズでピックアップしたような雑多なコンピレーション盤やお気に入りのアルバムをいっぱいウォークマンにぶっこんで、シャッフルして聴くと楽しいよー。
バディー・ホリーの次にアニマルズが、コースターズの次にダムドが、デイヴ・エドモンズの次にアレサ・フランクリンが来てビッグ・ジョー・ターナーになってストレイキャッツが来てその次ストーンズ、みたいにかっこいい曲が次々と鳴って、あ、なんか全部つながってるよな、全部根っこは同じだな、って思えるんですよね。


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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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