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♪VOLUNTEERED SLAVELY

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Volunteered Slavery / Rahsaan Roland Kirk

Volunteered Slavery
Spirits Up Above
My Cherie Amour
Search for the Reason Why
I Say a Little Prayer
Roland's Opening Remarks
One Ton
Ovation and Roland's Remarks
A Tribute to John Coltrane: Lush Life/Afro-Blue/Bessie's Blues
Three for the Festival


これはジャズのレコードなのか?というのが、最初にこのアルバムを聴いたときの感想。
のっけからタンバリンとウッドベースのリズムに会わせて野太いコーラスで始まり、テーマを繰返し循環させていくファンキーで力強い演奏の“Volunteered Slavery”、途中ではなぜか“Hey!Jude”のフレーズがはさみこまれる。2曲め“Spirit Avobe”もゴスペルっぽいコーラスとピアノがリードするソウルフルな曲。3曲め“My Cherie Amour”はもちろんスティーヴィー・ワンダーのあの曲で、ボサノヴァっぽいリズムにフルートの音色がかわいらしく、コーラス隊といっしょに歌っちゃう“Searh for the Reason Why”も楽しい。5曲めはバート・バカラック、というよりはアレサ・フランクリンでおなじみの“I Say A Little Prayer”。これもジャズ・ロック的にイケイケのめっちゃ疾走感のある演奏で、アドリブ・パートではぐいぐいとぶっ飛んでいって。
いわゆる典型的なフォービートのジャズとはまるで感触が違う。ジャズというよりはインストのR&B。
でもどこをどう切っても、ローランド・カークという一人の演奏者の生の息づかいが聞こえてくるような音楽なんだな。
B面はライヴなんだけど、ここではテナー・サックスやフルートの他にストリッチやマンゼロなど何本もホーンを加えて一度に吹いちゃうという曲芸まがいから、コルトレーン・マナーのいわゆるシーツ・オブ・サウンド的なロング・トーンを吹きまくったり。
この一筋縄ではいかないアクの強さは、一度はまると病み付きになってしまう感じがあります。
特にB面の“One Ton”なんてもう圧倒的ですね。
何ていえばいいんだろうね。
つばもよだれも垂らしながら延々とソロを吹ききってしまうような馬力や、どことなくおかしみのあるユーモラスさ、それに触れば壊れてしまいそうなとても脆くて美しい叙情や、ドロリととぐろを巻くようなダーティーな感情。
そんな様々な感情が、カークさんの肉声のようなホーンの音色を通じて聞こえてくると、ぜんぶありだよな、って気分になるのですよね。
粋やかっこつけだけじゃない、ため息もうめき声も鼻水もよだれもぜーんぶ込みの「生」。
でも、生きているっていうのはそういうものなんですよね。
ひとつの感情では割りきれない複雑な気持ちが絡み合いながら何とかそれに折り合いをつけていくもの。
おいしいものを食べることも排泄も一人の人間の中に普通にあるもの。涙もよだれも等価なもの。「愛してる」とささやいた唇と同じ唇で罵りの言葉が放たれるもの。
一定の規範の中でそういうものを表に出さないことをよしとする考え方もあれば、そういうことも含めてさらけださなくては生の実感を保つことができない人もいる。それらの配分の在り方は人それぞれにオリジナルであっていい。
カークさんの音楽には、そんな「何でもありだ。」というメッセージがたくさん含まれていると思う。
「常識に縛られるなよ。型通りに満足するなよ。」「感じたことを感じたままにさらけだすことができなければ表現する意味などないんじゃないか。」って。
そして、この自由さとさらけだしさこそがジャズの本質だろう、って思ったりするわけで。


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コメント

[C2918]

BACH BACHさん、こんばんは。
ローランド・カークの演奏で一般的に一番よく知られているのは、クインシー・ジョーンズの“Soul Bossa Nova”(東京モード学園のCMで流れてたやつ)のフルートいうことになるみたいですが、ああいうミクスチャーな感じのものも当時はたくさんあったんでしょうね。
このアルバムのソウルっぽさは、レーベルがアトランティックということもあるのでしょうか。ジャズの名門レーベルからは出てこなさそうな音のような気もします、あんまり詳しくないけど。
  • 2016-10-30 00:24
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2917] これは最高!

モダン以降のジャズって、けっこう色んな音楽があったらしいですよね。でも、レコーディングされる時は「いかにもジャズ」っていうものを要求されたらしくって、そういうものばかり残っちゃった、みたいな。ローランド・カークも、このレコード以前のものは、普通のジャズをやらされたレコードがけっこうありますよね。「好きな事やりたいなら、売れてからやってくれ」ということだったのかも(^^)。

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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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