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♪HEARTBEAT CITY

ハートビート・シティ
Heartbeat City / The Cars


Hello Again
Looking For Love
Magic
Drive
Stranger Eyes
You Might Think
It's Not The Night
Why Can't I Have You
I Refuse
Heartbeat City

すっきりしないもやっとしたお天気が続く春。
たまたまふらっと寄ってみた中古CD屋でばったり発見して、つい買ってしまったカーズの大ヒットアルバム。
ヒットした当時はクラスメイトにダビングしてもらったカセットテープで聴いていた。
なぜかたまたまその数日前から、♪ちゃちゃちゃちゃかちゃか~っていうYou Might Thinkのリズムが不思議と頭の中で鳴って離れなかったんだよなぁ。
発表は1984年、MTVが始まりあっちこっちで当たり前のように海外のアーティストのヒット曲が流れていた時代に、You Might ThinkやDriveをはじめとするヒット曲を連発していたカーズは、高校生の僕にはなんとも微妙なバンドだった。
ガツーンと衝撃的でかっこいいわけではない、ドカーンとカタルシスを感じるような勢いや破壊力のあるバンドではない。
曲そのものはとてもポップで、すぐに耳について離れなくなるようなキャッチーさがポイント。
でもそのポップさの裏側になんだかとても薄暗いものを抱えているようなちょっと気味の悪いようなラジカルさがあったりして 、ハイにはなるけど踊れない、気持ちいいはずなのにどこか気持ち悪い、そんな印象があって、大好きにはならないけどどこか気になってしまう、そういう感じだった。

改めて聴いてみてもやっぱりポップ。
しかしそのポップさは、屈託のない明るいポップさではなく、屈折した陰りが充満したポップさで、奇妙に生温い。その生あたたかくてどろっとべとついた感触はある種の体液みたいで、それらは血管から脳ミソへとぐるぐる回って占拠しはじめ、その奇妙にラジカルでシュールな世界観にじわじわと冒されてしまう、みたいな。
歌詞をパラパラ繰ってみてもちょっと壊れかかったようなフレーズが散りばめられている。

and when there's nothing
nothing left to loose
そこに何にもないのなら、失うものだって何にもない
(Hello Again)

you can't stop
but you can't go on
止まることなんてできないんだよ
だけど、君は進むこともできないよ
(Looking for Love)

大ヒットしたDriveは嫉妬の歌だし、You Might ThinkやWhy Can't I Have Youなんかもちょっとストーカー的偏執さが伺える。
タイトル曲もHeartbeat Cityも、いい意味での心のドキドキというよりは、動悸とでも訳したほうがよさそうな不安定さだ。
都市生活の暗部や人間の心の奥に潜む欲望やダーティな部分を歌うその姿勢はちょっとルー・リードっぽくもあり、そう言われればリック・オケイセックの歌い方はちょっとルー・リード似と言えなくもない。
ルー・リード、デヴィッド・ボウイ、ブライアン・フェリー、あ、なるほど。ポップ過ぎて気がつかなかったけど、カーズが演っていたのはいわゆるグラム・ロックの80年代的進化系だったのかもしれないな。

何しろ一度耳についたらなかなか離れない奇妙にポップな音、春のもやっと状態と相まってもうしばらくは頭の中をぐるぐると回りそうだ。
意外と手強い、一筋縄ではいかない曲者、なんて思いながら改めて歌詞を見るとこんなフレーズが。

you might think i'm delirious
the way i run you down
but somewhere sometime
when you're curious
i'll be back around

あまりにもぶっ飛び過ぎてると思うんだろうね
僕の迫り方は
けど、いつかどこかで
興味を持ったなら
すぐに戻ってくるぜ
(You Might Think)

一本とられた、って気分だな。



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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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