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♪STRAY

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Stray / Aztec Camera

Stray
The Crying Scene
Get Outta London
Over My Head
Good Morning Britain
How It Is
The Gentle Kind
Notting Hill Blues
Song For A Friend

ようやくあたたかくなって春の気分。こんなあたたかい日やまだまだコートが手放せない肌寒い日をくりかえしつつ、春が広がっていく。
この時期になると聴きたくなるんですよね、アズテックカメラ。
アズテックカメラの名作といえば当然、青春のきらびやかさとせつなさを織り込んだいわゆるネオアコの金字塔『Highland,Hard Rain』、“All I Need Is Everything”や“Still On Fire”といったヒット曲を生み出した『Knife』、ソウルに急接近した『Love』といずれも捨てがたい名作揃いなんだけど、僕が一番シンパシーを抱いてしまうのはその後の4作め『Stray』なのです。

『Highland,Hardrain』をリリースした1983年、ロディー・フレームはわずか19才。その後のネオアコ/渋谷系での持ち上げ方で消費され尽くしてしまった感はあるけれど、あのアルバムは本当に“青春”というような表現がぴったりのキラキラ感やウキウキ感と、せつなさや焦燥感や若さならではの絶望感が散りばめられていて、いつ聴いてもキュンとしてしまう。若さの頂点にいたロディー・フレームならではというか、二度となぞることができないような感情を見事にアルバムの中に閉じ込めることに成功していると思う。おそらくなんだけどロディー自身も同じような煌めきを持った作品は作れないだろうとわかって作ったような気がするんですよね。
そういう場所からスタートしたロディー・フレームのキャリアはある意味残酷なまでに荊の道だったのではないだろうか。
翌84年のセカンドは前作の延長上にありながらもあえてポップなフォーマットを意識しつつもマーク・ノップラーという渋めのプロデューサーによる落ち着いた音である程度大人への脱皮をはかり、3年のブランクを経た87年の3枚めの『Love』では当時意識しなかったはずはないポール・ウェラーの向こうを張ってのソウル・サウンド、とどんどんスタイルを変えていったのは、超えることができるはずもない『Highland,Hardrain』のイメージをさっさと捨てて、できるだけ遠い場所へ行こうとしたのではないかと思えるのだ。或いは若き日の一瞬のきらめきに捕らわれず、ミュージシャンとしての自分自身をどんどん進化させたい、という意思だったのだろか。
その次の4作目であるこのアルバムが出たのはさらに3年後の90年だった。
このアルバム、最初に聴いたときはずいぶん戸惑った。
??・・・寄せ集め・・・??
そんな感じがするくらいにこのアルバムはとっちらかっていた。

ウェス・モンゴメリー風のジャズっぽい演奏のしっとりとしたスロウのStrayでアルバムは始まる。2曲目のThe Crying Sceneはディストーションの効いたギターでぐいぐい迫ってくるまさかのロック・ナンバー。3曲目Get Outta Londonは、いいベースのリフが印象的なへヴィーなナンバーで、ロディーも幾分荒っぽいシャウトで歌っているかと思えば、次の曲ではまた美しくも儚いギターの調べにのせたせつないメロディー、とあっちへいったりこちへいったり。
5曲目、いきなりのエレクトリックなビートは当時ビッグ・オーディオ・ダイナマイトというユニットでこういう感じのダンス・ナンバーを演っていた元クラッシュのミック・ジョーンズとのコラボ!アズテックカメラのアルバムだと思うと違和感ありありなんだけど、これ、好きだなぁ。パンクスみたいにギターかき鳴らしたりミック・ジョーンズとかけあいするプロモーション・ビデオもめちゃくちゃかっこいいし、ファーストで「ジョー・ストラマーのポスターが壁からはがれかけている。そのあとに貼るものは何もない。」と歌ったロディーがミック・ジョーンズと演るっていうだけでもなんか嬉しい。
6曲目How It Isも引き続きのぶりぶりのロック・ナンバーでロディーさん調子に乗ってライトハンドっぽい速弾きを披露。かと思えば7曲目のThe Gentle Kindはがらっと雰囲気を変えて『Love』の頃の感じのソウルっぽさ。8曲目もずいぶんと落ち着いた雰囲気のソウル・バラード、ラストはアコギ一本の弾き語り。
アルバムとしての統一感はまるでなくって、事情は知らないけれど実際のところバンド・メンバーも固定できないままうろうろしているロディーにレコード会社が業を煮やしてばらばらのレコーディング作品をアルバムに仕立て上げたのかもしれない。
でも、僕はこのとっちらかった感、振り幅の激しさについ共感してしまうのです。
優等生っぽいイメージのロディ・フレイムがその殻を破ろうといろんなチャレンジをしながらさまよっているようで、その悪戦苦闘ぶりがここにある曲に何か心に引っかかるものを残しているような気がするのですよね。
つまりは、きれいにコンセプチュアルにとりまとめられた破綻のないものよりも、あっちへいったりこっちへったりしながら悪戦苦闘していくその様にこそ人が生きている価値があるんではないか、と大袈裟に言えばそういうこと。
40代も前半の頃、そこを肯定するところから人生の後半戦をスタートするべきだろう、なんて思っていたのです。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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