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♪GOODBYE GENTLE LAND

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Goodbye Gentle Land / Echoes

Hello Again
Bulldog
GENTLE LAND
Bazzar
Tonight
One Plus One
Air
Sandy
Let’s Party
Red Sun
Good-bye Blue Sky

シオンやレッド・ウォーリアーズのことを書きながら、もうひとつ大好きだったバンドのことを思い出していた。
エコーズ。
辻仁成の今のメディアでの取り扱われ方を考えると、大きな声で好きだったというには少し照れがつきまとうのだけれど(笑)。
いや、当時からそうだったかもね。エコーズが好きだ、ということは友達にも大きな声で言えるようなことではなかった。♪給食のパンを届けにくる君だけが頼り、だとか♪パパママ忘れないでね、隣で寝ている僕を、なんていうポツンと取り残された気弱で孤独な少年の歌なんてのを意気がり盛りの年頃に友人たちと共有できるわけもなく、独りでこっそりとポツンとした気持ちで聴いていたのだ。
今聴いても、どうも気恥ずかしさの方が先立つ感じだな。決してかっこいいサウンドではない、分厚めで、中途半端にポップで、妙に古くささを感じる音。血湧き肉踊るような興奮や快感があるわけではないし、ほっこり癒されもしない。ブルージーにセンチメンタルに心地よく浸れるわけでもない。
むしろ、聴いていて感じるのは、あんまり思い出したくない感情だ。ポツンと独り取り残されたようなみじめな気持ちばっかり。
高校生の頃の、クラスの奴等のくだらないのりについていけずに斜に構えていたこととか、バブリーで軽薄な時代のばか騒ぎについていけなかったシラケた気分とか、毎日パン屋のトラックで小さな商店街の中の小さいスーパーを回っては八百屋上がりの息の臭い店長にねちねち小言言われたこととか、小学校の体育の授業でひとりだけ逆上がりができずに校庭でみんなの前で笑われたこととか。

このアルバムはエコーズの4作目で、エコーズのアルバムの中でもピカイチの完成度だと思う。
ニューウェイヴっぽい硬い質感で頑なに尖った感のあるファースト、ややスプリングスティーン的な要素が加わってストリート感と熱っぽさが増したセカンド、サードと比べると、ぐっと引いた感じの作風。
売れ残ってしまうペットに自分を投影してしまうペットショップで働く女の子(Bulldog)
「クリーニングしたいのは自分のハートさ。制服の汚れを落とすこの俺は誰だ?」と自問自答する、クリーニング工場で勤める男(Tonight)
アルバイトがいつの間にか本職になって高層ビルの谷間でありんこになったと嘆く営業マン(Air)
プロデューサーからの主役の座の代償としての性的な求めに応じることができなかったバレリーナなど、ずる賢く立ち回ることができずに隅っこへ追いやられてしまう人たち(Good-Bye Blue Sky)
などなど、全編を通じて都会で独りぼっちで悪戦苦闘している少年少女の物語をカットアップして語っていくテーマがある、いわゆるコンセプト・アルバム的な作り。ラストの“Good-Bye Blue Sky”のあとに再びオープニングの“Hello,Again”のルー・リード風のカッティングが始まるところなんかもかっこよかったな。
いろんな夢と現実のギャップに軋む感じと、それでもタフにクールにやっていくんだ、という静かな決意と。
やっぱり10代後半や20代前半の頃のどうしようもない気分が甦ってくる。
今はそういった気持ちを経験しての今の自分だ、と肯定することはできる。けど、やっぱりチクチクヒリヒリとした痛みは今もあって、そういうかさぶたを剥がされるような気分になってしまうんだよな。
でも、だからこそ、エコーズが好きだった自分というのは時々思い出してやらなくっちゃいけないのかも、とも思う。
供養みたいなもの、とでもいうかね。辛かったよね、心配すんなよ、だいじょうぶだからって。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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