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♪QUADROPHENIA

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Quadrophenia / The Who

I Am The Sea
The Real Me

Quadrophenia
Cut My Hair
The Punk And The Godfather
I'm One
The Dirty Jobs
Helpless Dancer
Is It In My Head?
I've Had Enough
5:15
Sea And Sand
Drowned
Bell Boy
Doctor Jimmy
The Rock
Love, Reign O'er Me

冷たい冬の風が容赦なく吹いて嵐になりそうな海の音。
遠い叫び。
そこへ、ジョン・エントウィスルのベースがガツーンとと唸りをあげて、キース・ムーンがドカドカと叩きまくる。ロジャー・ダルトリーがシャウトを決めて、ピート・タウンゼントがジャキジャキと空気を切り開く、オープニングの“The Real Me”。
頭の中、真っ白になる。
この瞬間のためにこのアルバムがあるといっても言い過ぎではないくらいかっこいい。

このアルバムにある怒涛の勢い、圧の高さは圧倒的だな。聴いているうちに気を失いそうになる。あっち側の世界へトリップしちゃうような気分になる。
聴き終わったあとには、トータルの物語性やそれぞれの楽曲の細部とかよりも、ドドドドドーンと圧倒されてしまった印象だけが強く強く残る。

ザ・フーというのは不思議なバンドだ。
それぞれがそれぞれに好き勝手にやりたい放題にやっているようでいて、その4人の演奏がまとまるとものすごい破壊力を発揮する。
ラブ・ソングなど一曲もない辛口で抽象的で哲学的な世界観と太くて荒々しい音の塊、一見融合しそうもない繊細さと豪快さが見事に同居している。鋼鉄の塊みたいに重く、かみそりみたいにシャープで、しかし頭はとてもクールで冴えている。愛も憎しみも高尚も低俗も道徳も不道徳も希望も絶望も全部、しかもそれは裏表や左右の対になる関係性ではなく、地続きの同じ場所で入り混じって見る角度によっていかようにも見えるようにして存在している。
まるで難解な抽象画みたいに。
でも、わかりにくい抽象画だからこそ、非現実的な景色をそのまま伝えてくれるようなところがあって。
世の中って実際そうだもんな。
誰かが100%の敵で誰かが100%の味方なら、或いは何かが100%の正義で何かが100%の悪ならば、そんなにわかりやすいことはない。現実を単純化してそのように解釈してしまうことも可能だろうけれど、それは単純な風景画みたいなものでしかなくって、現実はやっぱりもっと複雑に入り組んで混沌としている。
そういう場所にいるんだ、そういう場所から物を考えなくてはいけないんだ、ということをザ・フーの音楽は示唆してくれるのだ。
そして、その複雑で混沌とした世界を渡っていくためにやるべきことの手掛かりとして、好きに、思った通りにやってみるのもアリなんじゃないか、って思わせてくれる。



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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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