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Nick Of Time/Bonnie Raitt




golden(以下g):「ボニー・レイットのことは、実はこのアルバムが出るまでまったく知らなくって。」

blue(以下b):「地味なブルースお姉さん的な印象しかなかったかもな。」

g:「特に高校時代〜大学入った頃くらいまでって、実はほとんど女性アーティストのレコードって聴いてなかったんだよね。自然に聴こえてきてたユーミンやあの当時ならレベッカか、そういうのを除いて意識的に聴いたのってジャニスくらい。」

b:「野郎の音楽ばっかり聴いてた。」

g:「男臭いやつね。」

b:「まるで聴かんかったわけでもないやろ。プリテンダーズは大好きやったし、ジョーン・ジェットとか。」

g:「・・・ある意味、男臭い側に入る気がするが。。。」

b:「・・・そやな。。。」

g:「あれ、なぜだったんだろう。女性アーティスト聴かなかったの。」

b:「ま、共感要素が少なかったんやろな。」

g:「あぁ、そうか。」

b:「まだ確固たる自己を確立してへん年頃っていうのは、とりあえず自分がどう在りたいかに興味が行くもんやしな。」

g:「ある意味、自分探し、的な?」

b:「恥ずいな。。。」

g:「ま、とにかく、ボニー・レイットを聴く機会はこのアルバムまでなかった。」

b:「1989年リリース、3年ぶりの復活作やったらしいな。」

g:「そもそもセールスが悪くて、売れ線狙いのポップなのを演らされた挙げ句レコード会社から契約を切られたらしい。」

b:「まぁ、地味やからな。」

g:「他の女性アーティストが、例えば同世代のリンダ・ロンシュタットなんかは若い女の子っぽいキュートさやコケティッシュさでずいぶんファンを獲得していただろうけど、ボニーはそういう点ではね。」

b:「今の時代でルッキズム的な観点での発言はご法度やけど、実際あの時代の女性アーティストの扱われ方というのはルックス重視だったし、アーティスト側でもそれを売りとしていた部分はあったわな。」

g:「ブロンディーのデボラ・ハリーみたいなセクシー路線か、スティーヴィー・ニックスみたいな小悪魔系。」

b:「そういう女っぽさを売りにしないとなると、クリッシー・ハインドやジョーン・ジェット、古くはスージー・クワトロみたいな男勝りの姉御系へ行っちゃう。」

g:「うーん、ボニー・レイットの場合、どこにもあてはまらなさそう。」

b:「そういう意味では、音楽とは別の場所で苦労しはったんやろな。」

g:「そう、でもその苦労が実を結んだのがこの作品で。」



b:「酸いも甘いも知った大人の渋さっていうか、男や女の性別を超えた色気があるな。」

g:「さらっとしつつ芯が太くて時々豪快。シルクのドレスじゃなくて、ごわっとしたデニムのような肌触りというか。」

b:「渋さだけじゃなくて、女性アーティスト独特の甘やかさもあるねんな。苦味や酸味があるからこそ甘味が引き立つ、という感じ。」

g:「元々歌は上手い人だけど、歌い上げ系でもシャウト系でもなく自然体っぽい。」

b:「で、ギターがかっこええ。」

g:「ロウエル・ジョージ亡き後のリトル・フィートに加入をスカウトされたとか。」

b:「ギュワ~ン、バリバリバリ、って感じで、弾いてる姿もかっこええねん。」



g:「ちゃらちゃらした若いお姉さんなんかより、佇まいそのものからかっこよさがにじみ出てるよね。歳を重ねるほどに魅力的になっていく、みたいな。」

b:「売れようが売れまいが私が演りたいのはこんな音楽なのよ、っていう意思を感じるな。」

g:「そう、で、それを肩肘張らずに自然に演ってる感じ。」

g:「一度引退勧告されて、もう売れなくったって好きな音楽ができればいいや、とあきらめたとたんにそれが大ヒットしてしまうのだから不思議なものだね。」

b:「まぁ、世の中そういうもんなんやろな。あざとく狙ったものは所詮見透かされる。私が演りたいのはこんな音楽なのよ、ということを力まずさらりと演ってみせた自然体みたいなのがええ味になった、みたいな。」

