気温が低くなると、ジャズが心地よくなる。 なぜかはわからないけれど、気温が20度を下回る頃になると、ただ流れる音楽に身を委ねるのがしっくりくるようになるのだ。自分からは求めない、ただ流れる時間に身をまかせてみる。 最初、音楽への入り口は、実は「音」ではなく「言葉」だった。中学生になるかならないかの頃、巷に流れるニュー・ミュージックの一連のアーティストの歌った言葉は、思春期の入り口を開いてくれた。言葉に...
夏の終わりから冬の入り口って、なんてこんなに早いのだろうかと毎年思う。しかも、毎年毎年加速度的に早くなってるんじゃないか、って。夏への上り坂を登りきったらもうあとはごろんごろんと下るだけ、みたいな感じがする。 せめてその速度をゆっくり感じたい、というわけでもないけれど、穏やかで、派手さも華麗さもないけれどしっかりとした演奏の音楽を、ただ流れるがままに身を任せるのが心地よい季節だ。 そんなわけで、とり...
小室哲哉の衝撃的な逮捕報道から一週間、もうメディアで小室の話題は消えた。 日々の暮らしに直接影響を与えないゴシップ報道の賞味期限は本当に短いもので、ニュースでのいじられ方のひどさ以上に、あれだけ一世を風靡した億万長者の末路をよりはかなく感じさせられてしまった。まぁ、実際小室哲哉の作る音楽なんて「作品」ではなく「製品」に過ぎないのであって、そもそもなんの興味もないし、どうだろうと僕自身にとっても何の...
レコードコレクターズ増刊 ビートルズ名曲ベスト100 ふらっと立ち寄った本屋さんで、こんな雑誌があった。アンケートによるビートルズのベスト100曲を選ぶ、という企画。活動期間8年で200数曲しか録音していないのに100曲、ってのも何ともいえない企画ですが…。 ちなみに、ベスト10に選ばれたのはこんな曲。 1位 Strawberry Fields Forever 2位 In My Life 3位 Let It Be 4位 A Day in The Life 5位 ...
通勤で毎日乗る電車は、ベッドタウンをつなぎながら都市部に向かって大きな川に沿って走っていて、東側の席に座れば窓の向こうに幾度となく川や河原の土手が現れる。 その車窓から見える景色は、空が広くて、僕はけっこう気に入っている。 小春日和のうららかな陽射しの遅い午前中、遅出出勤なのにあくびをこらえきれずにぼんやりしていたときのことだ。停車駅が近づいて電車が減速を始めたその窓の向こうに、河原の土手で水色の一...
いきなり冷え込んだ寒い朝。天気予報で冷え込むとは聞いていたものの本当にシンと冷え切って、まるで真冬みたい。吐く息が白い。 慌ててコートをひっぱり出してきた。セーターも着込んだ。 だっていつの間にか、もう11月も半ばを越してしまった。そりゃ冷え込みもするはずだ。 あぁ、また冬がやってくる。 冬はあまり好きじゃない。たくさん着込むのは窮屈だし、血の巡りが悪くて肩は凝るし、仕事は毎年追い込まれたように忙しくな...
秋らしい爽やかさが戻った休日。 ショッピングセンターはいつもより込み合っていた。幹線道路もいつもより渋滞していた。 誰もが、寒い冬が来る前にもういっちょ何かやっておかなくちゃ、とでもいう感じでせっせとお出掛けに勤しんでいるように僕には思えた。 秋の午後はとても短い。 渋滞に巻き込まれている間に空はあっという間に茜色に染まり紺色に変わり深い闇に変わっていった。 ぼやぼやしていたら伸びてしまったラーメンみ...
晩秋のセレクションをもうひとつ。 秋っぽい音楽がやたらにしっくりくるのは、自分自身の人生が「秋」に差し掛かっているからなのか。 それとも単にギンギンにハードな音楽を聴く気力や体力が落ちているからなのか。 10代の頃、いや30を過ぎた頃ですら、40代なんてものすごいおっさんだと思っていた。40以上の人はものすごく分別があって大人だと思っていた、少なくとも僕にはそう見えていた。歳をとったら自然に分別もついて思慮...