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◇憲法なんて知らないよ

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憲法なんて知らないよ / 池澤 夏樹

「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」


これ、私たちの国の憲法の前文。
残念ながら、古い言葉で小難しく書かれているので、正直疲れちゃいますよね。意味を理解する前にしんどくなっちゃう。なんか自分の暮らしとは関係のない理屈がいっぱい並んでいるような気がしてしまう。
そんな憲法を、難しがらずに読んでみましょう、もっとわかりやすく今の言葉に翻訳してみましょう、という意図で書かれたのがこの本です。元々2003年に単行本で出版されたときのタイトルは『憲法なんて知らないよ―というキミのための「日本の憲法」』。元々は英文で書かれた日本国憲法を、英文から現代文に起こしなおしたものなのだそうだ。
父親は長く労働組合の委員を任され、母親は生協の黎明期に地域の委員をやっていたような家庭に育ったこともあってか、憲法というと、とにかく素晴らしいもの、護らなきゃいけないもの、という刷り込みがあったのですが、では憲法にどのようなことが書かれているのかちゃんと読んだことがあったのか、というと、なかったです。やっぱり難しい法律用語が並んでいる、という印象があって。
現政権の、憲法の精神を根底から覆すようなキナ臭い動きに、やっぱり国民として読んでおかなくっちゃな、と改めて手に取ってみたのですが・・・なるほど、そういうことが書かれていたのか!と目からウロコ。
そして改めて、ええこと書いてあるやんか、と。

清志郎が昔、「俺達の国の憲法は、ジョン・レノンみたいだろ。」って言ってたけど、ほんとそうなんですよね。
前掲の「前文」、まず最初に宣言されていることが「政府によって再び戦争が起きないよう、この憲法を制定する。」こと。この憲法を制定するに至る背景に戦争を起こした国への痛烈な反省がまずあるということはとても重要なことだ。
次に書かれていることは「国民から信頼を託されて政府は運営される、それは世界の人々の基本的な考えである。」ということ。ここの文脈を丁寧に拾えば、いくら国会で過半数を持っているといっても国民の8割が反対または保留を意思表示しているような法律を通すことはできないはずなのです。
そして、「全世界の人々が平和な暮らしを望んでいること」を信じて「他の国の主権を侵さない、また侵されない。」ことも当然の考え方としたうえで、「世界がずっと平和であるように」という願いを「崇高な理想」とし、「そのために努力する。」と宣言している。
憲法を揶揄する人はよく“理想主義的すぎる”なんて批判をするけれど、そもそもこの憲法は理想を高らかに掲げているわけです。国は利己的になりがちなもので、他国の意思をも無視したがるもの、戦争を起こす可能性を持っているもの、を前提として、そうならないための誓いを立てたのがこの憲法前文。まずは旗をしっかりと掲げて、そのために努力しよう、と私たちの国は69年前に誓っているのです。
そう考えると経済制裁や武力行使といった勧善懲悪的な考え方や、そもそも隣国や非民主的とされる国を敵視すること自体が、高い理想を掲げたこの憲法の精神からは実ははずれているのだと思えて来ます。
もちろん現実を直視したときに、自国を守るためや世界秩序を維持するための武力保持までを否定するわけではありませんが、憲法前文にかかれた精神から言えばあくまでもやむをえないものと言えそうです。少なくともこのことは、やたらと威勢よく隣国近隣国の脅威を唱える人は知っておいてほしいもの。ほんとうに必要なのであれば、やはり解釈を都合よく捻じ曲げるのではなく、改憲、もしくは制憲するところからちゃんと議論をするべきなんでしょうし、ただ、そうするにせよこの憲法で掲げられた前文の精神はそうやすやすと変えるべきではないと思うけれど。

それから、今回初めて知ったのですが、私たちの憲法にはこんな条文もあるんですね。
第11条
「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」
第12条
「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」
第97条
「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」


自由や権利は、ちゃんと日々意識しておかないと、権力を持っている側に簡単に侵されてしまうものだ、という前提がこの条文の背景には感じられる。自然に与えられるものではなく、日々の努力で維持すべきものだということ。一方で国民も利己的でわがままであることを前提に、公正に主張をすべきもので利己的な濫用をしてはいけない、ということにもクギを刺している。
13条以降に述べられる、平等権、自由権、社会権、請求権、参政権といった基本的人権の保障の考え方としてこのような条文があり、最高法規内の97条で改めて「これは人類の長年の成果であり、永久の権利だ」とわざわざもう一回言っている。
こういうことを国の設計図としてちゃんと持っている国で生まれ、暮らしているということは、人類誕生以来この地球の上で生まれては死んでいった数えきれないくらいの人々のうちでは本当に恵まれた、本当にありがたいことなんだと思います。
だからこそ、日々の努力で維持しなくては、この大切な考え方を条文通りに永久の権利として「将来の国民」に手渡していかなくてはいけないな、と・・・。
そのためにできることって何だろう?
今起きていることで、そのことを妨害していると思えることは何だろう?
おかしいと思ったらNOの意思表示を。その意思表示が、ちゃんと権利として許されているうちに。
と、そんなことを考えつつ、明日、文化の日。



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コメント

[C2690]

名盤さん、こんばんは。

第十二条の自民党改正案。
「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、
国民の不断の努力により、保持されなければならない。
国民は、これを濫用してはならず、
自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、
常に公益及び公の秩序に反してはならない。」

なるほど、奨励的なニュアンスが一変、禁止項目になっていますね。微妙なようでこの違いの含みは大きいです。

それよりもっと怖いのが改正99条の3。

「緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の
定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の
生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発
せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。
この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、
第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、
最大限に尊重されなければならない。」

最大限尊重とはあるものの、この条項を当てはめれば何でも憲法違反にできそうですね。
自民党がいかに今の憲法を苦々しく感じ、国民を国に従わせたいかがよくわかります。
怖いですね。
  • 2015-11-03 23:18
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2689]

自民党の憲法草案では12条は変わっています。
だから自民党政権は止めるべきだと思っています!!

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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