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♪LIVING PROOF

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Living Proof / Buddy Guy

74 Years Young
Thank Me Someday
On the Road
Stay Around a Little Longer
Key Don't Fit
Living Proof
Where the Blues Begins
Too Soon
Everybody's Got To Go
Let the Door Knob Hit Ya
Guess What
Skanky

ブルースっていうのは、南部の綿花畑やなんかで奴隷として重労働を強いられてきた黒人たちが、週末にジュークジョイントに集まっては音楽を聴いて心の憂さを晴らすような機能を持ちながら発展してきた音楽。主には報われない暮らしの嘆きやなんかを歌うのだけれど、その歌のスタイルは当然、奴隷として連れてこられた黒人たちの故郷であるアフリカにルーツがある。
西アフリカには今もグリオと呼ばれる吟遊詩人がいて、彼らは歌にのせて王族の物語を滔々と歌うのだけれど、ブルースにもその「物語を歌う」ということがそもそものDNAとして組み込まれている。

バディ・ガイの2010年のアルバム『Living Ploof』、ジャック・ダニエルズを模したジャケットと“生存証明”なんていうかっこいいタイトルだけでもすでにノック・アウトなんだけど、歌われている物語がまたかっこいいのです。
1958年のデビューから実に50年以上もブルースを演り続けて来たジジイだからこそ歌える物語っていうか。

 ルイジアナのド田舎の綿花農場でのことさ
 小さな小屋の中
 中坊の頃だった

 たった二本の弦の木製のギターを
 どうやったら上手く弾けるのかいろいろやってみたさ
 毎晩家族みんなにとやかく言われたけど
 俺はこう言ってやったんだ
 「いつか俺に感謝することになるぜ。」って

 姉ちゃんは金切り声を上げたさ
 「あんた、いい加減にしなさいよ。
 目を覚ましなさい!家族を怒らせないで!」

 たった二本の弦の木製のギター
 そいつをどうやったら弾きこなせるのか、俺はつかんだんだ
 「考え直しなさい、バディ」って姉ちゃんは言う
 「うるせえよ、いつかあんた、俺に感謝することになるぜ、って言ってるだろうが。俺の言うことを聞いてくれよ。」

 それが60年前のことだ
 もう母ちゃんも父ちゃんもとっくに逝っちまった
 姉ちゃんたちや兄弟、それに孫たちといっしょに暮らしてる

 俺はチビたちにギターを買い与えてやった
 そしてこう言うのさ
 「ええか、目を閉じて弾いてみな。周りのことなんて気にしなくていい。いつかお前さん、俺に感謝することになるぜ。」
       (Thank Me Someday)

バディ自身の自伝的な内容なんだろうけど、貧しい農民からギター一本で叩き上げてきたって感じがすごいよね。しかも、親兄弟だけでなく孫にまで感謝させるというオチまでちゃんとあって(笑)。

どちらかと言えばバディ・ガイっていう人はそんなに得意な方ではなかったのです。
キーンと甲高い声と、暑苦しいスタイルのギター、アルバート・キングやアルバート・コリンズもそうなんだけど、ウギャギャギャギャギャギャーンって弾きまくるスクイーズ系のギタリストはあんまり好みではなかった。でも、たまたま中古屋で見かけたこのアルバム、これがもう予想に違わずかっこよくって。
圧倒的な貫禄に加えて、70を越しても尚バリバリの現役感。
そして、貫き通した頑固ジジイだからこそ歌える物語。
1曲め、アコースティックの枯れた感じから入って中盤ズギャギャギャギャーンと唸り出すギター。これ一発でもう参りましたっ、て感じなのに、70越してる感を全然感じさせないド級のブルースがこれでもかと大連発。“On The Road”や“Too Soon”なんかのテンションの高さや、インストの“Skanky”のタイトさは、ブルースというよりも60年代末~70年代のブルース・ロックに近い感覚。
一方で、BB・キングと共演の“Stay Around a Little Longer”や“Everybody Got To Go”といったスロウ・ナンバーがもう円熟の極みというか、ジイサンならではの深みというか。

 ママはよくこんなこと言ってたな
 「いつの日にかあなたにもわかるでしょう。辛い日々もずっと続きはしない。
 毎日は神からの授かりもの。しっかりと眼差しを向けて日々を歩むのよ。
 誰もがいつかあの河を渡るのだから。」

 誰もが故郷に帰りつく あの空のはるか向こうの天国へ
 誰もが旅立っていく 優しく手を振って

 兄貴が死んだ日、 あの歌のことを思い出したんだ
 ママがよく歌ってくれた歌
 救世主イエスが子供たちを呼んでいる歌
 誰であろうとおかまいなく 誰もが旅立っていく

 誰もが故郷に帰りつく あの空のはるか向こうの天国へ
 誰もが旅立っていく 優しく手を振って

 もう俺は若くはないけれど、 若かった頃を思い出すことがある
 真実からはぐれてさまよっていた俺を救い出してくれた幾人かのこと
 もはや死ぬことなんて恐れはしない
 いつか俺の番もやってきたら、きっとあんたに会えるんだろうな

 誰もが故郷に帰りつく あの空のはるか向こうの天国へ
 誰もが旅立っていく 優しく手を振って
       (Everybody Got To Go)

バディ・ガイがこんなにもまともなことを、しかもゴスペリーにソウルフルに歌っているなんてね、「誰もが旅立っていく」「もはや死ぬことなんて恐れはしない」なんてことを70過ぎたジイサンが歌うと、説得力ありますわ。

ただ、このジイサン、この歳でも全然枯れないのがまたすごい。
なんせこんな歌も豪快に歌っておられます。

 俺は今74歳。けどまだ何にも成し遂げちゃいない若造だ
 屈辱も受けたし、泥棒猫みたいにずるいこともやってきた
 女の尻を追いかけもしたし、それなりの足跡も残してはきた
 けど、まだまだ楽しめる
 だって74歳の若造だからな
       (74 Years Young)

ハハハ、74歳の若造ってね。
こんな脂っこいジイサンが身近にいたらきっと困るんだろうけど、本物のブルース・マンの矜持っていうかね、それこそバディ・ガイの生きざまそのものが物語になってきてる感じですよね。
願わくは、このまま100歳くらいまでぶっちぎってほしいものです。



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コメント

[C2891]

BACH BACHさん、こんばんは。
ケレン味たっぷり、っていうのが誉め言葉として通る人っていうのもずいぶん減った気がしますね(笑)。
イメージですが、昔はこういうハッタリ爺さんが町内に必ず一人はいたような。
  • 2016-09-06 00:17
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2890] ケレン味たっぷり

バディ・ガイ、まだ健在なんですね、ビックリです(^^)。昔から詞も演奏もケレン味たっぷりでしたが、今もそうみたいですね。僕もそういうおじいちゃんになりたいなあ。。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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