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パン工場(前編)

娘が生まれてから今の家に移ってきてもう15年以上経つ。おそらく今の家が一番長く住んだ場所ということになる。18のときに実家を出てから今まで、いくつかの場所で住んできた。その中で2年と少しの間、パン工場に住んでいたことがある。といっても、もちろん工場の中ではない。工場の敷地の端に併設されていた男子寮、築15年以上は経つであろうおんぼろの2階立てで、6畳2間の部屋が10ほどある建物だった。部屋は2人用...

パン工場(後編)

会社の経営状況は思わしくなかった。80年代後半から90年代にかけての流通構造の変化に完全に乗り遅れていた。つまりは、大規模化したスーパーマーケットチェーンと広がりはじめたコンビニチェーンに入り込めなかったのだ。今ではもはや見かけなくなった、駄菓子屋とかクリーニング屋とかと一緒に奥さんとおばあちゃんが交代で店番をしているような小さなお店にパンをほんの10個ほど運んでいたって儲かるわけもなく、大手のス...

続・音楽歳時記「芒種」

6月6日に雨ざぁざぁ降ってきて。梅雨入りですね。雨はそんなに嫌いでもないのですよ。晴れた日のほうが好きだけど、雨には雨の風情がある。めんどくさいのは、傘を差さなきゃいけないことかな。傘を持つと、片手が塞がるじゃない。あれがあんまり好きじゃない。多少濡れたところでそんなに困らないのだけど、びしょ濡れで朝の満員電車に乗るのも気がひけるので朝から雨が降る日なんかは一応傘を差しはする。夜から雨が降りだした...

♪Vinyl Change The World

6月9日、ロックの日。たまたま観る機会があって、それ以来めっちゃお気に入りのバンド、ザ・50回転ズ。今のところぶっちぎりで2018年度最優秀ソングに決定です。“Vinyl Change The World”ザ・50回転ズ62年のハンブルグなら港町に響き渡るやけくそな“Twist and Shout”昨日の涙も知らない顔で歌ってくれるよあの日のビートルズ高校生のときに聴いていたら、きっと大ファンになって追っかけてたただろうな。ルックスがい...

♪らっきょうブルース

らっきょうがおいしい季節です。シャクシャクとした歯応えと、適度な酸味とほのかな甘み。つまみだすと止まらなくなるんですよね。らっきょうの可食部分は玉ねぎのように根っこのところ。正しくは根っこではなく茎が肥大化したものなんだそうだけど、こういう植物のこの部分を食べるとおいしい、って発見した人は誰なんだろう。生だとかなり辛みがあってピリピリするはず。それを酢に漬け込んで辛み成分をとばしてやわらかくする食...

地震20180618

今まで経験した中では二度めの大きな衝撃だった。下からガツンと突き上げるような衝撃。一瞬何が起きたのかわからない。照明が落ち、きゃぁーっ、と女子高校生たちの叫び声。横揺れがグラグラグラッと来てから、スマホの地震警報が鳴った。遅いよ。いつもなら確実に通勤電車の中なのだけれど、たまたま朝から配送センターへ行く用事があって枚方市駅で降りた直後だった。電車に閉じ込められた同僚の話では、一時間以上停まったあと...

続・音楽歳時記「夏至」

6月はどちらかといえばあまり好きな月ではないのです。じめじめと湿気が増えて不快指数が上がっていくし、蒸し暑かったりとたんに涼しかったりで体調管理も難しく、なんとなく血の巡りがぐずぐずしてなんだかなぁ感がつきまとう。春の爽やかさやうららかさはなく、一方で真夏や真冬のように肚を据えて挑むほどでもなく、どこか中途半端というか過渡期的というか。 そんな6月に好きなことがふたつ。ひとつは、夜に窓を開けて眠る...

小学校のプール

死にそうになった経験がありますか?僕は一度だけあります。あれは小学校2年生の時。体育の授業中だった。夏、といっても肌寒かったからまだ6月くらいだったのかも知れない。その日がプール開きだった。2年生からは本格的な水泳の授業が始まる。1年生のときは浅い幼児用のプールで水遊びするだけだったのだが、水深1mのプールに入ることになるわけだ。水着に着替え、シャワーを浴び、カビ臭いにおいのする消毒液のプールに浸...

河童くんの池

毎日学校の帰り道に道草をするのが大好きだった。小学校3年とか4年の頃だ。子供の足で15分くらいの道のりの間には、田んぼがあり畦道があり、用水路がありため池があった。春にはたんぽぽの綿毛を飛ばし、いちごをつまみ食いし、夏にはおたまじゃくしを捕まえ、大きな蓮の葉の上で水玉を転がし、秋にはトンボを追いかけ、干してある稲わらに体当たりする。食用ガエルや草ガメもたくさんいた。何にもいないときは空き缶を集めて...

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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