3月の下旬、現存する最古の友人であるKちゃんから、「秋頃に高校の同窓会があるらしい。わたし、クラスの同窓会委員だったらしくて、連絡先教えてもいいかしら?」と連絡があった。 彼女とは家が近所で、小学1年生の頃から高校までずっと同じ学校で、もうかれこれ40年以上ものおつきあいになる。小さな頃は毎日一緒に帰って、お絵描きしたり絵本を読んだりして遊んでいたのがとても懐かしい。 その流れで、中学の頃に仲が良かった友人ともかれこれ20年ぶりくらいに連絡がつながった。中学の頃とまるで変わらないキリッとした感じが相変わらずで嬉しかった。 それから数日して、高校のときの同級生だったMとWからも連絡があった。実家に電話して母から連絡先を聞いた、とのこと。正直言うと、あまり高校時代のことはあんまり懐かしくない。あの頃の自分はあまり自分らしく生きていなかったのだと思う。特に積極的に誰かに会いたいとも思わないから敢えて音信不通にしていたのだ。電話をかけてきたMとWはずいぶんと懐かしがっていたけれど、「帰ってきたら声かけてくれよ、飲みにでも行こうや。」という彼らの電話に「うん、まぁな。」とあまり乗り気ではないそっけない態度で電話を切った僕の態度には少しがっかりさせてしまったかもしれない。 先日は大学時代の友人と、当時の先輩たちが今も演っているバンドのライヴに顔を出してきた。学生の頃は少ししか年が変わらないのにめちゃくちゃ大人だと思っていたその先輩たちが、「50を越してからどんどん中学生化してきている」と言うのを、なんとも奇妙な気分で聞いていた。 その前の土曜日に訪れたのは、配送センターでいっしょに働いていたパートさんのお見舞い。定年を間近に控えた彼女は、重い病を患って入退院を繰り返している。思っていたよりは元気そうで安心したのだけれど、「薬の影響かなぁ、パンが大好きだったのにすっかり食べられなくなってしまって。」と嘆く、どちらかといえばふっくらとしていた彼女のすっかり細くなってしまった腕や足が病の深刻さを物語っていた。 一緒に行った同い年のパートさんの当時保育園に行っていた一番下の息子さんは、今年高校を卒業する。これも時の流れを感じさせられる事実。 昨日は母親が来て、満開の桜の中を散歩した。来月に絵描き教室のお仲間を連れてこの近所に旅行にくる予定があってその案内のための下見なんだそうだ。観光名所には老年壮年のカップルもたくさんいて、父が元気ならば一緒にあっちこっち旅行したりしていたのだろうか、なんて思いながら、なんだかとてもせつない気持ちになった。 ちんまりした新興住宅街の町で子ども時代のしがらみに捕らわれたままだらだらと暮らしていくのが嫌で地元を離れて、それから30年がいつの間にか経っていた。あんまり過去の自分には向き合わないようにしてここまで来たのだけれど、当時のお付き合いを通じて、その時々の過去の自分と出会わされることの多いこの春なのだ。 出会ってきた人の数だけ、出会ってきた人にとっての自分がいる。 こっちで勝手に取捨選択して保存している自分とって都合のいい記憶でできあがった自分とはきっと違う、それぞれの人にとってのそれぞれの自分像があるわけで、その微妙なずれに僕は戸惑ってしまう。平衡感覚の狂ったトリック・アートの絵の中に紛れ込んだみたいな不思議な感覚に、少しくらくらしてしまう。 その一方で、やっぱりこうやってたくさんの方々と出会ってきたことの重なりの中に今の自分がある、とも思う。 懐かしさだけの感傷とはまた違う、これも不思議にくらくらしてしまうような感覚。甘いような苦いような痛いようなくすぐったいような。 そんな甘いような苦いような痛いようなくすぐったような気持ちに一番よく似合う音楽は、ロニー・レーンだ。Don't You Cry For Me Anymore For Anymore / Ronnie Lane & Slim Chanceしんみりと感傷的な気分になるけれど、彼の音楽には深刻になることを防いでくれるような透明な明るさがある。
ちくちくするような痛みを、やわらかく穏やかな気持ちに変えてくれる。
今日は朝から雨。
窓から見える桜は、静かな雨にそぼそぼ濡れ、風が吹くたびに少しずつその花びらを散らしてゆく。
川面にその花びらが流れてゆく。
もうひと月もすれば木々は青々と緑を繁らせるのだろう。
そしてやがてまた葉を散らして、次の春にはまた花を咲かせるのだろう。
回っていく、廻っていく、その中で少しずつ変わっていく自分。少しずつ変わってゆく自分と自分を取り巻く世界との関係を、くらくらせずに受け止めていけるか。いや、受け止めていかなければいけないのだろう。
そんなに難しいことではないはずだ。
甘いような苦いような痛いようなくすぐったいような気持ちを、実った果実のように楽しめばいいのだ。
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昨日、コナラさんのblogを拝見していたところでした。
こちらこそよろしくお願いします。
それぞれの人にとってのそれぞれの自分像、考えるとなーんとも微妙な気分になっちゃいます(笑)。
まぁよくも悪くもどうしようもないことなんで、それも人生の機微のひとつかと思っておくしかないんですけど。