Down by the Jetty / Dr.Feelgood パンク前夜のシンプルでランブルな最高にかっこいいロックンロールバンドといえば、忘れちゃいけないDr.フィールグッド。ツェッペリンやディープ・パープルといったハードロックや、クイーンや数多のプログレバンドみたいに、或いはクイーンにしろデヴィッド・ボウイにしろ、ロックが派手に、大げさに、複雑に、難解に進化していった行った時代に、まるで60年代初期のストーンズみたいなブル...
Negotiations & Love Songs / Paul Simon7月4日はアメリカ建国記念日。1976年。世の中は「アメリカ建国200周年」とやたら盛り上がっていた。僕は小学校3年生だったのだけれど、なんだかよくわからないなりに、世の中がバカみたいに明るくにぎやかなお祭り騒ぎ、いわゆる「躁状態」-そんな言葉はもちろん当時知らなかったけれど-だったのを覚えている。その頃、時代は大きく変わろうとしていたのだと思う。家の前の田んぼが...
The Wild, the Innocent & the E Street Shuffle / Bruce Springsteenレコードについている解説のほとんどはクズみたいな文章だ。ほとんどは、〆切に追われて義務的に書いた売り文句の羅列だから。けど、時々、はっとさせられる文章に出会うこともある。例えばこのスプリングスティーンのセカンド、北山耕平氏が1975年に書いた文章の一行。「僕がブルース・スプリングスティーンを好きなふたつめの理由は、彼が一人でいるこ...
COYOTE / 佐野元春♪荒地の何処かで朝焼けに浮かぶこの街に気持ちのいい風が吹いている眠たげな太陽燃え尽きるまでがらにもないブルースを口ずさんでゆくこの荒地の何処かで君の声が聞こえているこの荒地の何処かで途方に暮れている佐野さんの3年ぶりのニューアルバム「Coyote」。新しいCDを開封してテーブルに載せるのは、いつもドキドキするものだ。聴こえてくるのは、軽快なロックンロール。ザクザクとしたビートにのって「明日...
> Live in Italy / Lou Reed(拙訳:Sweet Jane)スーツケース片手に街角に立っているジャックはコルセット、ジェーンはヴェストを身にまといそして俺はロックバンドで歌ってるジムはベアキャットで飛ばしてるそれぞれにとってそれぞれの違う時代があり詩人は皆 韻の踏み方を学んだ女たちはグルグル眼を回してる愛しのジェーンジャックは銀行家で ジェーンは事務員二人とも金には慎ましい暮らしをしている仕事が終わって帰宅し...
Live Rust / Neil Young七月の台風としては観測上最大級といわれる台風4号が接近してきている。午後からはずいぶん雨風が激しくなってきた。TVでは鹿児島や高知から、レポーターが暴風雨の中で叫んでいる。台風はけっこう好きだ。子供の頃はよく台風が来るたびに停電になったもので、ろうそくの火の元に家族が集まって明かりがつくのをドキドキしながら待っている様子は、ちょっとしたイベントみたいなものだった。当たり前に...
Watercolors / Pat Metheny台風が去り、清々しいほど濃い青の空が顔をのぞかせた午後。風はまだ強く、低い空にある雲がびゅんびゅんと流れてゆく。その上の高い空を飛行機が飛んでいる。そのまた上のもっと高いところにちぎれたような雲の列。高い空と低い空で風の流れが違うせいで、いつもより空の高さがはっきりとわかる。川は河川敷を飲み込んで、酒が入って気が大きくなった酔っぱらいみたいにいい気になってごうごうと音を...
Return To Forever / Chick Corea朝からセミが鳴いているのに、はっきりしないお天気が続く。梅雨明けはいつなんだろう。もはや夏が待ち遠しい歳でもないし、正直少しでも涼しい方がありがたいのだけれど、それにしてもこのぐずぐず感はいかんともしがたい。チック・コリアの『Return To Forever』。マイルスのエレクトリック・バンドを離れた奇才チック・コリアが1972年に発表したアルバム。いわゆるクロス・オーバー/フュージ...
Black Market / Weather Report明日から夏休みだ。一週間、仕事を離れる。日々の仕事はある種戦いみたいなもので、体質をある程度酸性にしておかないといけないので、自らを鼓舞するような激しい音が聴きたくなる。或いはその反動でリラックスできる音楽がほしくなる。けど、少し長い休みとなると、呆けたくらいの空気感の音が良い。そういう意味でも70年代後半のフュージョンは悪くない。クルセイダーズ、スタッフ、リターン・...
