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♪BLACK MESSIAH

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Black Messiah / D'Angelo And The Vanguard

Ain't That Easy
1000 Deaths
The Charade
Sugah Daddy
Really Love
Back to the Future (Part I)
Till It's Done (Tutu)
Prayer
Betray My Heart
The Door
Back to the Future (Part II)
Another Life

もう先々週のことになりますが、ちょっと縁あってblog仲間の名盤さんと大阪で飲みました。普段、仕事場なんかで音楽の話をすることはほとんどないので、めっちゃ新鮮で楽しかったです。同級生だけあって中学生高校生の頃に聴いていたものが近いので、話弾みますねー。
ほとんど新しい音楽を聴くことがなくなっているのですが、これはそのとき名盤さんに頂いた一枚です。けっこうはまってしまって、それから繰り返し聴いているわけです。

一回目、PCでさらっと聴いたときはいまいちピンと来なくって、なんかモコモコしてんなぁ、って感じだったのですが、ヘッドフォンで音量あげて聴いたらおぉっ!っと。
スライ&ザ・ファミリーストーン 『There's a Riot Goin' On』
スティーヴィー・ワンダー 『Innervisions』
カーティス・メイフィールド 『There's No Place Like America Today』
プリンス 『Sign of the Times』
そんな名盤たちがふっと頭に浮かんできました。
共通点は、黒さ。アフロ・アメリカンとしての出自と歴史にこだわった上で、時代とガッツリ向き合った黒さ。
最初の2曲はメロディーもほとんどないモコモコしたファンク。モコモコドロドロした中でうねるリズムがかっこいいし、ギターの音が研ぎ澄まされてドスが効いてます。
歌詞も相当にへヴィーだ。

 もしこんなゲームに突っ込まなきゃならないと知っていたなら
 いつだってシカトを決め込みたいもんだけど
 あの場所がぶっ飛ばされるしかないのなら
 戦争だ
 法の名の下の
 俺たちがクズみたいに粉々にされようとするとき
 正気でいられるか
 臆病者は1000回だって殺られる
 でも兵士はたった一度っきりだ
 たった一度、たった一度

ファーガソンで発生した暴動と関連がありそうなこのへヴィーな歌詞。ディアンジェロはここに来て、古いブルースマンからジョージ・クリントンやパブリック・エネミーへと続くアフロ・アメリカンとしてのステイトメントを継承しようとしているのか。

3曲め、モゾモゾとうねるリズムが気持ちいいこの曲もずいぶんへヴィーな中身のようだ。

 システマチックな迷路の中でのたうちまわっている
 死んでしまいそうな痛み
 我々の瞳の中の痛み
 溺れた者を引きずりあげる
 お前の嘘の中を泳ぐ
 不名誉は大きくなる
 だってお前は俺たちの泣き叫ぶ声など聞くこともなかったのだ
 夢見る者たちはすべて道の端に追いやられ
 メディアは殺到し、ヴァーチャルなマインドはストリームとファックする

 俺たちが欲しかったものは対話の機会
 その代わりに俺たちはチョークで形どられた
 パンを得るために俺たちは1000万マイルも歩く
 そして最後にはさらけ出されるだろう
 その嘘にまみれた物語を

これは中東での民主化デモやそういった民主化運動へのシンパシーなのだろうか。
明らかに世論が半数以上不支持を表明している安保法案を衆議院で強硬採決してしまうこの国で今起きていることにも当てはまりそうな歌詞だ。

4曲めになってやっとラジオで掛かっても違和感のないような音、でもディアンジェロっぽいとんでもなくミニマルなファンク、で続く5曲めがスパニッシュなギターがなんとも来る感じのごっついディープなスロウ。ギターの音がね、全編を通じて実にかっこいいし、ベースのうねり方がまたすごい。
で、後半になるに従って音に広がりが出てくる。閉塞的な空気感がどんどんと広がっていく感じで、グイグイと引き込まれていったところへ、アコギがじんわりと染みるThe Doorが来てあ、もうあかん。。って感じになる。更にはラストのジャジィかつゴスペリィなAnother Lifeの神々しいほどのクラクラ感。
この後半のどんどんとゴスペルっぽいものに昇華されていく、アフロ・アメリカンとしての戦いと救済のすべてを統合していくような感じ。
ヒリヒリする。
こりゃあ確かに名作ですわ。

音楽は時代と共にある。
今の時代の混沌とした状況を捕らえた、今の時代を呼吸している音楽だと思う。
古い音楽を遡って聴くことにも、どういう経緯で今の状況があるのかを知る手掛かりになる側面があるのだけれど、今の時代とがっつり向き合った表現にも耳を開かなくっちゃただのジジイになってしまうぜっ、と思わされた、そういう意味でもショーゲキ的なレコードでした。



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コメント

[C2608]

GAOHEIGⅡさん、こんばんは。
すいません、ずいぶんご無沙汰しています。
何しろ、ほんとに新しいの聴いてないので・・・
ディアンジェロも未だに最近の人のイメージがありますが、たった3作とはいえデビューから20年近くたつんですね(^_^;)
  • 2015-07-19 23:44
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C2607]

golden blue様 こんばんは

交流ブログの方と飲み交わすなんて
楽しそうですね。

このアルバムは自分も
周りの高評価に釣られて
聴きました。

ブラックミュージックらしい
エネルギーに満ち満ちていて良かったです。

自分は洋楽邦楽、時代問わず色々聴いていますが
「最近のシーン」として外側から見えるものは
ほんの一部分だけなんですよね。

結果として子供向けの音楽が日本では席巻してしまっていますが(複数枚買わせる商法などで)
実際には色々面白い邦楽もありますよ。

などと言いつつ、
そういえば自分も最近はもっぱら
金森幸介を一番聴いています。

[C2606]

名盤さん、こんばんは。
その節はありがとうございました。
自分ではスルーしてしまっていたので、改めて感謝です。
日本のポップミュージック、うーん、自称ロックな人たちより、アイドルのプロダクションの方が時代をしっかり見据えた表現をしているように見えちゃいますね。
今、歌うべきことはたくさんあるように思いますが。

[C2605]

楽しんでいただけて何よりです。
アメリカではこのような作品が話題になるのに、日本のポップミュージック・シーンというのは一体どうなってるんだろう?
と以前から思っていたことを、さらに強く思う昨今であります。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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