最初はまるでちんぷんかんぷんな印象だったのに聴き込むうちにじわじわとよくなっていくレコードもあれば、聴いて一瞬で衝撃を受けてしまうようなレコードもいくつかある。 このバターフィールド・ブルース・バンドのアルバムは断然後者だった。 初めて聴いたのは確か高校卒業前後だったかな。 17、8の頃、ヒット・チャートを賑わせていたいわゆる洋楽ポップスから次第に時代をさかのぼるようにロックの名盤と呼ばれるものを片っ端から聴き漁っていったのだけれど、いわゆるブルース・ロックと呼ばれる類いのものは実はあんまりピンと来なかったというのが正直なところ。クリームとかね、なんか難しそうなことを難しそうな顔をして演っている感じがしてピンとこなかった感じ。 そんな中で、このレコードだけは一曲目から一発でガツンときた。 ぞわっと裏筋が震えるような感触がして、おおぉーっ、と鳥肌がたった。 1曲めのBorn in Chicagoからもうガツーン、ドカーン、ドドーンとアッパー・カットを食らう怒濤のかっこよさ。で2曲めShake Your Money Makerで打ちのめされる。 一転、ドスンと重いBlues with a Feelingが来て、インストのThank You Mr.Booberが来て、もう一発、I Got My Mojo Workingでまたぶちのめされる。 なんて熱い演奏だ。
B面はテンポを上げてMellow Down Easy、バターフィールドのハープとブルームフィールドのからみがかっこいいインストのScreamin' 、ナフタリンのオルガンが渋いリズムのうねりを作り出すOur Love Is Drifting 、シャッフル・リズムが汽車のリズムみたいなMystery Train 、ハープとギターは汽笛と車輪が軋む音だ。どろっと重いブルースのLast Night ときて、最後はエルモア・ジェームス的に豪快なLook Over Yonders Wallで〆。 白人だってブルースがプレイできることを証明してやるんだ!そんなバターフィールドたちの気合いがこもった演奏は、演奏そのものがひとつのメッセージでもある。 その込められたメッセージの純度の高さが高校生の僕が食らった衝撃の本質だったのかも、今振り返るとそう思います。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
コメントの投稿