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♪MILK AND HONEY -My Vintage(55)-

MILK AND HONEY
Milk and Honey / John Lennon and Yoko Ono

Released:1984

1980年に凶弾に倒れたジョン・レノンの未発表曲集。
実際は前作『Double Fantasy』同様にジョンだけの作品ではなく、ジョン・レノン&オノ・ヨーコのペア名義による作品で、次作用に録りためられていたジョンのデモ・テープからの曲とヨーコの曲が交互に並べられている。
オノ・ヨーコさんについては、個人的には正直あまり好感は持てなかったし、70年代の幾つかのジョンのレコードで聞こえてくるヒステリックな金切り声も聴いていて辛いものがあるのだけれど、このアルバムに納められたヨーコのうたは純粋にとても素敵だと思う。
なんていうんだろうか、とてもチャーミングなのです。

 Let me count the ways how I love you
 It's like that gentle wind you feel at dawn
    (Let Me Count The Ways

素敵なラブ・ソング。
ジョンとヨーコを理想のカップルだと持ち上げるつもりはないけれど、この歌を聴くと、ヨーコさんは本当にジョンのことを心から愛していたんだな、と思う。

日本語で歌われるこの歌もそう。

 一日に何度会っても会い足りない
 一生に何度会っても会い足りない
    (Your Hands

少し痛々しいくらいだけれど、愛おしい気持ちにあふれていて、ひしひしと切なさが伝わってくる。

ヨーコさんがこのアルバムを発表したのは、ジョンの死から丸3年後の1984年の年明け。
最愛の人を理不尽な力で奪われた悲しみを受け入れるために、ヨーコさんはこの作品を「ジョン・レノンの遺作」としてではなく「ジョン・レノン&オノ・ヨーコ」の作品として制作する必要があったのだと思う。
そして、このアルバムの制作を通じてヨーコさんはジョンの死を受け入れ、自分自身が癒されたのではないだろうか。

 Dont be scared,
 Better to love than never love at all.
    (Don't Be Scared

この歌はおそらく、ジョンの“Scared”という、俺ってダメダメソングへのアンサーソングとして書かれたものだと思われるのだけれど、ジョンを亡くしたあとに歌われるこの歌は、もっと深い意味合いを帯びている気がする。
「恐れないで」と自らに語りかけるように、そして「愛さないよりは愛した方が絶対いいわ。」と今の悲しみさえをも肯定するような意味合い。
こう歌えるまでには3年もの歳月が必要だったのではないかと思う。

丸3年を迎えた3・11の報道では、たくさんの最愛の人を失った人たちが、今も嘆き悲しみ、しかしなんとか悲しみを受け入れて癒されようとしている物語がいくつも紹介されていた。
そのひとつひとつに泣きそうになりながら、またいたたまれないような気持ちになりながら感じたことは、「死」は死んだ者の側ではなく生きている側にあるものなんだな、ということ。
生きている者が愛する者の死を受け入れるためにはある種の癒しのプロセスが必要であること。そしてその中で紡がれた物語の中で、死んだ者はずっと生き続けていく、ということ。


死後、ジョン・レノンという存在はロックンロールの偉大な伝説となり、愛と平和の巨大なシンボルとなったけれど、僕はこのアルバムで描かれている、プライベートに近いジョン・レノンの感じが僕は好きだな。

 Woke up this morning blues around my head
 No need to ask the reason why
 Went to my kitchen and lit a cigarette
 Blew my worries to the sky
    (I'm Stepping Out)

ブルースを吹き飛ばしていっちょやったろかい、ってな感じの軽快なロックンロール。

そしてこの曲。
 Nobody told me there'd be days like these
 Strange days indeed -- strange days indeed
    (Nobody Told Me

「こんな時代になるなんて、誰も教えてくれなかったぜ。」
3年前の日曜日の午後だった。コタツにもぐりこんで見ていたテレビのニュースから飛び込んできた、福島の原発がぶっとぶ映像。
まさかこんな時代になるなんて、誰も考えなかった。
もしジョンが生きていたら、と考えるのはこんなときだ。
ジョン・レノンならこんな時代をどう歌ったのだろうか、と。



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コメント

[C2171]

LA MOSCAさん、毎度です。
ええ、ジョンについてはたびたび同じようなこと書いてますねー。
このアルバムに残された、シンプルなジョンの姿はかっこいいですね。
そしてヨーコさんも。

[C2167] 同じく

70年代のヨーコは苦手なんだけどコレと「ダブル・ファンタジー」のは俺も好きです。
憑き物が落ちたみたいなリラックスしたカンジで。
そうそう、可愛らしささえ感じたりもして。

「ノーバディ・トールド・ミー」の歌詞、その部分が俺もあの頃、よく思い出してました。
そしてこういうジョンが俺も好き。
度々、goldenblueさんとこういう会話してますよねぇ(笑)

[C2165]

GAOHEWGⅡさん、こんばんは。
ヨーコさんの歌は最初は僕も飛ばして聴いていました。
でも最近はけっこう本気でいい歌だと思っているんですよ。
メッセージは大事ですが、メッセージだけなら詩を読んでいりゃいいわけで、そうではないこの人独特の歌い方やメロディーの乗せ方がいいな、と。
まぁそうは言ってもジョン・レノンがらみでなければやっぱりまず聴かない種類の音楽ではありますがね。

[C2163] 久しぶりにチャレンジ

golden blue様

こんばんは

いつもヨーコを飛ばす派のワタクシですが、
こちらの記事を機会に改めて聴いてみました。

やっぱり強烈ですね。
カルメン・マキのように
パワフルなヴォーカルなのですが、
何というかメロディーに載せる方法が・・・・・・
ゲフンゲフン。

しかしながらメッセージの素晴らしさは
肝に銘じようと思います。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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