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◇55歳からのハローライフ

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55歳からのハローライフ / 村上龍

このところどうも仕事が行き詰まり気味というか、気分が乗らない。
そのせいか、これからのことをつい考えてしまうことが増えた。
今、48。冷静に考えてみたら普通に定年を迎えるとしたら残りはもう12年しかない。勤労者として勤めあげる期間のうちの3/4くらいはもう過ぎてしまっている。
年齢とキャリアが上がれば上がるほど、登り坂はキツくなっていく。
一方、体力はやはりだんだんと落ちてくるもんで、あー、昔ほど無理はきかんよなー、と感じることは増えてきた。
こーゆーときこそ経験で乗り切ることができればいいんだけど、なまじ下手な経験則からくる判断は、チャレンジ出来ない奴はいらない的に否定されがちなのであって、そーやって逃げ道すら閉ざされてしまうとなんだか気力すら落ちてくるもので。
と、そんな心と体で迎える第三コーナーが実にきつい。
アイデアも情熱も正直絞りきってもうカラッカラ(笑)、斬新なアイデアやヒラメキなんてそーそー出てこない。
しんどいねー。

と、そんな気持ちで読んでいた、村上龍の「55歳からのハローライフ」。
5つの中編小説に出てくる主人公たちは、いずれも人生の曲がり角を迎えて右往左往したり足掻いたりすれ違ったりしている人たちだ。
定年退職した夫との息詰まる暮らしに疲れて離婚し、経済的な不安から再婚を望んで結婚相談所へ登録するも現実と理想のギャップに落ち込む女性の話。
出版社をリストラされ体も壊して老後への不安が募る中、交通整理のアルバイトで食いつないでいる男が、ホームレスになってしまった昔の友人と出会う話。
バリバリの営業マンだった男が早期退職して妻と旅行するためにキャンピングカーの購入を計画するも妻に断られ、再就職の活動をするものの厳しい現実をつきつけらる話。
仕事だらけの夫とすれ違い、ペットとの散歩が唯一の癒しだった主婦が、ペットの死に向き合う話。
独身をとおしてきたベテラン・トラック運転手がふとしたきっかけで恋におち、恋の相手に秘められた家庭の事実に愕然とする話。
いずれも、重いテーマで、読んでいると息苦しくなってくる。希望を失ってしまいそうになる。
年をとるっていうのはやっぱり誰しも不安なんだろうな。
体力や容姿は衰えていく。それまでの人生で培ってきた経験や技術こそがその人の価値なのにそれが実は代替え可能なものだったと事実を突きつけられると、気力だって萎える。
ある程度の役割を果たしたあとにやってくる生きる価値の喪失。
人生の後半期にとって、それはきっと大きなテーマなんだろうな。

「55歳のハローライフ」のそれぞれの物語はいずれもシビアだ。
けれど徹底的に絶望的というわけでもない。崩れそうになった人生を、登場人物たちはぶっ壊しはしない、ぶっ壊しそうになる直前で踏みとどまる。そして、ほんの少し希望の欠片をのぞかせて物語は閉じられる。希望は決してないわけではない、おそらくはほんの少し思い描いたものと違うだけで。思い描いたものは手にできなかったかもしれないけれど、それがイコール絶望ではなくて、むしろ今手元にあるものにどれだけの希望を見いだせるのか。僕はこれらの物語からそんなことを感じたのです。

さて、いわゆるローゴ。自分はどうするんだろうか。
今はまだまるでピンと来ない。
ピンとは来ないけれど、このまま行ったら空っぽなローゴが待っているんじゃないか、そんなうっすらとした予感がないではない。
ほんというと、もうさっさと引退したいけどねー、貯えがあるわけじゃなし、扶養家族はあり(笑)、まだもうちょっとがんばらざるをえないですが。
まぁローゴを過剰に卑下する必要はないはずだ。過剰に肩肘張る必要もない。かといって過剰な期待も禁物だろう。
むしろ必要なのはどんな状況であれ自分を肯定できる力なのかな。
自分ひとりの力ではとても難しいことではあるけれど。


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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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