5月5日、立夏。連休の真っ只中の土曜日は、さわやかな青空。過ごしやすくて、明るくて、元気溌剌。なんとなく青春っぽい感じ。で、青春っぽいといえば、初期ビートルズだ。Please Please Me / The Beatles“I Saw Her Standing There”で始まって“Twist and Shout”で終わる。それだけでこのアルバムは満点だ。この二曲、中学生の頃に最初に聴いたビートルズのベスト盤には入っていなくて、そのあとでラジオで聴いて「なんでこんな...
いつもの通勤電車。僕は車両の一番奥の、隣の車両への扉の辺りに吊革を握って立っていた。すし詰めというほどではないけれど体を少しでも動かせば隣の人の体に触れるくらいには混んでいる。いつものように電車はターミナル駅に着いた。降りようとするのだけれど、通路が満員なのに椅子に座っていた人たちがその満員の通路に立ち上がるのでその入れ替わりがもたもたとしていてなかなか動けない。僕の横で立っていた大学生くらいの女...
先日、久しぶりに神戸へ出掛けたときのことだ。阪神電車に揺られ、ぼんやりと窓の外の景色を見ていた。尼崎を過ぎ、芦屋を越えて電車は神戸に入る。左手にはぼんやりとした海、右手にはごちゃっとした町並みとその向こうに六甲山。やがて電車は御影駅を通りすぎる。あ、なんだかこの駅、見覚えがある。ここで何かを経験したことがあった気がする。そして、ずいぶんと長いこと忘れていた記憶が、そのときに感じた何ともいえない感覚...
中国に「指鹿為馬(しかをさしてうまとなす)」という故事があって、「馬鹿」という言葉の語源のひとつとされているそうだ。秦の2代皇帝・胡亥の時代、権力をふるった宦官の趙高は謀反を企み、廷臣のうち自分の味方と敵を判別するため一策を案じた。彼は宮中に鹿を曳いてこさせ『珍しい馬が手に入りました』と皇帝に献じた。皇帝は『これは鹿ではないのか』と尋ねたが、趙高が左右の廷臣に『これは馬に相違あるまい?』と聞くと、彼...
雨があがって新緑がきれい。風が爽やかに吹き抜けて、道端にはたんぽぽの黄色い花が揺れていた。暑くもなく寒くもなく、とても過ごしやすい休日。コンビニ限定のポテトチップス“パクチー&レモン味”をかじりながらプロ野球中継をだらだら眺めていた。こういうなんでもない一日がシアワセだと思う。せっせと5日間働いて、2日休むっていうのはちょうどいいバランスなのかもしれない。節季は21日が「小満」。「小さく満たされる」...
その喫茶店は、地下街の中にあった。通学経路の乗り換えターミナルだった難波駅。店頭にはコーヒー豆を売るコーナーがあり、室内はやや薄暗く、4人掛けのテーブルがいくつかの島に分かれて15ばかりあっただろうか。コーヒーはブレンドとアメリカン、他にはミックスジュースやクリームソーダがあり、サンドイッチやカレーやナポリタンといったいくつかの軽食メニューがあった。つまりは駅のそばという立地だけが売りの安っぽい喫...
喫茶店のアルバイトは退屈だった。人通りの多い繁華街の大衆喫茶、薄暗い室内、たいしてうまくもないブレンドコーヒーに立地がいい分それなりに代金をとるふつーのカレーライスやナポリタン。バイトの時間が6時から10時だったせいもあるかもしれない。普通の人間はその時間帯はコーヒーなんて飲まずに飯食うものだからね。退屈なアルバイトの唯一の楽しみは、有線放送にリクエストすることだった。お店ごとに割り振られた有線を...