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♪THERE'S NO PLACE LIKE AMERICA TODAY

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There's No Place Like America Today / Curtis Mayfield

Billy Jack
When Seasons Change
So In Love
Jesus
Blue Monday People
Hard Times
Love To The People

名作とされるこのアルバムの良さは、実は長いことピンと来てなかった。
アルバムのジャケットにも象徴されるような社会的メッセージの込められたへヴィーな世界には正直少しうさんくささも感じていて、ファーストの方がファンキーで名曲ぞろいじゃね?なんて思ったりもしていたのだけれど、聴く度にじわじわと効いてくる不思議な魅力があって、やっぱりこのアルバムは数あるカーティスの作品の中でも別格だ、と思ったわけで。

メッセージそのものは、カーティスのキャリアを貫く、世の中で起きていることへの違和感や異議の申し立て。それを、熱狂的にアジって踊らせたり、高らかに宣言したりするのではなく、むしろクールに、淡々と、覚めた視線で語りかけてくるのがこのアルバムの全体的なトーンで、サウンドもよりクールで緊張感に満ちている。
カンッと硬質なドラム。独特のグルーヴを作り出すベース。粘っこく絡みつくようなワウのかかったギター。落ち着きどころを探して宙をさまようような浮遊感のファルセット。ホーンやストリングスでさえ、とてもダークで張りつめた感じがする。
音数を極限まで絞りこんだ空間の広い音の中に、ヒリヒリするような緊張感や切迫感があって、スネアの音の一つ一つ、ギターのフレーズの一つ一つに意味と意思が込められている、そんな感じがする。どれ一つ欠けても実現出来ない、そんな崇高なまでに完成された美しさがある。
その音世界が、僕に現実を見ろ、感じろ、尊厳を持て、そして考えろ、と有無を言わせない雰囲気を持って迫ってくるのだ。
このストイックな感じこそがカーティス・メイフィールドの表現姿勢なんだろうな。
けれど、一方でストイックなだけでもない。同時に、心の奥底にある熱いものがそのクールな音空間の中からジリジリと焼けつくように込み上げてくるし、更にその奥底にある優しさや愛がにじみ出していて。
人間の尊厳。
その尊厳を守るための公正さ、公正さを守るための理解と融和。
そういうものの大切さを音楽を通じて伝えたい、という意志がサウンドを貫いているように思えるのだ。
2、3、4曲目と続く流れの美しさなんて本当に圧倒的だ。
ロックとかブラック・ミュージックとかそういうジャンル分けすら無意味と感じる、ただただ美しく、じっとりと熱を帯びた音楽だと思う。

海の向こうでは、大統領選の候補者選びがかすまびしい。
貧富の格差が拡大していくばかりの新自由主義社会の中で、働いても働いても豊かにならない層が現状の政治に不満が溜まり、思いきった発言をする人が世の中を変えてくれるのかも、と期待してしまう気持ちはわからないではないけれど、例の不動産王のおやじは、絶対に労働者や貧困層の味方ではないと思うよ。公正のための理解力などまるで持ち合わせず、権力を持ったとたんにそれをふりかざしまくるようなタイプだと思う。
カーティス・メイフィールドが訴えていたようなこととは真逆の世界。
アメリカの大統領の全世界への影響力を考えると、アメリカ人だけで選ばれちゃ困る、日本人にも選挙権くれよ、なんて正直思っちゃうのだけど(笑)。
まさかあの男を大統領に選ぶほどアメリカ人は愚かではないと願いたい。




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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