g:「売れない時期も含めての紆余曲折が、そういう成熟した魅力を生み出したのかもね。」

b:「だからといって枯れたわけじゃないじゃじゃ馬娘っぽい奔放な輝きや潤いもあるしな。」

g:「そういうのがトータルで、性別を超えた大人の色気になってる、と。」



g:「ボニーさんももう70才を越したんだけど、今も現役バリバリ。」

b:「この『Nick Of Time』以降、ずっと安定して作品をリリースし続けてる。」

g:「去年出たアルバムも、相変わらずとはいえかっこよかったよね。」

b:「若い頃にチヤホヤされた人って、その勘違いを修整できないままイタい晩年を過ごすことも多いけど、ボニーさんは大器晩成っていうか、ほんまええ年のとり方してはるな。」

g:「若い頃の窮屈な思いがあったからこそ、なのかもね。」

b:「まさに、若い頃の苦労は買ってでもしろ、っていうやつやな。」









On The Sunnyside Of The Street

コートをつかんで
帽子をとって
悩みは玄関先に置いて行こう
人生はとても素敵になる
日の当たる表通りでなら

パタパタと音が聞こえるでしょ
君のステップの幸せな音
人生は完璧になり得る
日の当たる表通りでなら

僕はいつも日陰を歩いてきた
ブルースといっしょに
もう怖じけづいたりしない
さまよい歩くのはもうおしまい

1セントも持ってなくても
ロックフェラーみたいにお金持ち
金色に輝く砂埃が足元に
日の当たる表通りでなら


“On the Sunny Side of the Street”は、ブロードウェイ・ミュージカルで1930年に発表された楽曲で後にジャズのスタンダードになった。
日本語タイトルは“明るい表通りで”。朝ドラの「カムカムエヴリバディ」で重要なテーマとして物語を演出していた曲としてもわりと日本中で知られた曲ではないだろうか。

コートをつかんで、という表現があることから、初夏や夏の明るい陽射しではなく、まだ寒い時期だけど日向はとっても暖かい、そういう季節の歌なんだろうと思う。

この曲はとてもたくさんのアーティストが演奏していてどのヴァージョンもとても素敵なんだけど、この季節のやわらかな感じによく合うのは、レスター・ヤングがオスカー・ピーターソン・トリオと録音したヴァージョンだな。



このレコードが録音されたのは1952年。すでにジャズ界ではビ・バップ〜ハード・バップが主流の時代で、この当時ですらずいぶん古めかしいオールド・スタイルに聴こえただろうけど、そんなことなどお構いなしに、朗々と美しいメロディーを吹き上げるレスター・ヤングがチャーミングで素敵なのだ。
やわらかなトーンで淡々とプレイしつつ、時折哀愁を滲ませたブルース感のあるフレーズがのぞく。
ピーターソンらリズム隊は出しゃばらず寄り添うように淡々とバッキングに徹する。
アルバムでは、オスカー・ピーターソン・トリオの共演といいつつ、ギターでバーニー・ケッセルも参加してブルージーなフレーズを聴かせてくれる。
なんか全体として和気あいあいとした和やかなムードで、春っぽい艶やかさがあるんだよね。

一日一日と春らしさが増していく。
コートが少し暑苦しくて、出かける前に少し悩ましくなるのも、春の訪れならではのこと。
明日の朝あたりは近所の桜も花を開かせるだろうか。









