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♪SIGN O’ THE TIMES

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Sign O' the Times / Prince

Oh Yeah!
フランスで、やせた男が、短い名前の大きな病気で死んだんだってさ。たまたま同じ針を使ったガールフレンドもすぐに同じ病気で死んだってさ。17才の青年が思いついた楽しい事、それは「使徒団」と呼ばれるギャング団に入って、クスリでハイになり、マシンガンをぶっぱなすことなんだってさ。
時代。
ハリケーンアニーは教会の屋根を吹き飛ばし、中に居た人はみんな死んだんだってさ。実際テレビをつけると、誰かが死んだってニュースばっかりだ。シスターが、食事を与える金さえないと自分の子どもを殺した、とかさ。でも、人類は月へ人を送ろうとしているんだとか。僕の甥っ子は九月にはじめて大麻をやったらしい。それは今じゃヘロインをやっているって。まだ六月だってのに。
時代。
あほらしいことだけどさ、宇宙船が爆発したのに、まだみんな飛びたがっている。誰かがこう言ってたよ。「人は死ぬまで幸せになれない。」って。なぜなんだ?
時代。
もうちょっとしゃべらせてくれ。
宇宙戦争が隣の国を明るくするんだってさ。でも、もし夜になって爆弾が落ちてきたら?誰も夜明けを見ることはないだろう。
時代。
あほらしいことだけどさ、宇宙船が爆発したのに、まだみんな飛びたがっている。誰かがこう言ってたよ。「人は死ぬまで幸せになれない。」って。なぜなんだ?
時代。
時代のサインが君の心に入り込んでくる。遅れる前に急がなきゃ。結婚しよう。子供を作ろう。赤ん坊はネイトって名づけよう(もし男の子だったらね。)
時代。
   (Sign o' The Times)

まるでディランかルー・リードみたいにシニカルな歌詞を持つこの歌をプリンスが歌ったのが1987年。
それから30年近い時が流れて。
今も世の中は、この歌で歌われたようなことと同じことが繰り返されたまま。
この数日間の新聞をめくるだけできっと、今起きている出来事にそっくりそのまま入れ替えた替え歌ができそうだ。

僕はプリンスのファンだったことはないのです。第一印象からして受け付けるタイプではなかったし、いや、もちろん“1999”も”パープル・レイン”も”アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ”も聴いていたし、ゾクゾクするようなかっこよさだとは思うのだけれど、残念ながらなかなか共感しにくいのですよね、プリンスの歌って。自分の中の何かとリンクしないと、なかなか深く追っかけていこうという気にはなりにくいのです。
が、そんなプリンスでも、これはやっぱり別格です。

Sign O' The Times
Play In The Sunshine
Housequake
The Ballad Of Dorothy Parker
It
Starfish And Coffee
Slow Love
Hot Thing
Forever In My Life
U Got The Look
If I Was Your Girlfriend
Strange Relationship
I Could Never Take The Place Of Your Man
The Cross
It's Gonna Be A Beautiful Night
Adore

レヴォリューションを解散させたプリンスは、このアルバムのほとんどを自分で演奏したらしい。リズムの音とかシンセの音とかめちゃくちゃ安っぽいんだけど、その安っぽさが独特のブルース感を醸し出しているというか、引き算の美学というか、スカスカの音の中から立ち上ってくる独特の黒っぽいフィーリングがあるんだな。
U Got The LookやI Could Never Take The Place If Your Manのようなキャッチーなポップ・ヒットから、Housequakeのようなドファンク、Starfish And Coffeのようなキッチュなものや、もっとひねくれたThe Ballade of Drothey Parkerみたいな密室的でミニマルなファンク、If I Was Your Girlfriendみたいなねじれたポップまで、ひとつとして同じような曲がない一大音楽玉手箱的展開それだけでもものすごい圧倒的な存在感なのだけれど、一方で聴けば聴くほどにそれらに、ブラック・ミュージックの伝統を踏まえた奥深さが垣間見えてきたりもするからすごい。
40年代50年代のビッグ・バンドのR&B的にジャジーでゴージャスなSlow Love、コーラス・グループ的甘さの香りがするAdore、Hot Thingのぶっといファンク・ビートにもソウルのにおいがプンプンする。
どの曲も基本、リズムだけで成り立っているんだな。メロディー楽器やヴォーカルすらでさえも、肝はリズム。
Play In The Sunshineなんて、基本型はロックンロールなのに、後半怒濤の変拍子が襲ってくるし、スロウな曲でさえリズムが際立っている。
Sign O' The Timesは、リズム・ボックスのシンプルなリズムなのにすごくブルージーなにおいがするし、合間でチョロチョロと弾かれるギターもすごくブルージーだし、シビアでシニカルな歌詞も、そもそもはコミュニティの瓦版的役割を担っていたブルースのスタイルを踏襲したもののような気もする。ディランやルー・リードっぽいんではなくて、遡れば同じルーツであると考えたほうがいいのかもしれない。
その表題曲と対をなすように配置された終盤のThe Crossではゴスペル的な色合いが濃く感じられる。

黒い日、あらしの夜、愛はない、希望も見えない
でも泣かないで、彼はやってくる
十字架のことを知らずして死ぬなかれ

みんな問題を抱えている
あるものは大きく、あるものは些細で
すぐに我らの問題はすべて十字架によって
取り払われるだろう

(The Cross)

このアルバムを聴くと、プリンスっていうのは正統派の偉大なるブラック・ミュージックの継承者であるという気がするのだ。
プリンスのアルバムの中では比較的エグさは控え目で、2枚組16曲というボリュームながらお腹いっぱいにならずにみっちり聴ける。いや、お腹いっぱいにはなるけれど満足感が高いというべきか。どこかの個性的な名シェフによるコース料理みたい。あらゆるバラエティーに富んでいながらも隅々にまでプリンスならではの味付けと仕掛けが施してある。
体調によってはエズきそうになることもあるんだけど(笑)、やはりこの味わいと満足感は特別なものだと思ってしまうのですよねぇ。


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コメント

[C2670]

名盤さん、こんにちは。
プリンス、やっぱりすごいです。
一番異端に見える人が実はものすごく正統派である、というねじれ感が、なんかクラクラするくらい刺激的です。
ライヴもすごいんでしょうね。観てみたい。
  • 2015-10-08 08:08
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2669]

80年代後半もっとも僕が夢中になっていたのがプリンスでした。
『サイン・オブ・ザ・タイムス』と前作『パレード』はマスターピースだとあの頃もそして今も思っています。
天才だ!と思いました。
ライヴで観た「ザ・クロス」熱かったです。

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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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