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♪SOLITUDE STANDING

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Solitude Standing / Suzanne Vega

Tom's Diner
Luka
Iron Bound / Fancy Poultry
In The Eye
Night Vision
Solitude Standing
Calypso
Language
Gypsy
Wooden Horse (Casper Hauser's Song)
Tom's Diner

 朝、街角にあるダイナーで。
 カウンターの隅に腰かけて、コーヒーが注がれるのを待っているの。
 半分くらいまで注いだところで、マスターは窓の外に目をやってそのままコーヒーを出したのよ。
 文句を言ってやろうかと思う間もなく、誰かがお店に入ってきたわ。

 「いつもありがとう。」とマスター。
 入ってきたのはきれいな女の人。
 傘を降ってしずくを切っている。
 マスターと彼女がキスを交わすのを、私は目をそらしてをして、コーヒーにミルクを注いだ。

 そうして新聞に目をやる。
 酒に溺れて死んでしまった俳優の記事、でも、誰だか聞いたこともないわ。
 それから何かおもしろいことでも載ってないかと、星占いの記事を読んだ。
 そのとき、ふっと誰かの視線を感じたのね。
 そしたら、窓の向こうに女の人が。
 私のことをのぞきこんでるの?
 そうじゃないわ。自分の姿を鏡に写してたのね。
 気づかない振りをしたわ。
 だって、彼女、スカートをたくしあげてたんだもの。
 それから、ストッキングを引っ張りあげて。
 彼女の髪には雨。

 まだまだ降り続くのね。
 朝からずっと雨音を聴いてるような気がする。
 大聖堂の鐘が鳴っている間、
 不意にあなたの声を思い出していたわ。
 ずっと昔の、真夜中のピクニック。
 まだ雨が降り始める前のこと。

 さぁ、コーヒーを飲み干して。
 電車に乗る時間が来たわ。
       (トムズ・ダイナー)

都会のありふれた、さりげなくもどこか脆くて危うい日常の風景が、さりげなく歌われるこの“Tom's Diner”。
主人公に何があったのかは具体的に語られてはいないけれど、主人公がかつてはよき時間を誰かと共有し、そして今はそれが失われてしまっていることは誰でも察しがつくはずだ。
物語の語られない部分が、聴き手が個人的な思いをたぐりよせることができるすき間を生む。多くの人が思いをたぐりよせることができるからこそ、歌は膨らんでいくのだろう。

一雨ごとに涼しさがまし、いよいよ秋本番。
なんとなーくふっと寂しくなりますよね、乙女でなくても。
そんな風情で聴きたくなるのは、物憂げで控えめで静かな音楽。
水彩画のように淡い情景描写と、か細い声、でもどこか芯の通った意思の強さを感じる声。

声の質っていうのは大事ですよね。
どんなにテクノロジーが進歩しても、人間の声にある、その人にしか出せない、誰もとって代わることのできない魅力っていうのはあって。ボーカロイド?ありえねー。音楽にとって感情/情感は切っても切り離せないもの。
上手かろうが下手くそだろうが、その人がその人の声で歌うからこそ伝わるものっていうのがある。







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コメント

[C2900]

わんわんわんさん、こんばんは。
懐かしいですね、コレ。1987年でした。
  • 2016-09-26 22:56
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2899]

うわー!懐かしすぎる!
I am singin' in the mornin’~
  • 2016-09-26 00:39
  • わんわんわん
  • URL
  • 編集

[C2895]

Bacj Bachさん、こんばんは。
そうそう、CMで流れてましたね。
アカペラということもあってか、すごく耳に残るメロディーです。
  • 2016-09-19 22:08
  • goldenblue
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[C2894] この曲

CMで使われてましたよね。誰の歌なんだろうと思っていたんですが、今日初めてスッキリしました!
それにしても、良い詞ですね。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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