First Of A Million Kisses/Fairground Attraction


golden(以下g):「1988年はこのレコードに救われました。」

blue(以下b):「ほんまそうやな。」

g:「打ち込み多用のBPMの高いディスコ・ミュージック、いわゆるユーロビートと呼ばれた雑な音楽が氾濫していたあの時代。」

b:「どこもかしこもあの音だらけやったからな。」

g:「バイトしてたレンタル屋で、一人この手のが好きなガキがいて、そいつがひたすら店でこの手のを鳴らしまくる。。。」

b:「まじで気ィ狂いそうになったな。」

g:「いや、ほんと辟易した。」

b:「こいつ刺しても正当防衛認められるんちゃうかとすら思うたもん。暴力的な音楽をひたすら強要されました、って(笑)。」

g:「音の暴力だったよね。」

b:「そういう時代の中で聴いたフェアグラウンド・アトラクション。ほんまにほっとした。」

g:「トラディショナルな雰囲気とどこかジャズっぽさも交えたリラックスした演奏。」

b:「ノスタルジックで、ロマンチックで、クールで、聴き終わったあとにはどこか切なくも甘酸っぱい気持ちになれる、どこか幸せな気分になれる。1988年にそんな音楽はほんまに貴重やった。」



g:「マーク・E・ネヴィンのギターがいいねぇ。」
b:「ええ感じに気持ちええ音やな。」
g:「アコースティックだけどやわらかすぎず、なんていうのかな、音の粒がはっきりした音色。」

b:「一音一音がリズミカルやねんな。テロテロ弾きひけらかすんやなく、美しいメロディーを弾き流すんでもなく、リズミカル。」

g:「アコースティック・ベースもいい味出してる。」

b:「あれはベースやなくてギタロンっていうメキシコの楽器らしい。」

g:「あぁ、そうなのか。そういうところがトラディショナル感というか、古き良き時代感を感じるのかもね。」

b:「ドラムもブラッシング中心やし、バンド編成もシンプルで、20年代のジャグ・バンドみたいな雰囲気があるもんな。」

g:「ブルース感や黒人音楽の影響が感じられないところが逆に新鮮に感じたのかもね。」

b:「で、エディ・リーダーの歌な。」

b:「なんていうか、心が洗われるな。」

g:「ほっとする暖かさや、ちょっとしみる切なさを感じるよね。」



g:「自分には似合わないお洒落さなんだけど、あざとさがないのがいいよね。」

b:「こういうのって今お洒落でしょ、的にこれみよがしに提案されるファッション雑誌のお洒落さとは対極にあるような、素朴でさりげなく、でもちゃんとポリシーのあるお洒落さ、みたいな感じやな。」

g:「ちょっとこじらせてる感もあるけど。」

b:「リッキー・リー・ジョーンズっぽいこじれ方っていうか。」

g:「繊細さと大胆さ、脆さと強さの裏表なアンビバレンツ。」

b:「そこがええんやろな。そういう表現っていうのは、ちょっとこじれた人やからこそ出せるんであって。」

g:「なぁーんも考えんとユーロビートで踊ってる奴にはこういう歌は絶対歌えないよね。」

b:「こじらせすぎたらそれこそジャニス・ジョプリンみたいな生命を顧みない方向へ行ってまうけど、全然こじれてないよりはちょっとこじらせてるくらいでないと、心を映す表現者にはなられへんわな。男も女もな。」



g:「フェアグラウンド・アトラクションは残念ながらこの一枚で解散してしまったけれど、この後に出現するアンプラグドのブームの先鞭をつけたのはこのレコードだったんじゃない?」

b:「80年代中頃から続いたシンセ一色の音に、実はみんな辟易してたんちゃうかな。」

g:「そういう意味でこのアルバムの果たした役割は、セックスピストルズ的に革命的だったのかも。」

b:「そこまでではないやろー。80年代前半にはネオアコとかもあったし。」

g:「たった一枚で時代を変えた、っていう点ではそれくらいの偉業だと思うよ。どの曲も捨て曲なしの完璧な一枚だし。」

b:「ま、このあといわゆるユーロビート的なもんは駆逐されて終息していったのは確かや。」

g:「そういう意味では、少なくとも僕自身の世界に平和をもたらした一枚。」











If I Should Fall From Grace With God/The Pogues

golden(以下g):「U2やエコー&ザ・バニーメン、ビッグ・カントリーにアラーム、それからウォーターボーイズ・・・80年代中頃にいっぱいいたイギリスのニューウェイヴ系のギター・バンドはかなり聴いたって話は前回少し触れたけど。」

