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◇みんな十九歳だった

みんな十九歳だった 

みんな十九歳だった/山川健一

このところ、通勤時のお供の音楽は毎日ストーンズ。
逃げ出したくなるような暑さと、仕事のボリュームに立ち向かうには、それなりのパワフルさと、だからってどってことないんだぜ、というある種のタフさが必要で、ストーンズはそんなエネルギーをたくさん分け与えてくれる。
そしてストーンズを聴いている時、僕は充分にワイルドでタフでしたたかで、何にも怖いものもなく、まるで世界中の全てを知っているかのように虚勢を張っていた19歳の頃のような気分にさせてくれるのだ。

ストーンズを聴きながら、ずいぶん久しぶりに読みたくなったこの『みんな十九歳だった』は、山川健一氏の第一エッセイ集。この本が出たのは、僕が19歳の時だった。僕の本棚にある文庫本は、カドが磨り減ってカバーもボロボロに剥げているから、ずいぶんとあっちこっちに持ち歩いては渇いた喉を潤すようにして読んでいたのだろう。
特に衝撃的なことが書いてあるわけではない、ロックやレゲエや、小説や絵画や旅にまつわるエッセイ。
19歳の頃は、この本に書かれていた音楽や小説をひとつひとつなぞるように追いかけながら、自分の中に取り込んでいったのだった。ストーンズに関することや、ロックに関するモノの考え方、僕がまるで自分の意見のようにしゃべったり書いたりすることが、実はこの頃に山川健一を通じて自分の中に吸収したものの受け売りだったりする。僕が今も大好きなロッド・スチュワートやボニー・レイットやジミー・クリフも、実はこの本を通じて知ったのだ。…まぁ、ストーンズだってチャック・ベリーやマディ・ウォーターズをまんまコピーしてパクリながら自分のスタイルを作り上げていったのだからいいじゃないか、と開き直ることにする(笑)。

今改めて読み返してみて思うことは、この本を書いた当時27歳の山川氏は、自分の中で消え去っていこうとする何かを、消え去ってしまう前に何とか言葉にしてつなぎとめておこうとしていたんだろうなぁ、ということ。それから、そのことを書くことによって、次に自分が踏み出すべき方向を何とか見つけ出そうとしていたのではなかったか、ということ。

第一章の「不良少年のマインドゲーム」は、こんな言葉で始まる。

“人は十九歳の時にそのピークに達するのだ、と僕は思う。仕事そのものはともかくとして、内面的には、十九歳にして既にピークに達してしまうのだ。”

そしてあとがきにはこんな文章。

“十九歳は、ゆっくりと、僕らの目の前を過ぎていった。少しづつ、ピリオドが近づいてくる。だが、いい。やがてどこかで迎えるその瞬間に、僕らはあの眩しい光のただ中へ戻ってゆくだろう。人は自分自身の幻の十九歳へ向けて、少しづつ時間を使い果たしていくのだという気がする。今までに自分が書いたエッセイを読み返しながら、僕はそんなことを考えていた。”

こんな言葉を書いてしまう27歳の立ち位置も含めて、その言葉の意味するところが、今ならとてもよくわかる。決して懐かしさや失った若さへの憧れではないし、19歳に戻りたいかといわれるとまっぴらごめんなのだけれど、19歳の頃に半ば直感的に感じたものの見方や考え方は明らかに僕の中で揺るぎようのないものとなって42歳の今もある。そしてそれは、むしろ27歳や35歳の頃よりもよりリアルな質感を持ってきているような気がしている。
「ストーンズってやっぱり最高にカッコいいっ!」とワクワクするとき、
「あんな最低な奴は大っ嫌いだ」と呟くとき、
落ち込んで、「自分みたいな奴などさっさと消えてしまえばいい」と思うとき、
或いは「あなたを愛してる」と心から思うとき、
僕は19歳の頃よりも19歳らしく、19歳の頃よりももっと19歳のまんまなのだ。






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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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