のどかでおおらかでビーチボーイズっぽくっていいな、って思うのはカール・ウィルソンのヴォーカル曲。1曲めの“Do It Again”なんかがまさにそう。基本元気で明るいんだけどちょっとセンチメンタルでドリーミーな感じがまさにビーチボーイジー(笑)。フィル・スペクター作品の“I Can Hear The Music”も夢のように美しく完璧なアレンジとコーラスでふわふわと雲の上にいるように夢見心地になれる。 3曲めの“Bluebirds Over The Mountain”も美しいハーモニーとソウルっぽいベースラインがいい感じでありながら、イメージとしてはビーチボーイズらしくない歪んだギターが鳴り響く、ロックの時代を強く意識したアレンジがかっこいい。 ロックっぽいといえば俄然ワイルドで荒々しいビートが効いた“All I Want To Do”。これはマイク・ラヴの作品だそうで、なんでまたいきなり突然に?というくらい荒っぽいシャウトのかなりビーチボーイズらしからぬ感じではあるけれど、そもそもビーチボーイズはロック・バンドだったんだということを思い出させてもくれる。 そのハードなロック・ナンバーをはさむように、幻想的で美しい曲が2曲。デニス・ウィルソンの“Be With Me”、そしてインストの“The Nearest Faraway Place”はブルース・ジョンストンの作品。最も近くて遠い場所・・・そんなタイトルだけでももうきゅんとせつなくなってしまうような美しさだよね。 アル・ジャーディーンはレッド・ベリーの“Cotton Fields”をカバーしていて、これはたくさんのバンドのカバーがあるけれど実にビーチボーイズっぽくっていい。いわゆる、ノーテンキとせつなさの絶妙ブレンド。 そして“Times to Get Alone”の流れるような珠玉のメロディーと美しいハーモニーは、さすがブライアン・ウィルソン。 幻のアルバム『SMILE』収録予定だったという“Cabinessence”なんかは当時は革新的だったのだろうけど僕には少し蛇足に感じてしまう。けど、こういう現代音楽的なものからロックンロールの”All I Want To Do”までごちゃごちゃにそれぞれが主張しているのがこのアルバムのおもちゃ箱みたいな楽しさかな、と思ったりするわけで。 誰もが楽しめるボードゲームみたいなものも、ちょっとかけひきが必要なカードゲームみたいなものも、手作りのがらくたみたいなおもちゃも、美しい宝石みたいなガラス玉もぜんぶぶっこんで、開けるたびに童心に戻ってワクワクしてしまう、そんな音楽。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
たくさんの方がいろんなものをUPしていただけるおかげで自分ではすすんで探さないようなものもたくさん視聴できたいへん感謝しております。
これからもいろいろUPしてくださいね!