8月1日は日本一の規模といわれる某宗教団体の花火大会の日。 僕はその宗教団体がこしらえた奇妙な塔がよく見える大阪のベッドタウンで育った。 その花火大会の夜は夏のイベントのひとつのクライマックスだった。 小さいときは家族と一緒に、思春期になってからはクラスメイトと、それから工場の屋上で職場の同僚と、毎年観ていた花火大会。 鮮やかで艶やかで豪快でしかも儚く散る花火は、確かに僕らの心に何かを残してゆくけれど、...
一週間前のカンカン照りの灼熱の日差しのことを思えば、ほんの少し熱気は和らぎつつあるようだ。 真夏のピークは今、ゆるやかに通り過ぎてゆこうとしている。 もちろん、まだまだ暑い日は続くのだけれど。 すでにすっかりバテてしまった体と心を立て直すために、涼しげな音で部屋を満たしてみる。 森からの爽やかな風のように、絶え間なく寄せる波のように、流れ行く雲のように、ゆったりした気分で、リラックス・ムード・イン・サ...
この世界のぜんぶ/池澤 夏樹 池澤夏樹「この世界のぜんぶ」所収 『深夜の電話』 二歳の子供は寝相がわるい ふとんの上を一晩中 あっちへこっちへ動き回っている 午前三時 たまたまその足の裏が こちらの耳に押し当てられる 受話器のように もしもし?もしもし? 返事はない でも 小さな足の奥から ケラケラと笑う子供たちの声と 水を蹴って走る足音が聞こえる 海の風の匂いがする あちら側は晴れ 群青の空と 純白の積乱雲 子供...
歌さがし~リクエストカバーアルバム~/夏川りみ 朝晩の空気はずいぶん爽やかに涼しげになってきた今日この頃。 暦の上では立秋をとうに過ぎ、夏の軍隊は穏やかに後退してゆく。 やれやれという気分と同時に、なぜかほんの少しさみしい気分がふっとよぎる。 そんな昨今、はまって聴いているのが、夏川りみさんの名曲カバーアルバム『歌さがし』なのです。 彼女の声は、去りゆく夏を見送るようにほんの少しせつなくて、透き通ってきら...
PRESENT#3/仲井戸麗市 夏という季節は、なぜかとても特別な感じがする。 例えば、春が過ぎていくのを淋しい気持ちで見送ったという記憶はない。秋や冬にしてもそうだ。 なのに夏だけは、過ぎ去っていくことがとても淋しく、またそのことをとてもせつなく、またはとても愛おしく思ってしまう。思い返せば、暑く、バテバテで、汗だくで、寝不足で、うんざりするようなことばっかりだったはずなのに、過ぎていこうとする夏の思い出は...
高校野球もオリンピックも終わり、子どもたちの夏休みももうすぐおしまい。 あれだけ厳しかった真夏の陽射しもこのところすっかり勢いを潜めた。 朝晩はすっかり涼しくて、数ヶ月ぶりに暖かい布団に包まって眠る幸せを、ずっと満喫していたくなる。 今年の夏は暑かった。仕事もとても忙しかった。その疲れがどっと出ているのか、いくらでも眠れる気がする。いくらでも眠っていたい。 過ぎてしまえば、パッとしない、充実感よりも疲...