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◇おとこのるつぼ

おとこのるつぼ
おとこのるつぼ / 群ようこ

群ようこさんといえば、80年代初頭、まだ男女雇用機会均等法が施行される前から、林真理子さんと並んでグイグイとひいちゃうくらいに女の本音を語りまくってきた人。
一世代前の家庭の中へ閉じ込められた女性像とはまるで違うオープンな女性像を、笑いも交えて軽やかに描いてきた人。
なんでそーゆー人の著作を読んでいるのかというと、これがけっこうアイデンティティーに関わる切実な問題で(笑)。ま、それは言い過ぎにしても。
この本でぶっちゃけられているのは「意味わからない男の生態&男社会」についてのまぁそれこそ歯に衣を着せない言いたい放題がわんさか、なのだけれど、男社会で生きている男である自分が、あろうことかそのひとつひとつが痛快で、いちいち納得してしまったのでありました。
うーん、俺、男社会大っキライなんだな、って我ながら納得してしまった。

群ようこさん曰く。
「呆れるような信用できない人間がどういうわけか昇進する。他にも彼らより誠実で仕事をちゃんとする人がいるにもかかわらず、よりによって。」
「周囲の評価がどうであれ、自分にすりよってくる人間にはとても甘い。」
「会社での地位と実力に大きな隔たりがある男性は、どういうわけかみんな威張っている。つまんないことであっても無意味に自慢し威張る。」
「なぜかハゲを異様に気にする。」
「容姿端麗ではない私のような女でさえ、隙あらば口説こうとする。」
「男のメンツで家を買い、ローンに追われる。」
「きれいで自分より目下の女には品性がなくなる。」
「『女はバカだから男の言うとおりにしていればいい。』『どんなひどい女でも外見がよければすべて許す。』などと平気で発言する男が昔はけっこういた。」
「父親はお金にルーズでギャンブル好きで子供から貯金をまきあげるような男だった。弟はその反動でドケチに育った。」
「初対面の男性に対して『こいつには勝った』などの評価をいつもしている。いわゆる精神的マウンティング。」
「中学高校で中途半端にもてた男はたちが悪い。大人になってもなんの根拠もなく自分はもてていると思い込んでいる。」
などなどなどなど。

あー、そーゆーヤツいるいる、と具体的にいろんな男の顔が浮かぶ。
こーゆーひとつひとつが全部自分自身が思う「好きじゃない男」にいちいちあてはまってめちゃめちゃ共感してしまうのです(笑)。
ところがこの本のレビューとか見るとけっこう「底意地悪い」とか「言い過ぎで気分悪い」とか、男性を中心に評判はよろしくないみたいで(笑)。ハハハ、核心を突きすぎると真面目な人からのリアクションはこうなるのかもね。
念のために言っておくと、男がキライなわけではない。
男友達もいないわけじゃない。
ただ、うーん、体育会系ってくくっちゃうとスポーツマンの方々には申し訳ないけれど、いわゆるタテ社会系の上司部下/先輩後輩/師匠弟子みたいなのがね、ダメなんです。合わないのですよ。仲が良い、もしくは信頼できる男の友人は全員文系、音楽系、芸術系だし。

