Woman and I...OLD FASHIONED LOVE SONGS / 柳ジョージ&レイニーウッド Released:1980
♪南廻りの船でアフリカへ行くのが夢さ~、というフレーズで始まる「アフリカの夢」という歌が大好きだった。
冬の長い町から都会に出てきた、とある酔っぱらいの、まるで喜劇のような悲劇の物語。
この曲、なぜかぐっと来たんだよなぁ。
当時、中学生だったけど。
いわゆるニュー・ミュージックと呼ばれる音楽が全盛だった70年代末~80年代初め、なよっと女々しいフォークくずれやらにやけたシティ・ポップみたいなミュージシャンがぞろぞろいた中に紛れて、男くさくてブルージーでソウルフルな音楽を演る骨太な人たちもシーンに浮上してきた。
なぜか好きだったんだよな、柳ジョージさん。
女の子たちがチャーだツイストだ甲斐バンドだゴダイゴだ原田真二だとキャーキャー言っている中で、男っぽい世界を貫いている渋さにね、憧れた。
そう、まだ女の子の手を握ったことすらない中学生にとって、ジョージさんの描く世界はひとつの憧れだったのだ。
ジョージさんの歌から、まだよく知らないオトナの世界を、小さな窓から覗き見するように見ていたんだと思う。
落ちぶれて街を出て行く酔っぱらい、訳あって別れた男女の再会、故郷を懐かしみながら異国で命を落とした米兵・・・一曲一曲が短編小説のようにドラマがあって、ほろ苦い思いがあり、生きることの切なさや小さな喜びがあり、それを肯定する温かい眼差しがある。
レイニーウッドの面々の確かで情感豊かな演奏がそれに奥行きを与えている。
渋くてかっこいい、男がまだまだ男らしかった時代の奥行き。
音楽としては今や古くさい昭和の匂いが漂うけれど、まだこの国が貧しかったからこその人情味や、がむしゃらだった故の夢とそれが破れた儚さがなんとも切なくほろ苦く、心にしみる。
そして遠いアメリカへの憧れ・・・アルバムには
ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム 、
ユーヴ・リアリー・ガッタ・ホールド・オン・ミー 、
634-5789 、
テネシー・ワルツ と4曲ものソウル・クラシックやオールディーズのカヴァーがジョージさんらしい深く人情味のあるアレンジで収められていて、ジョージさんやレイニーウッドのメンバーのソウルやR&B、そしてアメリカへの憧れ、それからそういう音楽に憧れたザ・バンドやエリック・クラプトンへの憧れを映し出しているようだ。
このアルバムの発売が1980年、すでに35年になろうとしているんだな。
あの頃、わけもわからずに遠い世界の出来事のようにただかっこいいな、と思っていた大人の世界・・・それからあと、ハードロックやパンクに目覚めてブルースやソウルやジャズまで聴くようになってずいぶんと遠ざかってもいたのだけれど、今の歳になって聴くとこれがまたずいぶんしみるんだな。
あぁ、いつの間にかずいぶんと遠くまで来てしまっていたんだな。
なんて、ふとセンチメンタルな感傷に浸るのも、たまには悪くない。たまには、ね。
ちなみに「アフリカの夢」の物語、男が死んだことを知ったあと、こんなフレーズで締めくくられる。
情けない最期だけど
俺たちより奴の方が
幸せのずっと近くに生きたような気がするぜ
絵に描いたような幸せだけが幸せじゃない。
幸せなように見えても、いろんなことにがんじがらめになってしまうような安定した暮らしと、ダメダメでもダメダメなまま奔放に思うままに生きた人生と、どっちが幸せなんだ?なんていう投げかけが含まれていてニヤリとする。
うん、そうだな、今ならこう思う。
どんな生き方であっても、全部アリだ、全部OKだ、と。
スポンサーサイト
http://goldenblue67.blog106.fc2.com/tb.php/876-f77a8935
トラックバック
> 柳ジョージがいた時代のレイニーウッドは彼の人脈の関係もあって凄くヨコハマの色が強いバンドでした(たぶん最高傑作だろうサード・アルバムのタイトルの通りに)。今はなくなってしまったヨコハマの匂い(香りなんてやわな感じじゃない)が強烈でした。
関西生まれ関西在住の自分にとって、ヨコハマ色というのはいまいちピンと来ないのですが、ジョージさんの歌からは基地と港のにおいがします。それがヨコハマ色ということなのでしょうか。
泥臭いけど音づかいは結構おしゃれでもありますね。