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♪STRANGE BUT TRUE

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Strange But True / SION

役立たずの風車
からかうなよ
Once Only Love
好きで生きていたい
Machiko
花売り
カーテン
気にすることはないさ
Please Look At Me
天国の扉 (KNOCKIN’ON HEAVEN’S DOOR)

サラサラ
もの悲しい風
気にすることはないさ
カーテン
好きで生きていたい
こんな大事な夜に
記憶の島
お前だけ見られたら
What Makes You So Blue
まっさかさま
花売り

ブルースを演るわけではないけど、佇まいとしてのブルース・マンっぽさがぷんぷん匂いたっているのがシオン。
今でこそずいぶん落ち着いたおっさんになって、日常のとりとめのない出来事を歌っているけれど、デビュー当初の強烈な存在感は圧倒的だった。ホームレスみたいな小汚ない風体で噛みつくように吠えまくる姿は、そこらへんのパンクスよりももっとパンクだったし、そこらへんの自称ストリート・ロッカーよりももっとストリートにへばりついていたし、そこらへんのフォーク・シンガーよりもリアルにどん底の生活感があった。
1988年のこのアルバムは、そんなシオンが、ちょっとだけまっとうな大人に一歩踏み出したようなアルバム。
地べたをはいつくばってきたどん底からちょっとだけましになった暮らしの実感と、それでもやっぱりつきまとうやるせなさや虚しさと、それでもほんのちょっと見えてきた希望というにはやや大げさかもしれない展望みたいなものがいろんな歌から染みでてくるような。
そう感じるのは歌の内容だけではなくて音楽的な充実もあってのこと。デビュー当初のディラン的ぶっきらぼう、或いはトム・ウェイツ的にがさつな弾き語り~スプリングスティーン的疾走系から一歩踏み込んだ音楽的充実というか。
StrangeSideと名付けられた1枚目のディスクでは、ラウンジリザーズのエヴァン・ルーリー率いるタンゴ・バンドに全編を委ねた、バンドネオンを中心に据えた独特のサウンドが展開されていて、これがもうしびれるくらいにかっこよくって、シオンの歌にめちゃくちゃばっちりはまってる。
一方のTrueSideは松田文ら当時のライヴでのバンド“NOIS”を従えたラウドなロック。StrangeSideでバンドネオン・アレンジで演っていた曲のアレンジ違いなんかもあって、あー、この曲がこんな風になるんだ、ってなところもかっこよかったな。

ずいぶん久しぶりに聴いたけど、やっぱり染みるな。
シオンの歌が実際にリアルだった、25歳や26歳の頃の自分の思いがふっと甦ってシンクロする。
若気の至りで調子に乗って会社を辞めて、ヒゲぼうぼうの小汚ないツラで、とんでもなく貧乏で、建設現場の日雇い人夫の仕事でちょこちょこと食いつなぎながら、何をするでもなくぶらぶらしていた頃。
気分はシオンだったんだ。

♪いらっしゃい、行き止まり
 酒でもやりながら
 ようこそ、行き止まり
 明日でも待つさ
    (気にすることはないさ)

なんてうそぶきながら粋がっていた若造。
ちょっとだけヤバそうなところにも足を突っ込みかけて、こりゃさすがにヤバいだろ、みたいなことも幾つかあったし、うーん、今でこそそれなりにまっとうだけど、一歩踏み外してしまえば永遠にどん底スパイラルのエッジの上にいたんだな、って思い返してぞっとすることも時々あったり。
幸運だった。いろんな幸運がたまたま僕を今の場所に連れてきてくれたんだと思う。そこには自助努力なんかひとつもない、ほんとうのたまたま。風向きや、タイミングがたまたまよかっただけ。
ただね、若い頃のほんの数年そういうダークサイドな経験をしたことはいいことだったと思う。
ひょっとしたらずっとあっち側だったのかも知れない、と考えると今の立場がいかに恵まれているのかと実感できるし、この先いろんな風向きが変わったとしても“どーせ最初っからここが居場所だったんだぜ”って思えるような気もするから。明日娘がグレても、明日離婚届を突きつけられても、明日会社をクビになっても、あんまり怖くはない。いや、強がりも半分以上あるけど(笑)、ただ半分は自分で蒔いた種だったりもするんだろうからさ(笑)。

♪気にすることはないさ
 殺されるわけじゃない
 別にこれが初めてというわけでもないし
 いつかのツケだかバチだか知んないが
 たぶんそんなもんがまた回ってきたんだろ

なーんてね、思える気がする。
シオンだってきっとそんな感じじゃないのかな、なんて。




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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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