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♪LIFE -人生に捧げるコント-

ふだんほとんどテレビを観る時間はないのだけれど、例外的に毎週欠かさず観るようにしているのが、NHKの木曜10時、『LIFE -人生に捧げるコント-』。
内村光良を中心にココリコ田中とドランクドラゴン塚地らが、西田尚美や星野源、ムロツヨシといった実力派俳優や臼田あさ美や石橋杏奈といったキレイドコロの女優といっしょに、かなりまともに真剣にコントに取り組んでいるのがなんとも楽しい。

関西人ですから当然のように幼少の頃から土曜日の昼には『吉本新喜劇』を見ることが習慣だったし、『藤山寛美3600秒』や『花王名人劇場』を家族で見て育ち、その後80年代のMANZAIブームを通って『枝雀寄席』に夢中になった世代ですから、やはりお笑いにはかなりうるさいのであります。
内村光良のコントの何がいいっていうと、そこに人が生きていることのおかしさみたいなものが感じられるところ。
例えば昨日放送のコント。

『マスクの女』
星野源扮する若い男性が夜道を歩いていると突然現れる西田尚美扮する女性。赤いコートでマスクをつけている。
おもむろに星野ににじり寄りマスクを外す。
「私、きれい?」
てっきり口裂け女かと思いきや、その顔は普通。
「ねぇ、私きれい?」
星野、ビビりながら「は、はい、、、きれいです。」
西田、少しはにかんで「えっ?ほんとにほんとにきれい?」
星野、さらに震え上がりながら、「はい。きれいです。」
西田、まんざらもないようすでにんまりして、「そ、そう(うふふ)。」
西田、去る。
星野、「怖かったぁ・・・」
急に西田、引き返してくる。
「ねぇ、私、いくつに見える?」
「え、ええっと、、、さんじゅう・・・さんじゅうよん。」
しばし沈黙。
「えぇぇ、ほんとにぃ~。」(にっこり)
「ほ、ほんとうはいくつなんですか?」
「45。」
にんまりして西田、再び去る。
固まったまま取り残される星野。

たったこれだけなんですが。
うん。確かに怖い。そして実に深い。

MANZAIブームの頃、大好きだったのは紳助竜介やツービートだった。彼らの笑いは、世間や常識ではタブーとされていることを正面切って堂々とやってしまう言ってしまう気持ち良さだった。大人の世の中の矛盾が見えはじめていた中学生にとってそれはとても痛快だったし、その気持ち良さは言ってみればロックの気持ち良さと同じ種類のものだった。
既成の笑いの概念をうち壊し、世の中が眉をひそめるようなことを放言し、師匠に弟子入りして師事するような堅苦しさから解き放たれ自由に笑いを展開していった当時の漫才ブームというのは、実はパンクのムーブメントと同じようなものだったような気がする。だからこそパンクと同じように基本と定石を見失った笑いはやがて小手先だけの奇をてらった笑いのための笑いに走るようになり、一部のホンモノ以外はやがて地盤沈下していったのだろうけど、何の取り柄もない野郎どもが常識をひっくり返して世間に一泡ふかせてやろうとするエネルギーは確かにパンクと同じ種類のものだった。
で、その比喩で言えば、内村光良たちが目指している笑いはブルースと同質のものだと思うのです。
人が生きていて、本人なりには真面目に一生懸命で、でもちょっと行きすぎたり極端だったり、あまりにも世間とのギャップがあったり、そういうちょっとしたズレを誇張して笑いにする。痛々しいんだけど馬鹿馬鹿しい。ニヤリ、クスリ、そしてつい堪えきれずに噴き出してしまう。笑いに高尚も低俗もないけれど、人を小馬鹿にしたり、言葉じりだけ拾ってからかったり、体張ってリアクションするだけの芸とはそもそもの笑いに対する深みが違う。基本はめちゃくちゃくだらないのだけれど、ベースには人への深い考察、じわりと愛情に満ちた考察がある。これはまさにブルースだな、と。

この番組での人気キャラ、塚地扮するイカ大王がこの度CDデビューすることになった。
作曲はなんと、あの槇原敬之。
これもまた大真面目でかつじわりと人生を考えさせられる名曲に仕上がっている。
で、コミカルでポップで耳について離れない。
でも、多分、あんまり売れそうにないな(笑)。
NHKなんで。

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イカ大王体操第2 / イカ大王



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コメント

[C2614]

名盤さん、こんにちは。
確かにやすきよの漫才は王道でした。漫才のトラディションに忠実な作りだったように思います。
表現上の革新性や過激さ、同時代性は持ちつつ、ベースの部分はオーソドックスでトラディショナル、これはストーンズやサザンにも共通するところでしょうね。
異端を王道と認めさせたという点では、たけし、紳助、さんま、タモリ、それぞれにすごいと思います。

[C2613]

漫才ブームの時、一番好きだったコンビはやすきよでした。
実に王道です。
基本王道が好きなのかも。
でも最初は彼らも異端だったと思いますが、それを王道と認めさせたところが凄いかと。
ちなみに、たけしはオールナイトニッポンからのファンで、ツービートはイマイチでした。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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