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We Got Have Peace

2024年、明けましておめでとうございます、とご挨拶する前に起きた能登半島の大地震。おめでとうございます、と言える状況ではなくなってしまいました。被災地の方の暮らしが、少しでも早く平穏になることを今は願うしかありません。大阪でもけっこう長い時間揺れました。東日本大震災のときと同じように、遠くで大きな地震が起きているなという感じの長い周期の揺れでした。地震が起きたとき、僕は母親をみてもらっている施設にい...

屋根裏の鼠

屋根裏部屋でねずみの死骸を見つけたのは、少し暑くなりはじめた春の終わりの頃のことだった。 「あんた、ゴールデンウィークは休めるんか。」 「わからん。」 「そろそろ毛布片付けて、扇風機を下ろしてほしいんやけどな。」 「あぁ、うーん、わかった。せやけど今週は出勤せなあかんし、行けても来週やわ。また連絡するわ。」 そう言って電話を切った。 母はこのところずいぶん弱々しくなった。 五年前に父親を亡くし、...

牛的思考

ネズミが僕の背中に乗って移動して、まんまと一等賞をさらっていったこと、僕はそんなに気にしているわけじゃないんだ。 腹も立たない。 僕はゆっくり歩くのが好きだし、神様との約束の時間に遅れるのは失礼だと思ったから、早くから出掛けた。 それだけのこと。 誰かと競争していたわけじゃない。 一等賞であることにそんなに意味も見いだせないし、仮に一等賞が光栄なことだったとしても、不相応な立場をもらうと結局そのせ...

虎、大いに語る

僕が知っている虎の話をしよう。 その虎は、僕を目の前に座らせ、こんなふうに語り始めたんだ。 「人間社会での虎の扱われ方は、実に偏見に満ちている。」 と。 「だいたい君ね、虎がバターになると思うかね?」 「いや、普通はならないですね。」 「普通は、じゃない。断じてならない。」 「そうですね。でも、あれは物語だから。」 「そう、物語だ。物語だからこそやっかいなんだよ。」 「どうしてですか?」 「虎と...

月の兎

  昔、あるところにうさぎときつねとさるがいたそうだ。 あるとき、3匹はある老人に出会った。 老人は、疲れ果てていて、3匹に食べ物を乞うたのだ。 さるは木の実を、きつねは魚をとってきたが、うさぎは一生懸命頑張っても何も持ってくることができなかった。 そこでうさぎは「私を食べてください」と火の中にその身を投げ、自分の体を老人に捧げたのだそうだ。 実は、その老人とは帝釈天という神様で、弱ったふり...

天空を駆ける龍

あいつは普段はとても物静かな男だったよ。 楽屋なんかでも隅っこで黙りこんでいることがほとんどだったし、誰かが下らないジョークを言って場を盛り上げようとしても、クスリとも笑いはしなかった。 時にはあからさまに不機嫌な態度をとることもあった。 ある女の子があいつに取り入ろうとして、打ち上げであいつの横にべったり座ってお酒を注いだりご飯を取り分けたりしようとしてあげていたときのことは酷いものだったな。 ...

蛇のまぶた

蛇にはまぶたがない。 そのことが僕を困惑させる。 彼らは世界をずっと見ているのだ。 まぶたのないその目で。 僕には手足がある。 蛇には手足がない。 蛇には鱗がある。 僕には鱗がない。 生きている原理が そもそもまるで違いながら 僕は僕なりの目で、 蛇は蛇なりの目で、 世界を見つめている。 道具を使う環境に順応した結果、筋力や強い胃腸や毛皮まで捨てて脳を肥大化させる進化をした人間。 進化の過程で...

馬を水辺に連れて行くことは出来るが水を飲ませることは出来ない

馬は僕にとっては憧れだった。 父親や兄や近所のゲルの大人たちが、颯爽と馬を駆って地平線の向こうへ走り去っていくのを見送っては、僕もいつかあんなふうに馬に乗って遠くまで行って、狩りをしたり交易をしたりしたいと思っていた。 父や兄が夕方遅くに馬に乗って帰ってくる。 馬の背には、時には大きな兎や羊の肉、時にはふかふかの毛皮、時には見たこともないようなキラキラ光る石が積まれていた。 地平線の向こう側はその...

夜のひつじ雲

眠れない夜には 眠ることはあきらめたほうがいい 夜のひつじ雲 紺色の空 手の届くはずのない場所で ひつじたちが隊列を組んで行進する Sheep      Sheep           Sheep Sheep      Sheep            Sheep Sheep       Sleep             Sheep アンドロイドが 電気...

猿山

その遊園地を訪れたのは何年ぶりのことだったのだろう。 朝からせっせと出掛けていったとある県境での業務が腑抜けてしまうくらいにさっさと終わり、ポカンと時間が空いてしまったのだ。 もちろん会社に帰ればそれなりに用事はあるのだけれど、直帰するつもりで出てきたからなんだかとてもそういう気分になれず、どうしたものかと車を走らせているときに、この遊園地の看板が目に止まったのだ。 1ヶ月ほど前に、経営不振のため...

Little Red Rooster

I am a little red rooster Too lazy to crow for day I am a little red rooster Too lazy to crow for day Keep everything in the barnyard Upset in every way 俺は小さな赤い鶏 一日中鳴くのもだるいもんやで 俺は小さな赤い鶏 一日中鳴くのもだるいもんやで 農場にあるものぜんぶが 俺をムカつかせるんや Oh the dogs begin to bark now Hounds begin to howl Oh the dogs begin to bark now Hound...

愛犬ハチ

「ご主人様、たいへんお久しゅうございます。」 誰かの声が聞こえた気がしてふと目を覚ますと、枕元に一匹の犬が座っていた。 犬は座ってハァハァと舌を出して呼吸しているだけなのだが、頭の中に直接入りこんでくるように言葉が聞こえてくる。 「ご主人、私です。ハチです。」 「え?」 ぼやっとした頭を降ってよく目を凝らすと、なるほど座っているのは確かにハチだった。 きつね色の短い毛並みとツンと立った耳。ふさ...

バビルサの牙

バビルサ。 インドネシアのスラウェシ島などを中心に熱帯雨林に生息している猪の仲間だ。 このバビルサのオスには奇妙な特徴がある。 大きな牙が4本あるのだけど、下顎から生えたとても大きな2本は、頭部に向かってカーブを描きながら曲がっている。 この弯曲具合は、もはや牙本来の役割である「噛みちぎる」「突き刺す」などの行動は不可能である。 更に小さな2本は上顎から生えていて、口腔内ではなく、皮膚を突き破っ...

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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