今の会社は、仕事の中身としては主婦を中心とした「暮らし」に貢献することが重要な業務なのですが、実は組織体質そのものは大っキライな体育会的タテ社会で。
仕事の価値観として「暮らし」がある分まだ他所よりはましなのかもしれないけど、幹部はじめエラソーにしている男連中の考えることときたらまったく女性たちの価値観と真逆で。女性職員が顧客の立場で意見を出しても「無責任に偉そうに意見しやがって」的なリアクションになることは多々あって、ま、感情を逆なでされるような気分になるのもわからないではないけど、顧客の意見が大事とかって言ってる人たちでも結局女にモノを言われるのは不愉快らしい。
そもそも無意識下で女性への見下し、ってのはあるよね。
今でも偉いさんが朝礼なんかで平気で言うのよ。「お掃除のオバサンがな、困っておられてー。」・・・いや、ソフトに言ってるつもりなんだろうけどオッサンが大して年の変わらない女性に「オバサン」はすでにアウトだから。男性になら「オジサン」って言ってるのかな、と考えるとやはり心の底では見下しているのだと思う。
あとは役割の決めつけ。来客があれば女性に「お茶を応接室まで。」ってなんの疑問もなく命令したりね、試食サンプルを自分じゃ一切調理せずに「作っといて。」とかね、そーゆーの日常茶飯事。自分でやれば?ってね(笑)。
そういうのが見ていて虫酸が走るというか、そもそも反権力体質が身に染みているってこともあるんだろうけど、わがままで子供っぽいふるまいをする男連中よりも女性と仕事するほうが気が楽でいい。
振り返って考えてみると、自分自身であんまり幸せじゃなかったなー、と思う時期は全部男社会のど真ん中にいたときだった。
幸い今はそういう男社会の風は避けて通れるポジションにいていっしょに仕事するのもほとんど女性で、非常に居心地がいい。
でもな、これまた環境が変わったらしんどいだろうなぁ。たぶん無理。アホな男どもにあわせてのろのろしてるの、イヤだな、なんて思ってしまう。ふたまわりくらいのいわゆる草食系の男とならウマがあいそうだけど、オッサンはもうご勘弁願いたい(笑)。

重ねて言うけれど、男がキライなわけではない。
男社会がキライ。
白いものは誰がなんといおうと白いんですよ。上司が黒だといっても白は白。異論を認めず、全体と違う意見を威嚇や圧力で押し潰そうとする男社会がキライ。力でしか説得できない男社会、下のものは従うのが当前という男社会がキライ。ついでにいうとそういう男社会の中で女を武器にして男に取り入ろうとする女もキライ。
男は元来、子孫を残すためのひとつの戦略として、力をバックボーンにして獲物を捕らえてくることで女性に取り入ろうと発達してきた性。精子がとてつもない競争を経て卵子にたどり着くように競争がそもそも埋め込まれている性だ。だから、目下のものを従えたがったり、ハゲ(=外見的弱み、欠点)を隠したがったり、精神的マウンティングのようなことが起きたりするのもきっと性の中に埋め込まれているのだと思う。
狩猟採集時代、今日エサを取れるか取れないかが生きるか死ぬかの瀬戸際だった時代には、男本来の男性性は社会を運営するために有効に機能したのだろう。狩猟を効率よく行うためにはリーダーシップや主従関係の構築は狩猟の成否やグループ内の安全に有効だっただろう。今もそういう男社会の気質が、物質的豊かさを維持するために機能している側面は否定できないけれど、これからはむしろ、限られた資源を収奪せずにセーブしながらシェアしていかなくては生き残れない時代。狩猟や収奪の男性社会の原理では、一部の勝者以外は不幸にならざるをえない。すべての人がそこそこの幸せをシェアできるのは女性性の原理なのではないだろうか、と思うのですよね。
男性原理で動く世の中にはうんざりだな。これからの若い世代は今のオッサンたちみたいなことはないと思うけど。
極論かもしれませんが、男性性の原理の最たるものは戦争であり、その遂行機関である軍隊。体育教師と警察官が大っキライな僕には軍隊は絶対無理。そんなとこには絶対行きたくない。そういう意味でも戦争はイヤだな。

なんて、群ようこさんのエッセイの感想が戦争反対まで来るか、って感じもするけど(笑)、言葉だけの女性活躍社会なんてことではなく(政権の本音は、女性が働くことによる失業率の低下や税の増収でしかないの、見え見えだ)、女性の価値観をちゃんと理解した社会になってほしいものです。戦争、行きたくないからね。
この参院選はそういう意味でも大きな分水領だと思います。3分の2を取らせたら民意は改憲に賛成だったことにされてしまう。やばいですよ。




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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