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◇今日もていねいに。

本屋さんに行くと、たいがいのお店でいわゆる「自己啓発系」のコーナーが設置されている。
「◯◯になるための△△の方法」「人生を○○にする△△の言葉」「○○な人の△△な考え方」etc.etc.・・・
僕はこの手の本が好きじゃない。時には嫌悪感すら抱いてしまう。
そんな本を読むだけで生き方が変わるなんてありえないし、その程度でコロッと変わるようにこれまで生きてきたつもりもない。そもそもそんな本に頼ってお手軽に人生の極意をいただこうなんて姿勢そのものが人生に負けているんじゃないか、と思っていた。

でも、その日、僕はふらりと吸い寄せられるように、そのコーナーの前に立っていたのだ。
立て込んだ仕事が一段落して、久しぶりに外出先から直帰する夜に久しぶりに本屋さんに立ち寄った日のことだった。
ちょっと無理して頑張った分の溜まった疲れがどっと出てきていたし、人間関係のギクシャクというかちょっと上手くいかないことも続いて落ち込み気味だった。
パラパラと手に取った本の言葉のひとつひとつが妙に沁みてね、、、いくつかの本の中から一冊、この本を買った。

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よりぬき 今日もていねいに。 / 松浦 弥太郎

沁みたのは、例えばこういう言葉だった。
【自分のデザイン】
いったい自分はどれだけの荷物を持てるか、キャパシティを知っておくことはとても大切です。例えば人づきあいの量。所有するモノの量。仕事の量。
そもそも人は求められる生き物です。会社はたくさんの仕事を求めてきます。家族やさまざまな人間関係も、さまざまな役割を求めてきます。それにどう応えるか、応えないか―正しい判断をすることが、自分の暮らしと相手を守ることにつながります。

【見返りを求めない】
親切も、気遣いも、手助けも、すべては相手への愛情表現。あなたが自分の意思でやりたくてやったことです。なにがあってもそれに対して、相手からの見返りを求めてはなりません。
相手が応えてくれようとくれまいと、自分の幸せとして親切にする。尽くす。力を貸す。このスタンスが守れない人は、いっそなにもしないほうがいいくらい。

【一年先を考える】
人間関係は、今日や明日のことを考えるよりも、一年先のことを考えると上手くいくような気がしています。
結果を急いて対話をしてもつながりは強くならないし、うまくいっていない関係も改善されません。まずは対話をし、次に自分が行動してみせる。対話を重ねると同時に、繰り返し行動で示す。この二つを繰り返すことでようやく相手も変わります。人とかかわるときには効率など一切考えず、時間がかかるものと腰を据えた態度でのぞみましょう。
一年先というものの見方をすれば、なかなか変わらない相手に焦れる気持ちも消えていくでしょう。



自分が引っ掛かった言葉が何だったのかを考えてみて、自分の気持ちのどこが弱っているのかがなんとなくわかった。
自分が今、なんで疲れているのか、その原因がわかっただけでも、じゅうぶんに回復の糸口がつかめる。
なるほど、そういうことか。
他人が自分の思い通りに動くはずなどない、当たり前のことだけど、どこかに「自分が正しい」を押し通そうとするようなところがあって、必要以上に力が入っていたのかもしれないな。「自分が正しい」という主張の裏に、「お前ら、バカ」という態度がにじみ出ていたかもしれないな。相手が素直に受け止められなくなるような。
そのことに気づけたことは、大きな収穫だった。
弱っているとき、言葉に触れるということは大切なことだな。
この手の本を必要とする人をちょっと小馬鹿にしていたけれど、なるほど、自分がその立場になってみると、こういう類の本の有用性というのは身にしみてわかるものだ。

ただ、書かれていることを盲信してはいけない、とも思う。
大半は人として当たり前といえば当たり前のことがほとんどなので、内容そのものについては否定はしないけれど、まるで高尚なお坊様のお説教のような、ややもすると理想論に走りすぎた言葉もたくさんで、ちょっと鼻につくというか、上から目線のプチ成功者の自慢話的要素もあり、著者自身が本当にこんなこと実践できているのかしら?とも思ってしまう。すべて実践できているとすれば、それはそれでかなり嫌な感じだ(笑)。そんな人はかえって信用できそうにない。
書かれてある言葉をすべて真に受けて実践しようとはしないほうがいい。それはかえって自分自身をがんじがらめにしてしまう気がする。
この手の本は一種のお薬みたいなもの。依存しちゃいけない。
回復したら気に留まった言葉だけをいくつかメモして、さっさと古本屋に売り払ってしまおう。それがこの手の本との正しい付き合い方なんじゃないかな。


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コメント

[C2676]

檪コナラさん、こんばんは。
「気にしない練習」、いいですね。
僕も読んでないけどいいなと思ったタイトルの本、いくつかあります。「置かれた場所で咲きなさい」とか。

疲れているときには気持ちもマイナスになりがち。
そういうときに処方薬になるような言葉をいくつか持っていると楽になれますね。
  • 2015-10-16 23:35
  • goldenblue
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  • 編集

[C2675]

つき子さん、こんばんは。
松浦弥太郎さん、お好きですか?
お洒落で誠実そうな人だとは思うけど、どこか胡散臭い印象を持ってしまうのは、僕が素直じゃないからでしょうか(笑)。
気持ちを整える、っていい言葉ですね。
そういう余裕を持たないとねー。
  • 2015-10-16 23:30
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2674]

こんにちは。

この手の本、たくさん出ていますね。
でもわたしもgolden blueさんと同じで、
まるごと信じてしまうのは、かえって苦しいだろうな~と思います。

>お薬みたいなもの・・
それがちょうどいいのでしょうね。
わたしはタイトルだけで薬になっている本がありまして、
対人関係でザラっとしたときには「気にしない練習」と読んでもいない本のタイトルを心の中で三回唱えます。結構効きますよ。笑


  • 2015-10-16 13:41
  • 櫟コナラ
  • URL
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[C2673]

本のタイトルだけ見て、弥太郎さんっぽいタイトルだなと思って誰が書いてるのか見たら弥太郎さんだったわ。ハハ。今日もいいお天気。気持ちを整えていってらっしゃいませ。
  • 2015-10-16 07:10
  • つき子
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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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