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◇こんとあき

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こんとあき / 林明子

ある作家さんのエッセイで取り上げられていたこの絵本。なぜかきつねが出てくる童話には昔から弱くて。新美南吉の「ごんぎつね」や「てぶくろをかいに」、宮沢賢治の「雪渡り」なんかの影響だろうか。

「あき」が赤ん坊の頃からそばでずっと見守ってきた「こん」は、おばあちゃんの手縫いのぬいぐるみ。ほころびが目立ってきた「こん」を繕ってもらうため、おばあちゃんのおうちに小さな旅に出る「こん」と4才になった「あき」。
不安げなあきをリードする「こん」がかわいい。

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おなかがすいたという「あき」のために駅弁を買いに行って、出発ぎりぎりで尻尾を電車の扉にはさまれちゃった「こん」。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」って言いながら扉の横でお弁当を広げるシーンが好きでね。

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そして、ちょっと遊びに寄った砂丘で野犬にさらわれてしまう「こん」。
泣きながら助け出す「あき」に「だいじょうぶ、だいじょうぶ」って。全然だいじょうぶじゃないって。でも「こん」は「だいじょうぶ、だいじょうぶ」って呟き続ける。
自分がどんなにたいへんでも、守るべき人を心配させたくない。そして、自分が先にへこたれるわけにはいかないんだ、って自分自身に言い聞かせるように。

何の根拠もなく「だいじょうぶ」って言われても全然だいじょうぶじゃないぜ、って思うこともある。そういう意味でこの言葉をは「がんばれ」と同じで、時には無責任に響き、相手を傷つけることもある言葉で、むやみやたらと使うものではないと思う。傷ついているのなら、だいじょうぶじゃないって言ってもいいし、言うべきだとも思う。
でも、そういうこともわかった上で、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」って言えるといいな。
相手をすべてつつみこんであげられるような「だいじょうぶ、だいじょうぶ」や、自分に言い聞かせるような「だいじょうぶ、だいじょうぶ」。元気の源になる、魔法の言葉。



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[C2819]

櫟コナラさん、こんにちは。
おばあちゃん目線でこの物語を読んだことはなかったですが、素敵なおばあちゃんですよね。
こんをおぶったあきがおばあちゃんに抱きつく場面や、きれいに繕われたこんがお風呂に入る場面もとても好きです。
  • 2016-04-24 12:11
  • goldenblue
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[C2818]

こんばんは。

「こんとあき」
わたしも大好きな絵本です。たぶん一番。
こんなおばあちゃんになりたい。
娘が生まれてすぐから、そう思ってました^^
  • 2016-04-23 21:00
  • 櫟コナラ
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[C2817]

deacon blueさん、こんばんは。
林明子さんの本、他のは知らないのですが、「こんとあき」はほんと名作ですよね。ちょっとロード・ムーヴィーっぽくもあるハラハラドキドキ。いつ読んでも泣きそうになってしまいます。
  • 2016-04-23 20:10
  • goldenblue
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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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