年齢を重ねるごとに、洋食や揚げ物よりも和食の方が好きになってきた。若い頃に当時の大人たちがそんなことを言っていて、そのときは「ジジくせー。そーゆーもんかぁ??」って聞き流していたけど、実際そーゆーもんのようだ。和食といっても、いわゆる世界遺産と奉られるような料亭っぽいもんじゃない。もっとフツーの日本に昔からある一汁三菜的なもの。ご飯・味噌汁・お新香・あじの干物、みたいな。*...
「500円で本場アメリカのピザが食べ放題!シェイキーズ心斎橋店オープン!」そんなニュースに飛びついたのはクラスメイトのSだった。「500円で食べ放題やってよー!今度の日曜日あたり行かへんかー。」幾人かが賛同し週末の心斎橋行きが計画される。「おまえも行くやろー?」「うん、まぁ、ええけど。」1983年、高校2年生だった。ギリギリ大阪府内にある、大阪の端っこの田舎の高校。地元の町にあるチェーン店といえば王将くらい...
牡蠣という食べ物は、なんともなまめかしい。セクシーでエロチックな感じがする。ぷりっとふくよかな身、こってりとミルキーなコクと磯の香り。ジューシーでみずみずしいんだけど、同時にどこか生臭さがあって、生き物をまるごといただいている感じがすごくする。しかも内臓だけをすすっているような生々しさというか。もちろん嫌いではないんだけど、食べるときには少し勇気がいる。学生の頃に、友人の下宿で牡蠣鍋をたらふく食べ...
関西人なので、麺といえばまずはうどんです。うどんのおいしさはまずはお出汁だ。鰹や昆布でとった黄金色のお出汁の、ほんのり甘くて後口すっきりの旨み。麺は太めがいい。コシがあればいいというものでもなくのどごしと歯ごたえのバランスが大事。口当たりはやわらかくお出汁がしっかりと絡みつつ、噛むと芯にはもっちりとした食感。これはラーメンや焼きそばでは味わえない快感だと思う。具材はやっぱりお揚げ。食べ進むごとにお...
じゅわじゅわじゅわっと音を立てて、鍋の中でとんかつが揚がる。こんがりとキツネ色で元気よく立ち上がった衣に包丁を入れると、ザクッザクッと小気味の良い音がする。やわらかなロース肉が衣から顔を覗かせる。付け合わせは当然千切りキャベツ。とんかつソースをとろっとかけて、その一切れを口に運ぶ。サックリした衣の歯ごたえ、ジューシーな肉汁と肉の旨み。揚げたてのとんかつほど旨いものはそうそうない。少なくとも、肉系軽...
冷えますね。寒いというより冷たい。もうすぐ大寒、寒さも底の時期。寒い時期においしいものといえば何といっても「おでん」です。とりあえずぶっこんで煮ておけば、2日はおでんでいける。っていうか、2日目、3日目のほうが味がしみておいしくなるのですよね。おでんの楽しさは、バラエティーとコンビネーションだと思います。よーく味のしみた大根のほっこり感。口にすればじゅわっとお出汁のしみでる厚揚げ。たまごやこんにゃ...
一番好きな食べ物はなんだ?と聞かれると、意外と思いつかない。基本的には何でも食べる。好き嫌いはない。親に感謝すべきことはいろいろあるんだろうけど、「読書好き」と「好き嫌いなし」に育ててもらったのは本当にありがたいと思っている。親にできることなんてそれでじゅうぶんだと思う。それはともかく。やはり「これが一番好き」というものはパッとは思いつかない。結局、これ食べたいなぁ、と思ったときに食べるものがいつ...
すき焼きはあまり好きじゃなかった。そう言うと、なんと贅沢な!と言われるだろうか。我々の父母の世代というのは、子どもの頃はまだ戦中戦後で食糧事情がよろしくなかったせいか、「贅沢なご馳走」というものへの憧れや「家族の団らんこそが幸せの象徴」という思い込みが強い世代だ。僕の父親もそういう男で、普段はそんなに贅沢はしないどちらかといえば倹約家のほうだったけれど、誕生日だとかお祝い事だとかいう節目には外食で...