ヒップホップはあまり得意ではない。得意でない理由として、言葉に大きなウェイトがある音楽でありながら言葉がダイレクトに伝わってこないことが挙げられるだろう。もうひとつの理由は、アナログ育ちの世代なのでスクラッチ・ノイズや打ち込みのデジタルなリズムがどうにも肌に合わないこと。そんな中で現れたアレステッド・ディベロプメントの生音感の強いヒップホップには素直に拍手喝采だった。やっぱり生音だよな。言葉がわか...
レニー・クラヴィッツは、1964年ニューヨーク生まれ。父親は東欧系ユダヤ人、母親はマイアミ出身のバハマ系。幼い頃から音楽好きの両親の下で音楽に親しむ生活を送り、少年時代に好きだったミュージシャンは、カーティス・メイフィールド、ジェームス・ブラウン、ジョン・レノン、レッド・ツェッペリン、ジミ・ヘンドリックス、ジャクソン5などだったそうだ。この出自と音楽嗜好を聞くだけでも、このリストにラインナップしたのは...
パレスチナとイスラエルの一時休戦は7日目に破られた。昨日のイスラエル軍による空爆ではパレスチナで178人が死亡したという。衝突が始まって以来、双方の死者はパレスチナ側が約1万5000人、イスラエル側が約1200人にのぼるのだそうだ。パレスチナ側にもイスラエル側にもそれぞれの歴史的背景があり、それぞれの主張があるわけで、宗教間の争いや国境の紛争に切迫した意識が薄い日本人が何を言っても当事者の意識とはかけ離れてし...
セネガルの首都・ダカールの沖合にはゴレ島という世界遺産がある。16世紀から18世紀にかけて、西アフリカの各地で取り引きされた奴隷は、一旦この島に集められたあと、アメリカへ送られたのだそうだ。ヨーロッパからの移民の多くが、受け入れ窓口だったニューヨークのエリス島を通ってアメリカに入ったのとは逆に、多くの黒人たちはこの島を通ってアメリカに入った。ある意味、アメリカや西欧世界にとっての負の遺産と言える島だ。...
ニューオリンズといえばネヴィル・ブラザーズ。1954年に長兄アートがホーケッツに参加したのを皮切りに、ミーターズや数々のセッション・バンドで、あるいはソロで、ニューオリンズの音楽シーンを司ってきたネヴィル4兄弟がネヴィル・ブラザーズを結成したのは1977年のことだけど、キャリアで言えばローリング・ストーンズ以上のキャリアを誇る重鎮。1989年リリースのこのアルバムでは、よりアフリカ的なサウンドを志向し、ヴード...
アメリカは広い。今でこそ50州は一体であるようなイメージがあるけれど、実は地域によってその歴史は幾分異なっている。1867年に併合されたアラスカ州や1898年に属州になったハワイ州は言うに及ばずだけど、テキサス州はスペイン領・メキシコ領から独立国の時期を経て1845年に合衆国に参加しているし、ニューメキシコ州やカリフォルニア州がメキシコから併合されたのは1848年で、これらの地域は1776年にアメリカが独立してから70年...
フィッシュボーンの登場は結構衝撃的だった。ファーストのミニアルバムがリリースされたのは85年だったかな。パンク以降のシーンのイギリスでは、白人黒人混成のUB40やスペシャルズなんかがレゲエやスカとパンクをミックスしたような音楽をプレイしていたけれど、それをアメリカの黒人たちが逆輸入したような音がとてもインパクトがあったのだ。“Ma and Pa”はファンキーなスカだけど、歌われているのは家庭崩壊だったりするわけで...
1987年はプリンスの『Sign Of The Times』がリリースされた年。その年に、プリンスをも凌ぐ大物として鳴り物入りでデビューしたのがテレンス・トレント・ダービーだった。ひとりですべての楽器をこなし、ソウル・ミュージックをベースにしつつもロックからの影響も濃いスタイルは当然プリンスを連想させるけど、テレンス・トレント・ダビーはプリンスよりももっとダイレクトにロックっぽかった。ファンク度は控えめだったし、リズ...
アニタ・ベイカーさんが一躍ブレイクした1986年のアルバム。いわゆるクワイエット・ストームっていうのかな。アダルティー、シルキー、ロマンチック、ジャジー、スムージー・・・そんな言葉で形容される彼女の音楽は確かにお洒落で、バブル最盛期の80年代後半には粋なオトナのBGMとして流通していたことは確かではあるのだけれど、ただお洒落なだけではない、芯があってずしんと心に響く骨太さも魅力なわけで。プロデューサーは...
80年代の半ばという時代は日本ではバブル景気への突入期。なんだかお洒落で浮かれたものがあっちこっちで幅をきかせ、ネアカ・ネクラ、マルキン・マルビなんて言い方で明るくゴージャスであることが正しいとされた時代だった。この時期、ブラック・ミュージックはブラコンの最盛期。ライオネル・リッチーやテディ・ペンターグラス、ピーボ・ブライソンを筆頭に、ルーサー・ヴァンドロスやジェームス・イングラム、カシーフといった...
1986年、突如大ヒットしたロバート・クレイのアルバム『Storong Persuader』。“Smoking Gun”なんてMTVでもしょっちゅう流れていた記憶がある。マイルドなトーン、ジェントルな語り口。ホーンやキーボードも入ったR&B寄りのサウンドは、同世代のスティーヴィー・レイ・ヴォーンのような派手さもなく、だからといって渋好みの泣かせるプレイをするわけでもない。テクニックは確かに素晴らしいのだろうけど、すごいテクニックのギタリ...
10代の頃に聴いてきた音楽とソウル/R&Bの関係を振り返っていったとき、80年代の第二次ブリティッシュ・インヴェイジョンと言われた、ソウルから影響を受けたイギリス勢の存在は無視することができない。いわゆるブルー・アイド・ソウルと呼ばれた白人がプレイするソウル・ミュージック。カルチャークラブやポール・ヤングに始まって、ABC、スパンダー・バレエ、ワム〜ジョージ・マイケル、ポール・ウェラーのスタイル・カウンシル...
惜しくもこの5月に亡くなられたティナ・ターナーが1984年にリリースした『Private Dancer』。このアルバムを敢えて選んだのは、リアルタイムで初めてちゃんと聴いたブラック・ミュージックのレコードだったという大変個人的な理由によるものです。当時ヒットしていたブラック・ミュージックのアーティストといえば、マイケル・ジャクソン、ライオネル・リッチー、プリンスあたりだったか。そのあとホイットニー・ヒューストンが出...
うー!これはカッコいいな。残念ながらCDが再発されないまま、今や知る人ぞ知る存在になってしまった円道“シャーク”一成さんの1984年のレコード。オープニングの“愛しのワンダフルダーリン”は確か、何かのCMソングにもなってたんだったかな、当時けっこうヒットしてた記憶があるんだけど。アルバムには山下達郎も全面参加していて当時流行していたシティ・ポップ風の佇まいではあるけれど、何しろ円道さんのシャウトがすごい。オー...
我々の世代にソウル・ミュージックの楽しさを教えてくれた一番身近な存在はシャネルズ〜RATS &STARだったのではないだろうか。80年だったっけ、“ランナウェイ”でシャネルズがデビューしたのは。揃いのスーツに黒塗りの出で立ちはインパクトがあったし、テレビにもよく出てたからけっこう自然に馴染んでいた。大好きでよく聴いていたのは、83年リリースの『SOUL VACATION』。プロデュースは大瀧詠一、ジャケットはアンディ・ウォー...