blue(以下b):「アズテック・カメラやペイル・ファウンテンズ、イギリスやないけどオーストラリアのミッドナイト・オイルやアメリカのレッド・ロッカーズとかもな。」

g:「パンク以降、クラッシュやダムド、パティ・スミスやテレヴィジョンなんかに影響を受けた連中だね。」

b:「アラームとかレッド・ロッカーズなんかはスプリングスティーン+クラッシュって感じで一時ほんまよー聴いてたな。」

g:「ビッグ・カントリーも大好きやったね。スコットランドのバグパイプみたいなギターが斬新で。当初はU2より人気あったと思うなー。」

b:「スミスとかR.E.M、リプレイスメンツなんかが出てくるちょっと前な。」

g:「そういう一連のブリティッシュ系のバンドやオルタナ系のバンドとはちょっと毛色は違うけど、いわゆるポスト・パンクのバンドで一番大好きなのはポーグスなんだよね。」



b:「アイリッシュ・トラッド・ミーツ・パンク!」

g:「アラームとかレッド・ロッカーズとか、なんていうか、青筋立てて怒りまくってるじゃない?」

b:「ああいうストレートに怒りまくってるんが好きやったんや、あの当時は。」

g:「それに比べるとポーグスはもっと雑というかテキトーというか。」

b:「怒ってはいるけど、屈折してて、でもその屈折はスミスとかとは逆方向で。」

g:「やけっぱちな感じ。」

b:「アラームやレッド・ロッカーズの切実で熱血なメッセージから、やけっぱちなポーグスへ。高校生から大学生にかけてストレートなものからアバウトなものへと好みが変わっていったんは何やったんやろな。」

g:「やさぐれ感に共感するような、まぁ居酒屋のバイトとかで大人の世界のブルージーなとことか見ていったしな。こういうやさぐれ感のあとでは、90年代に出てきたグランジやオルタナは重いばかりで弾け感がなくて、あんまり惹かれる感じにはならなかったんだよね。」



b:「“Fiesta”が最高にかっこええな。」

g:「もう、ピョンピョン飛び跳ねたくなるくらいのタテノリナンバー。」

b:「ライヴで観たんやけど、オールスタンディングのホールがえらいことになっとったわ。」

g:「血が騒ぐようなかっこよさやからね。」

b:「1曲めのタイトル曲“If I Should Fall From Grace With God”もイキオイあって盛り上がるな。長いタイトルやけど。」

g:「日本盤は“堕ちた天使”ってなってるけど、訳すると“もし私が神の恵みから見放されているのなら”みたいな感じかな。」

b:「タイトルからしてどん底で救いようがない。。。」

g:「ポーグスのよさは、そういうどん底暮らしのやるせなさと、その裏返し的自暴自棄なくらいのぶっ飛ばし感なんだよね。」

b:「怒りとため息、鼻息やうめき声、それから刹那の快楽。そういう喜怒哀楽がそのまま音楽に滲み出てる。爪に火を点すような慎ましい暮らしと、一攫千金への憧れみたいな庶民感っていうか。」

g:「虐げられた底辺の暮らしと、だからこそはっちゃけるしかないパワーっていうのがね。」



b:「ちっこいパブで飲んだくれがみんなで大合唱になりそうな“Bottle Of Smoke”とか“Recruting Sergearnt”なんかもええ感じやな。ポルカみたいなリズムと哀愁のアコーディオンがまたたまらん。」

g:「アコーディオンもそうだけど、バンジョーとかフィドルとかマンドリンがいい味出してるよね。」

b:「およそロックンロールっぽくない楽器やのにめちゃくちゃかっこええのが凄いな。」

g:「あと大好きなのはは“Thousands Are Sailing”。大きな飢饉があって多くのアイルランド人がおんぼろ船で海を渡って国外へ逃げるしかなかった物語が歌われている。」

