イスタンブールで旅のツワモノたちの話を聞きながら、もしイランのビザが取れたらイスファハンやペルセポリスまで行ってみたいなぁ、と考えたのだが、ビザの取得には申請からあまりにも時間がかかりすぎるので断念。 今もそうなのかもしれないが、当時イランは、ホメイニ師のイスラム革命以降一種の鎖国的な政策をとっていて、外国人旅行者がむやみに出入りできなかったのだ。 それではせめて国境まで行ってみよう、とアンカラから...
ここはアジア大陸とヨーロッパ大陸を結ぶガラタ橋のたもと、エミノニュ桟橋。 女性が手に持っているのは、この桟橋の名物、鯖サンド。 厚く切ったフランスパンに、こんがり焼いた鯖と、スライスした玉ねぎと、香辛料のような葉っぱをのせたもの。これがもう、めちゃくちゃおいしくて、イスタンブール滞在中毎日のように食べた。 トルコという国、とにかく食べ物がうまい。 羊の肉をスパイス漬けにして大きな串に巻きつけて、串をグ...
地中海を船で渡ってアテネに着いた。ギリシャという国の印象は、その旅行者がどこから来たかでずいぶんと異なるのではないか。ヨーロッパ方面から来た人にとっては「物価は安くて気候もよく、人も陽気で明るくてちょっとアバウトで、ヨーロッパの重苦しさとはまるで違う」と言うのだが、エジプトから来た僕のような者にとっては「物価は高いし人は暗くてよそよそしい、あんまり長居したくない国」ということになる。ギリシャの物価...
オアシスの村には、ひまわり畑がたくさんあった。ひまわりは荒れた土でも良く育つので、砂漠の栽培に適しているのだそうだ。観賞用ではなく、油をとったり種を食べたりするためのもの、僕もずいぶんとすすめられた。それから圧倒的によく食べさせられたのはトマトときゅうり。これも暑い砂地でよく育つ作物で、体を冷やす効果もある。水の少ない土地では瓜系のものの栽培が適しているので、スイカやメロンもたくさん栽培されている...
もし手元に世界地図があるのならアフリカ北部のページを開いてみてほしい。少し大きめの地図にならば、カイロ南西の方向へ約300kmのあたりに、バウィーティという地名が記されているはずだ。そこから南にはリビア砂漠と記されたベージュ色に塗りつぶされた地域しか見当たらないはず。僕が向かっていたのはバハレイヤというオアシス。バウィーティはそのオアシスにある小さな村落だ。今にも故障しそうなおんぼろバスに、もうす...
イスラエルから戻った僕が次に向かったのは、ナイル川を南へさかのぼった上流の町、ルクソール。カイロから夜行電車で約8時間。ここは、いわゆる「王家の谷」があることで有名な町。ナイル川をはさんで東側には小さな町があり、人々が普通に暮らしている。そして西側にはかつてのエジプト王家の墓がたくさんあり、こちら側には小さな村が点在するだけであまり人は住んでいない。東岸と西岸の間に橋はなく、渡し舟が運行されている...
バスはスエズ運河を越えてシナイ半島の砂漠の中をひたすら走り、国境に着いた。 乗客はそこで全員一度降ろされて、銃を肩に担いだ兵隊が警備をしている入国管理の建物に連れて行かれる。 とてもものものしい雰囲気、だが意外にもあっさりと入国を許可される。 パレスチナ問題のことはいまひとつよくわからなくて、いろんな本を読んだりはしたのだけれど、やはりよくわからない、というのが本当のところ。 時系列として何が起きたの...
有名なクフ王のピラミッドの前で。ピラミッドに悠久のロマンを感じようなんてことは不可能でした。このカメラのこっち側では土産物屋がひしめきあって客引きをしていて、それこそハエのようにまとわりついて、うっとおしいたらありゃしない(笑)。ただ、僕だってずっと手をこまねいていたわけではない。郷に入れば郷に従え、習うよりも慣れろ、旅ではこれが大切だ。のべつまくなしにしゃべりかけてくる商売人たちと渡り合うには、...
تحذير لكل مصري خارج مصر - لا تسمع و لا تشاهد هذه الأغنية まとわりつくような暑さ。砂埃。けたたましく鳴るクラクションの音。おんぼろのスピーカー...
旅の終着点はニューヨーク。 テレビや映画で見ていた世界の中心地、世界の首都。 とはいえ、なんだかんだで50日近く旅を続けてきてすっかり満足していた僕にとってはもうおまけみたいなものだったので、ニューヨークでの数日はもうふつうの観光客みたいに有名な場所をうろうろしていただけだったのだけれど。 イーストリバーとハドソン川をぐるっとマンハッタン島を一周する観光船に乗った。ソーホーやグリニッチヴィレッジをう...
アメリカ行きを決めたとき、絶対行ってみようと思った場所のひとつがニュージャージー。 その頃の僕の一番のロックンロール・ヒーローはなんといっても“BOSS”ブルース・スプリングスティーンだったからだ。 そのことを書こうと思っていた矢先に飛び込んできたボスの片腕、クラレンス・クレモンズ氏の訃報。 まだ69歳、脳溢血で倒れたまま帰らぬ人となったのだそうだ。 高校生の頃、「明日なき暴走」を初めて聴...
メンフィスからシカゴへ。 深夜に乗り込んだバスは、乗り合わせた乗客のほとんどがアフリカ系だった。 ブルースで歌われる世界をとても身近に感じた。 隣に座ったでっぷり太ったおばさんの横で小さくなりながら、バスはシカゴへ。 マディ・ウォーターズやハウリンウルフがしのぎを削ったブルースの都。シアーズタワーなど、超高層ビルが立ち並ぶ大都会。 ウィンディ・シティと言われるとおり、ミシガンを超えて街中を吹き抜ける風...
マイアミからはバスで一気に北上した。 フロリダ州タラハッシー、アラバマ州モントゴメリ、バーミングハム、テネシー州ナッシュビルを抜けてシカゴへ向かうルート41号線。グレイハウンドでまるまる一日ハイウェイを揺られる。 ハイウェイの向こう側、延々と続く広大な畑。 あぁ、アメリカだなぁ、なんて思いながら、こんな畑で奴隷労働に従事してきたアフリカから連れてこられた人々のことを思う。あるいは、昼間畑仕事で汗を流...
キーウエストに行きたいと思ったのは、セブンマイルブリッジを渡ってみたい、というとてもシンプルな思いつきからだった。 フロリダ半島南端から連なる小さな島々はフロリダ・キーズと呼ばれ、一番端のキーウエストまで延々200km近くをオーバー・シー・ハイウェイと呼ばれるハイウェイが繋いでいる。その中でも全長約11kmもあるセブンマイルブリッジはまさに海の上の道。たぶん多くの方がテレビのコマーシャルやなんかで...
フラッグスタッフからアルバカーキ、エルパソ、サンアントニオ、ヒューストンと、バスを乗り継いでニューオーリンズへ向かう。少し前までの旅の憂鬱なんていつの間にかすっかり吹き飛んでしまっていた。荷物をバス・ディーポのコインロッカーに預けてその日一日その町をぶらつき、夜行バスでまた次の町へ移動するということを繰り返すこと4日。我ながらタフだったと思う(笑)。ヒューストンを越えたくらいから今までの乾いた空気...