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♪ROLL ME!

Exile on Main St. 

Exile on Main St./The Rolling Stones

蒸し暑い。いよいよセミがガンガン鳴きだした。
蒸し暑い日を乗り切るにはコレに限る。
暑い日に汗だくで熱いラーメンやカレーを汗をダラダラかきながら食べるように、湿気も温度も高い、ムンムンするような熱気のこもったクソ暑い奴を汗をダラダラかきながら聴くのが最高だ。
まして、なかなか納得行かないうっとおしい気分をぶっ飛ばすためなら尚更だ。

以前も書いたことがあるけれど 、僕の中でのストーンズの№1アルバムはこれ。
結成当初の音楽的なリーダーだったブライアン・ジョーンズを失いながら『Begger's Banquet』『Let It Bleed』『Sticky Fingers』という傑作をものにしていった68年~71年のストーンズ。音楽的にも精神的にも明らかにピークはこの時代であって、それはある意味奇跡としかいいようがないような、肉体的にも精神的にもピークが一致した輝かしい瞬間なのだと思う。
どんなバンドにも(それからおそらく誰の人生にも)そういうピークが訪れる瞬間はある。しかし、多くの人が、そのピークを乗り越えることが出来ずに、あとはその輝かしい一瞬を懐かしみながらダラダラと下り坂を下るように老いぼれていくのが普通なのだ。或いは、その輝いた一瞬を何とか取り戻そうとあがいた挙句に、みっともなく過去の自分の縮小再生産を繰り返すか。若くして死んだブライアンや、ジャニスやジミヘンやジム・モリスンは、そのことのかっこ悪さを知っていたから、自ら死に至るような破滅的な振る舞いを繰り返したのだ、ということが40も過ぎると改めてよくわかる気がする。
しかし、ストーンズは、生き残ることを選んだ。そして、生き残っていくために、あえてそのピークを乗り越えようとせず、自分たちの原点に戻るようなこのアルバムを録音したのだ。
このアルバムには、革新的な解釈も華麗なフレーズも何にも無い、音質も悪い、しかし決して懐古ではない自分たち流のブルースやR&Bがこれでもかというくらいにぶち込まれている。
「いいように持ち上げられちゃいるけれど、勘違いしないでくれ。俺たちに出来るのはこの程度のもん。期待に添えなくて残念だけど、俺たちはただこんな音楽が大好きで、ただこれを演りたいだけなんだぜ。」
ってとこだろうか。
そして、このスタンスがあったからこそストーンズは自滅せず、この後35年以上もロックし続けることが出来たのだと思うのだ。

追い込まれたとき、原点に帰る。本当に自分自身が求めているのは何なのか、周囲からの期待や圧力にのみこまれずに、ただそのことだけを考えること。奴等に振り回されないためには、それから自分自身にも振り回されないためにも、そんなスタンスが必要だ。
納得行かないいろいろがあった中で、それでもこれからもタフに生き抜いていくために、そんなことを改めて思った。

そしてもう一度、コイツを大音量で聴いた。

いや~、最高だ!
いきなりシャープなギター・リフで始まる“Rocks Off”、そのままなだれ込む“Rip This Joint”の、コロコロ転がるスチュのピアノとボビー・キーズの品のないサックス。猥雑な“Shake Your Hips”、粘っこくてエロチックな“Casino Boogie”・・・。
そして、中でも一番好きなのはやっぱり“Tumbling Dice”だ。
“あいつら俺をこき使おうとするけれど、俺の冠には宝石なんていらない。
俺を転がしてくれ。そして俺のこと、転がるサイコロって呼んでくれ。”

そう、俺を転がしてくれればいい。気負った方が自滅する。
くだらんことに振り回されずに、今ある状況を楽しませてもらうことにしよう。
何にしたって、サイコロの出た目に従っていくだけなんだから。



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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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