このアルバムはそんなルーベンが全曲英語で録音してワールド・ワイドなマーケットに打って出た作品で、なにしろコラボしているメンバーが、ルー・リード、スティング、エルヴィス・コステロ・・・というすごい面々。もちろんそういう面々の参加があって人のことを知ったわけで、知ったかぶりして最初に書いた蘊蓄も当然後から知った話なのですが、まぁそれはともかく、スティングは"I Can't Say"を提供、コステロは"The Miranda Syndrome"と"Shamed Into Love"を共作しギターで録音にも参加、ルー・リードに至っては"Hopes On Hold "、"Letters To The Vatican"、"The Calm Before The Storm "と3曲もルーベンと共作してコーラスで参加している。 知的さとシビアな批評眼とパンク的な批判精神を持ち合わせ、優れたソングライター/ストーリーテラーであり、なおかつ当人同士はとても仲が悪そうな3人がこういう形で共演するというのは、このルーベンさんの人徳ではなかろうかと思いますが(笑)、そういう3人が共感し力を貸すだけあって、この方の歌もとてもシビアな状況が物語によって語られます。 街をうろつくゴロツキたちを描いた“The Hit”、ローマ法王への手紙という形で貧困の窮状を訴える“Letters to the Vatican”、レゲエ調の“In Salvardor”ではエル・サルヴァドールでの人権抑圧を、ドゥー・ワップ調の“Ollie's DooWap”ではニカラグアを、“The Letter”ではエイズを。 プロデューサーはトミー・リピューマ、バックにはジョン・ロビンソン、エイブラハム・ラボリエル、ポウリーニョ・ダ・コスタ、カルロス・リオスといったそうそうたるメンバーが参加していて、サルサ度はかなり低めのコンテンポラリーな音、その上にのるルーベンのヴォーカルは軽妙で飄々としていて、シビアな現実をしかめっつらでなく歌っている。
Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。 “日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。 自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。
コメントの投稿