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♪EVERY PICTURE TELLS A STORY

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Every Picture Tells A Story / Rod Stewart

Every Picture Tells A Story
Seems Like A Long Time
That's All Right
Tomorrow Is A Long Time
Maggie May
Mandolin Wind
(I Know) I'm Losing You
(Find A) Reason To Believe

 ときどきひどく劣等感にさいなまれてさ
 鏡の前に立っていろんな髪型にしてみたって
 どうしたところで代わり映えしない
 親父はこう言ったね
 「世界を見て回りたいのなら、まぁ止めはせんけどな。
 ただ、調子よく言い寄ってくる女にだけは気を付けるんだな。」

そんな調子で始まる“Every Picture Tells A Story”は、ロッド自身が若い頃にヨーロッパを放浪した経験を元に歌われたものらしい。
「パリは雲隠れするには最適だって聞いたけど、フランスの警察は俺をほっておいてはくれなかった。」とか「ローマはあんまり楽しめなかった。若者がいきいき過ごせる街じゃないねー。」とか「北京から上海への道中で切れ長の目の女と恋に落ちた。最高に尽くしてくれる女だったぜ。」とかなんとか、あっちこっちで若気の至りのやんちゃな振る舞いをつらつら語る歌。
がしゃがしゃと叩きつけるようなアコギのリズムにロン・ウッドのギターとイアン・マクレガンのピアノがからんでいくのがかっこいい。バタバタと粗っぽいドラムスはジェフ・ベック・グループでも叩いていたミッキー・ウォーラーだ。

この曲で始まるアルバム『Every Pictures Tells A Story』は1971年のロッド・スチュワート3枚目のソロ。
このアルバムには、タイトル曲の“Every Pictures Tells A Story”をテーマとして、2曲目以降はそれぞれの旅先で感じたことを綴ってみた、そんなコンセプトが含まれているような気がする。
おなじみ“Maggie May”、バリバリのブルース・ロックに仕上げたテンプテーションズの“I'm Losing You”、プレスリーで有名なアーサー・クールダップの“That's All Right”といった曲でのやんちゃで向こう見ずなはじけっぷりは、旅先の陽の部分。どうせ一度っきりの旅なんだから、やりたいことやりたいように全部やっちゃえ、って感じのブッ飛ばしぶり。
その一方でティム・アンダーソンの“Seems Like A Long Time”、ディランの“Tomorrow Is A Long Time”、ティム・ハーディンの“Reasons To Believe”という3曲のホーボー・ソングでのロッドは、旅先でぽつんと孤独をかみしめているみたいで。さんざん好きなこと思い通りにやってきたつもりだけど、それでも残るこのなんともいえない虚しさは何なんだろう。俺は何をやってきたんだろう。そんな気持ちの奥底をかきむしるような。
でも、旅っていうのはそういうもんなんだよな。
どこまでも突き進んでいくエネルギーと、独りになって思索する時間と、その両方があって旅は深い意味を持つのだと思う。
そして、ひととおり旅の物語を歌ったあとにロッドが呟くフレーズがとてもいかしてる。

 まぁいろいろあるけどさ
 結局のところ肝心なのは、自分自身
 誰の手助けも当てにしちゃいけない
 俺なんてかなりまともな奴だって思ったよ
 どんだけとんでもない奴らがいるんだってさ

全部を一度リセットするつもりで旅に出て、いろんな奴らに出会って楽しく過ごしたつもりでも、結局のところ最後に出会うのは、自分自身だってこと。
で、そんな風にまとめてみたあと、ちょっとシリアスになりすぎた自分への照れ隠しみたいにロッドはこんな風に歌う。

 旅で耳にしたことで
 君がこれから歩んでいく上で役に立つような言えることがあるとすれば
 ディケンズやシェリーやキーツなんて引用しない
 そんなの言い古されているからね
 「笑っちゃうしかないようなひどいことにも
 いろんな教訓が含まれてる」ってことくらいかな
 じゃあどんな、なんて言われても困るんだけどね

 ま、どの写真にも物語があるってこと
 どんな場面にもそれなりの思い出があるってこと

あっちへいくのか、こっちを選ぶのか。さんざん思い悩んだあと、シリアスになりすぎた自分を笑うように、最後は全部冗談めかして笑っちゃう。
そんなロッド・スチュワートがかっこいいと思う。





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コメント

[C2902]

ezeeさん、まいどです。
ロッドさん、カバーばっかり歌っているイメージですが、キラッとええ曲いっぱい書いてはります。
やっぱりこの時代のロン・ウッドとのコンビは最強ですね。
  • 2016-09-27 08:11
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2901]

まいどどす。
しかしロッド、ええ仕事してますね。説得力あります。
人生、旅の連続ですな!
  • 2016-09-27 00:26
  • ezee
  • URL
  • 編集

[C2897]

Bach Bachさん、こんばんは。
ロッド・スチュワートさん、ちゃらちゃらしているように見えて実は深いのです。
  • 2016-09-23 19:58
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2896]

結局のところ最後に出会うのは、自分自身・・・なんか、ジーンときちゃいました。そうですよねえ…

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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