Heavy Metal Be-Bop / Brecker Brothers70年代ジャズ/フュージョンの金字塔。っていうか、これはむしろファンク。なんなんだ、このぶっとい音は?と思うくらいぶりぶりと迫ってくるベース。タイトで重心の重いどっしりしたドラム。ハイテンションで縦横無尽にうねりまくり、ぎざぎざと鋭角的に上下するフレーズを吹きまくるブレッカー兄弟は、まるで16ビートにのったチャーリー・パーカーとディジー・ガレスピー。大音量で浴びる...
Nearness of You-the Ballad Book / Michael Brecker今年1月に白血病で他界したマイケル・ブレッカーが、2001年に発表したバラード・アルバム。g:パット・メセニー、p:ハービー・ハンコック、b:チャーリー・ヘイデン、ds:ジャック・デジョネットという参加メンバーはまるでメジャー・リーグ・オールスター級。オーネット・コールマンと共にフリー・ジャズの創始に関わり、革新的なセッションに参加してきたヘイデン。6...
Sound of the Summer Running / Marc Johnson真夏のよく晴れた青空の下、川沿いの公園の木陰で、このアルバムを聴きながらうとうと。夏休み、って感じです。パット・メセニー、ビル・フリゼールという、タイプの全く違うようで、ジャズに留まらない汎アメリカ音楽的な表現力の広さといった共通点を持つ二人のギタリストを従えたこのアルバム。繰り広げられているのは、カントリィからフォーク、ジャズ、ブルース、そしてロックン...
Larry & Lee / Lee Ritenour日本国内に旅行に行くつもりはない。沖縄か北海道以外は。理由は簡単、“気候”が変わらないから。寺社仏閣や有名建築物などの名所旧跡にも、美しい風景にもあまり興味がないから、日本国内ならどこへいっても同じように感じてしまうのだ。気温や風土は変わっても、日本独特の湿気を含んだ“気候”は残念ながら変わらない。それならいっそ、気候の違う国の音楽を部屋一杯に流したほうがまだ旅行気分を...
Inflated Tear / Rahsaan Roland Kirk誰の著書だったか忘れたけれど、自らの書物の嗜好についてこんなことが書かれていたのを読んだことがある。自らの書物の嗜好を把握するのに有効な方法はとにかく手当たり次第に読むこと。面白いものと感じたものはより深く、その関連作品にも手を伸ばしてみる。読んでみて読み進まなかったものは、自分に合わないか、まだそれが吸収できる時期ではないので一旦パスする。その手順はまるで暗...
African Piano / Doller Brandサッカーの国際試合では国歌斉唱がある。「国歌」については様々な物の見方や考え方があるとは思うしそのことを否定するわけでも肯定するわけでもないのだけれど、あのような場で聴こえる『君が代』はいつも音楽的に異質に感じる。ほとんどの国が西洋音階の、例えばマーチングバンドが演奏しそうな楽曲を採用している中で、民族的伝統の音階を採用しているからだ。それぞれの民族にはそれぞれの民族...
Virgin Beauty / Ornette Coleman & Prime Timeオーネット・コールマンとの出会いは、山積みにされた中古レコードだった。まだジャズに詳しくなかった頃、何となく名前を聞いたことがあるというだけで手に取ったこのアルバム。のっけから脳天気なサキソフォンが、今まで聴いたことのないようなフレーズをプーパカプーパカ、プーパカピー。なんじゃこりゃ?と思っているうちにいつの間にか背中から羽が生えて天使になったよう...
America / George Adams ジョージ・アダムス、まるで初期のアメリカ大統領にでもいそうなベタベタな名前を持ったサックス奏者。コルトレーンやアルバート・アイラー直系のテクニカルでややフリーキーなフレーズを野太くてソウルフルなトーンでスピリチュアルに吹きまくる。1992年に亡くなるまでMt.フジ・ジャズ・フェスティバルに毎年出演し、日本でもそれなりに人気があったらしい、ということはずいぶん後になって知った。 そ...
夏のぬけがら / 真島昌利日曜日の夕方に娘と散歩していたら、公園のベンチの足元でセミの幼虫がうろうろしているのを見つけた。あれは幼虫?っていうのかな?それとも蛹?茶色い、大きな鎌を持った、あれ。抜け殻ではよく見かけるけれど、動いているのを見るのはいつ以来だろう?奴はベンチの足を木と思い込んで必死に登ろうとしている。けれど、ベンチの足は鉄製で、奴の大きな鎌もまるで役に立たず。滑っても滑っても必死に登...