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♪YOUNG AMERICANS

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Young Americans / David Bowie

Young Americans
Win
Fascination
Right
Somebody Up There Likes Me
Across The Universe
Can You Hear Me
Fame

1975年。デヴィッド・ボウイが突然このアルバムでソウル・サウンドを演りだしたとき、正直世間の反応はどうだったんだろうか。
今でこそ「変わり続けていくことがボウイの表現の偉大さだ」ってことになっているけれど、ミック・ロンソンを従えてのスパイダーズ・フロム・マーズのサウンドが好きだった人からしたらずいぶん戸惑ったんじゃないだろうか、という気がする。
いきなりソフトな音色のサックスとパーカッションだもの、ギャーン、ギュワーン、を期待したら肩透かしを食らうよね。それとも、それまでの作品にもソウルっぽいとは言えないこともない曲もあるから意外と違和感はなかったのかな?どうなんでしょう。
ま、それはともかくとしても、どうもいまひとつボウイさんの凄さがあまりうまく理解できないままの僕にとって、一番好きなボウイさんのアルバムはこれなのです。

デヴィッド・ボウイというアーティストの存在を知ったのは、僕たちの世代ならほとんどそうだと思うけど『Let's Dance』でした。しがない高校生が共感するにはあまりにもきらびやか&ゴージャスでモテモテ感全開、ああ、こういう人もいるんだね、程度の感想で、友人が「ギター・ソロがすごいんだ。」っていってそれがスティーヴィー・レイ・ヴォーンだったなんてことを知るのももっと先のこと。
当時はいわゆる第二期ブリティッシュ・インヴェイジョンなんて呼ばれた英国産のポップスが全米のヒット・チャートを席巻していた時期でもあって、ABCの“Look Of Love”とかスパンダ―・バレエの“Gold”とかそういうのと同じ種類のヒット曲として“Let's Dance”や“Modern Love”を聴いていた記憶があります。
そういうわけで、どうしてもデヴィッド・ボウイ=ソフィスティケイテッドされた白人ソウルのイメージが強くって、そのイメージに一番フィットするのがこのアルバム、ということなんだと思う。
今思えばあの頃雨後のタケノコのように続々と出てきていた、ソウルっぽい英国系バンド・・・ABCやスパンダーバレエはもちろん、ヒューマンリーグやカルチャークラブ、ブロウモンキーズ、シンプリーレッド・・・っていうのは全部デヴィッド・ボウイの影響だったんだな。しかもその下敷きになったのは実はこのアルバムだったんだな、って。

オープニングは、パーカッションの効いたリラックスしたリズムのYoung Americans。 2曲目Winはボウイ的な浮遊感を残しつつもソウルフルな女性コーラスが耳に残るミディアム・スロウ。続いて、ソウルっぽくファルセットで歌われるファンク・ナンバーFascination。カルロス・アロマーのギターのカッティングがなんともかっこいいな。RightにしてもFameにしても、このカルロス・アロマーのギターの音の気持ちよさはこのアルバムの肝というか、ひょっとしてボウイさん、最初からソウルを演ろうとしたのではなくて、カルロス・アロマーと出会ったことでこういう路線で行ってみようかと考えたんじゃないか、って思えるほどだ。
タイトで気持ちのいいリズム隊はウィリー・ウィークス&アンディ・ニューマークの鉄壁コンビ。この二人はロン・ウッドの1stソロでも叩いていてそこで知り合ったんだろうか。ジョージ・ハリソンの方が先かな?ウィリー・ウィークスはダニー・ハサウェイの『Live』、アンディ・ニューマークはスライ&ファミリー・ストーンの『暴動』で弾いているから、当時のソウル好きからすれば一緒に演ってみたいプレイヤーだったことは間違いないだろうけど、この余裕のあるリズム隊の気持ちよさがこのアルバムが好きな理由でもあります。デヴィッド・サンボーンが吹きまくるサックスも気持ちいいしね。
そして、なんといってもかっこいいな、と思うのは、アルバムの中では浮いた存在感のある“Across The Universe”だったりします。ビートルズのふわふわとさまようような浮遊感のある原曲とはまるで異なる、シュールな絶望感を漂わせた重いアレンジ。この曲がかかると世界の景色が塗り替えられてしまうような深みのある音。震えるヴォーカル。その震えのひとつひとつに、深い意味が込められているような、そんな感じにこちらの心も震えます。ハッタリかも知れないんだけど、騙されてもいいや、くらいの説得力がありますね。んで、そこにかぶさってくるジョン・レノンのシャウトがもう神的にかっこいい。このジョンを聴くだけでもこのアルバムの価値があると思う。

・・・なんて、ボウイのアルバムについて結局客演ミュージシャンのことばっかり書いてしまう僕は、やっぱりボウイさんの表現そのものをまるで理解していないのだろうけど。
ただなんとなく思うのは、デヴィッド・ボウイーっていうアーティストは、「いい音」「その時のカッコいい音」にはとても敏感なミュージシャンだった、ということだ。ミーハー的なまでに、ディラン~グラム・ロック~ソウル~ブライアン・イーノ~ナイル・ロジャースと、その時かっこいい!と思ったサウンドを貪欲に取り入れていくのが姿勢の根本。
「その時にいいと思った音を演る」ということだけがポリシーであって、実は進化だの物語だのなんていうのはその時々でテキトーにでっちあげたハッタリだったんじゃないのか?まぁハッタリという言い方が悪ければ壮大なジョークとでも言うべきか・・・なんてことをふと思ったりもするんですよね。非難しているわけではなくって、そういう壮大なジョークっていうのはロックンロールっぽくてかっこいいよな、ってことなんだけど。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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