b:「虐げられてきた民族の怨恨がふつふつと感じられるな。」



g:「アイルランド人が国を捨てて移民にならざるを得なかったのは、主食としていたじゃがいもの病気の大発生が原因だったらしいね。」

b:「アイルランドの豊かな土地はイングランド人に収奪され、アイルランド人に残されたのは痩せて荒れた土地しかなくて、アメリカから持ち込まれたじゃがいもは小麦よりも荒れ地でもよく育つため、あっという間に国中で栽培されるようになっていったらしい。」

g:「そこへ飢饉が襲った。大地主たちはそれでも小麦はアイルランド人に渡さずイングランドへ輸出し続けたんだそうだね。」

b:「1845年〜49年の頃。それで人口の2割が亡くなり、2割が国外へと移民したらしい。」

g:「多くの人々は当時無限の開拓地だったアメリカへ渡った。」

b:「1800年代中期のアメリカは、建国の中心となったアングロサクソンのピューリタンが幅をきかせてて、ケルト系でカソリックのアイルランド人たちは鉱山とか線路敷設とか厳しい労働しか与えられへんかったそうや。」

g:「差別も普通にあった時代だもんね。」

b:「ただ、虐げられたアイルランド人たちが持ち込んだケルト系の民族音楽が、同じように虐げられていた黒人たちのフィールドハラーと結びついてブルースが生まれる元になったわけやから、アメリカへ渡ったアイルランド人はロックンロールの大いなるご先祖様でもあるねんな。」

g:「アイルランド人がバンジョーやフィドルを持ち込まなかったらブルースは生まれなかったのかもね。」

b:「ポーグスは、ロックンロールの古いルーツであるアイルランド民謡を、再びロックンロールと融合させたというわけやな。」

g:「ポーグスの音楽にある原初的なエネルギーっていうのはそういうルーツがあるからなんだろうね。」

b:「民族や文化や、時代までもを越えて生々しく心の深いところまで響き渡るだけの強さっていうかな、1000年前の人間も1000年後の人間もポーグスで踊りまくれるんちゃうかって思うわ。」

g:「原始人と近未来人が一緒にポーグスで踊りまくる図って、想像しただけでワクワクする。」

b:「黒人も白人も東洋人もみんな一緒くたにな。ポーグスの音楽やったら、ロシア人もウクライナ人も一緒に盛り上がるはずやで。こういう生々しいはっちゃけ感は全世界共通やと思うわ。」

g:「みんないっしょ、みんなおんなじ庶民。世界平和っていうのはそういうのをお互いに感じるところから始まるんだろうね。」

b:「世界平和まで引っ張り出してくるとかなり大げさやけど、でもまじでそうやと思うわ。」









Skylarking/XTC

golden(以下g):「大学時代の4年間、1985年から88年はほんとうにたくさんのレコードを聴きました。」

blue(以下b):「年間300枚以上、4年で1000枚はゆうに超すくらい聴いたな。」

g:「貧乏学生がなんでそんなに聴けたかっていうと、レンタルレコード屋でバイトしてたからなのですね。」

b:「当時、別のバイトしてたんやけど、うっとおしいしちょうど辞めようと思うてたとこでバイト募集の貼り紙見てな。」

g:「あ、ここでバイトするしかないって。」

b:「当時はリリース直後から即レンタルOKやったから、最新リリースのアルバムから古い名盤まで、ソウルもジャズも含めてただで聴き放題やった。」

g:「趣味と実益を兼ねた素晴らしい職場だったね。店で流しながら毎日一枚はカセットテープに録音して帰って。」

b:「某T●SUTAYAとかやと店のBGMは本部からの指定で、自分で選ばれへんらしいで。」

g:「当時のレンタル・レコード店はローカルでのどかだったからね。」

b:「聴きたいと思ったらすぐに何でも聴けたからな。」

g:「大御所アーティストの全アルバムを順を追って聴いたり、ルーツやインフルエンスをたどって数珠つなぎ的に追っかけたり。」

b:「当時ブリティッシュ・ニューウェイヴ的なものも一世を風靡していて。U2、エコー&ザ・バニーメン、ビッグ・カントリー、アラーム、ウォーターボーイズみたいなギター・バンドは片っ端から追いかけた。」

g:「キュアーとかスージー&ザ・バンシーズ、バウハウスみたいなゴシックっぽいものはいまいち受け付けなくて、ポリスじゃスキがなさすぎる、ブリティッシュではないけどトーキング・ヘッヅじゃスノッブすぎる、とか思ってたところでXTCに出会ったかな。」

b:「1986年のアルバム『Skylarking』はちょっと異色な作品やったな。」

g:「レンタル屋でバイトしてなきゃ聴かなかったかも知れないね。」



b:「XTCはポリス同様にパンクのシーンから出てきたものの、しっかりとした音楽的素養と技術を持ったバンドで、スティーヴ・リリィホワイトやヒュー・パジャムといった個性の強いプロデューサーと組んだり、リリースのたびにスタイルを変えてきたバンドやったな。」
g:「もっとエキセントリックな感じだったのがこのアルバムは整理されて聴きやすいよね。それまでの硬質で尖った感じにくらべると、音の質感がやわらかいというか。」
b:「トッド・ラングレンのプロデュースは賛否あるみたいやけどな。」



g:「オープニングは穏やかな虫の音のS.Eで穏やかに始まるのです。」

b:「“Grass”、“The Meeting Place”とか牧歌的というかのどかなメロディーが続いて、すごくポップな“That's Really Super,Super Girl”。」

g:「ポップなんだけど、スコンと抜けずにもやっとしてる。」

b:「独特のアクというか、変なねじれがあんねんな。」

g:「知的なようで滑稽で、整然としつつ混沌としていて、ポップでカラフルでどんよりとくすんでいて。」

b:「どこか素っ頓狂というか、つかみどころがないっていう印象があるな。」



g:「それから“Bullet For A Rainy Day”“1000Umbrellas”“Seasons Cycle”あたりはまるで組曲みたいな流れ。ビートルズの後期やビーチボーイズの『Pet Sounds』にも感じられるようなコンセプトっぽさっていか。」

b:「そういう意味では『Sg.Peppers』みたいなレコードの影響下にあるんやろうけどな。でも、ビートルズというよりはキンクスと同じようなブリティッシュ・ポップの匂いを感じるねん。」

g:「ああ、そうだね。イギリス人独特の捻れたポップ感っていう感じ。」

b:「レインコート着て紅茶飲みながら、ぐちぐちと皮肉を言う、みたいな。」

g:「霧雨の中や雲の中にいるみたいに、視界がくぐもって方向感覚が狂うような感じだよね。」

b:「そうそう。エッシャーの騙し絵の世界みたいな。」

g:「出口が見えなくて戸惑ってしまうような。」

b:「何度曲がり角を曲がってもいつの間にか同じ曲がり角にたどり着いてしまう迷路に迷い込まされたみたいな。」



g:「後半は“Earn Enough For Us”にしろ“Big Day”にしてもちょっと英国トラッドっぽいメロディー。」

b:「“Big Day”なんかはもろ『Revolver』の世界っぽいな。」

g:「かと思えば、“Man Who Saled Around His Soul”は30年代のジャズっぽいし、“Dying”なんかはちょっとアシッド・フォーク。」

b:「パンク以降のニューウェイヴと呼ばれた音楽は、ロック的なスタイルの否定から現代音楽的なものや第三世界のリズムやいろんなものを取り入れていったり、一方で60年代回帰的な流れもあったりしてた。」

g:「特に86年87年ごろって、ポール・サイモンの『Graceland』とかピーター・ゲイブリエルの『So』とかロック以外の音楽の要素、特にアフリカ、アジア、南米なんかのいわゆるワールド・ミュージック的なリズムを取り込んだものが増えた時期でもあったよね。ユッスー・ンドゥールやサリフ・ケイタが脚光を浴びたり。」

b:「スティングがジャズ・ミュージシャンと『The Dream Of Blue Turtle』を録音したりもしてたな。」

g:「元々パンクはレゲエへの共鳴度合いが高かったし、P.I.Lやクラッシュ、ポップグループなんかが新しい音楽の扉を開けていったことからの影響ってあったんだろうけどね。」

b:「XTCは、そういうものを上手くブレンドして、シュールでキテレツでありながらも、ポップな側に留まっているバランス感覚がええなぁ、と思うねん。」

g:「敢えて大衆側にいないようなポーズを取って自分の世界観を崩さないように見せつつも、ちゃんと大衆に受け入れられる音作りをしている。」

b:「そーゆーところが、キンクスと同じ匂いを感じるところかも知れんな。」

g:「ひねくれものの寂しがり屋。ほっといてほしいくせに、本当にほっとかれると拗ねる。自由にやらせろと言いながら、受け入れられるかどうかはちゃんと読んでいる。」

b:「・・・なんか、自分のことディスられてるような気がするんは気のせいか?」

g:「気のせいかどうかは受け取る側次第ってことかな。」

b:「どっちゃでもええけどな。」

g:「まぁ、いいじゃない。誰にでも世界のどこかに居場所はあるんだよ。」

b:「それにしても、レンタル屋でのバイトっていうのは、良かったな。あの頃に聴いたものは全部その先で何らかの入口になっていったと思うわ。」

g:「居酒屋とバイト掛け持ちしてて、ご飯は居酒屋で、音楽はレンタルレコードで。」

b:「出費の中心を無料にできたのは時給以上にメリットあったしな。」

g:「でも、いつ学校行ってたんだろうね(笑)。」

b:「学校は行ってたで。午後から出かけて、授業出んと学食かBOX棟に入り浸ってただけやけどな。」










Rose Of England/Nick Lowe,King Of America/Elvis Costello

golden(以下g):「10代後半には手当り次第にいろんな音楽を聴いたけど、その手掛かりはだいたい、好きなアーティストからだったね。」

blue(以下b):「清志郎がオーティスに影響を受けたと聞いてオーティス・レディングを聴いたり、モッズやアナーキーからクラッシュへ行ったり、ルースターズがヴェルヴェット・アンダーグラウンドをカヴァーしてたり、そういうところが入口になった。」

g:「ニック・ロウは佐野元春からだったね。」

b:「“ガラスのジェネレーション”のアレンジは最初ストーンズ風のロックンロールだったのが、ニック・ロウ風になった、って佐野さんがラジオで言ってて。あぁ、ニック・ロウっていう人がおるんや、と。」

g:「ちょうどその頃、ニック・ロウとエルヴィス・コステロがビートルズの“Baby,It's You”のカヴァーのシングルをリリースしたんだよ。」

b:「ま、正確にはシュレルズのカヴァーやけどな。」

g:「あ、そうか。」

b:「もちろんビートルズのカヴァーが有名なんやけど。この二人にはずっぱまりのカヴァーやな。」

g:「ニック・ロウとコステロって、ポール・マッカートニーとジョン・レノンみたいな立ち位置感があるよね。」

b:「ニック・ロウはそもそもベーシストやしな。」

g:「ポップ職人ニック・ロウと、シニカルでスタイルをコロコロ変えるコステロ。」

b:「二人ともポップミュージックの造詣が深くて、ちょっとマニアックな学者っぽいとこがあって。」

g:「ニック・ロウのアルバムで一番好きなのは、1985年リリースの『The Rose Of England』だね。」

b:「初めてリアルタイムで聴いたっていうのもあるけど、ポップやし、オールドスタイルのロックンロールへのリスペクト感がめっちゃ感じられるレコードやな。」




g:「1曲目からのりのりの“Darlin' Angel Eyes”。ニック・ロウ自身によるスイングするベースラインが気持ち良い。ポール・キャラックによるオルガンのリフもウキウキする。」

b:「後にリトル・ヴィレッジを共に組むことになるジョン・ハイアットの“She Don't Love Nobody”とかオールド・スタイルのロカビリーのカバー曲“7 Nights To Rock”とか、まぁ80年代中期の録音とは思えないくらい、古臭いというかアナログな音が良かったな。」

g:「マーティン・ベルモントのギターがのどかなインスト・ナンバーの“Long Walk Back”で和んで、ニック・ロウらしいカントリーっぽさの匂う“The Rose Of England”、溌剌とした“Lucky Dog”と続くA面。この流れ、気持ちいいな。」

b:「B面のスタートはシングル・カットされた“I Knew The Bride (When She Used To Rock 'N' Roll)“、バックを務めるのは当時人気絶頂だったヒューイ・ルイス&ザ・ニュースやった。」



g:「B面はその後、しっとりほっこり系が続くんだよね。」

b:「カントリーっぽい“(Hope To God) I'm Right、I Can Be The One You Love“や“Everyone”。なんとなくしみじみとセンチメンタルな気分になってしうこのB面の流れもまた絶妙。」



g:「“Indoor Fireworks”はコステロの曲だね。翌年リリースされる『King Of America』でコステロも演ってた。」

b:「コステロはやたら多作でどのアルバムが最高かって言われるとどれも決め手に欠けるとこがあるけど、俺はこの『King Of America』が一番好きやわ。」



g:「『Punch The Clock』『Good Bye Cruel World』とポップでソウルフルな作品が続いていたのが一転して、超渋めの作品になった。」

b:「コンフェデレイツ=同盟軍、と名付けられた演奏陣。アメリカで同盟軍と言えば、南北戦争の南部同盟を指す言葉でもあって、まぁネーミングからして自虐的というか敗北感バリバリなんやけどな。」

g:「プレスリーのバンドの黄金時代のメンバーだったジェームズ・バートン(g)やジェリー・シェフ(b)、ロン・タット(ds)といった歴史的重鎮に加え、R&Bの伝説ドラマーのアール・パーマーやアメリカンロックの名手ジム・ケルトナー、プロデューサーのT・ボーン・バーネット、その後プロデューサーとして頭角を現すミッチェル・フルームなど凄腕のミュージシャンが多数参加して実に渋く落ち着いた音を鳴らしている。」



b:「“Lovable”やとか“Big Light”といったご機嫌なナンバーは、さすがの風格を感じるな。」

g:「でも、このアルバムでぐっと来るのは、“Our Little Angel ”や“Indoor Fireworks”、“ I'll Wear It Proudly”、“Jack of All Parades”といったスロウな曲だね。少しかすれたコステロの声がすごく憂鬱を引きずってる感じ。」

b:「ちょっと疲れてくたびれた男の色気、みたいな。」

g:「世間に疲れて、山里の庵に隠居したみたいな音っていうか、侘び寂び感っていうか。」

b:「シンプルな演奏やからこそ、逆にメロディーのポップさが浮かび上がってきてるんやろな。」



g:「ニック・ロウもこのあと弾き語りっぽいのも演るんだけど、ニック・ロウもコステロも、どんな風に演っても結局ポップというか、ツボを外さないよね。」

b:「ロックンロールやリズム&ブルースやカントリーからの影響を包み隠さず、深い敬意と愛情を持って音楽と接している感じがするな。」

g:「パクッてきたんじゃなくて、オマージュね。」

b:「ニック・ロウは特に、ユーモアたっぷりで余裕綽々な感じ。」

g:「ニック・ロウのこういうおおらかというかアバウトな感じのゆとり感って憧れるよね。」

b:「コステロの皮肉っぽい感じのほうがキャラには合うてるけどな。」

g:「ニック・ロウもコステロもたくさんのバックボーン、いろんな引き出しがあって、その中から緻密に組み立てて、こだわりはこだわりとして細部まで譲らずに、それでも尚且つ出てきたものにはその苦心を感じさせないポップさがある。そういうところがかっこいいよよね。」

b:「いわゆる職人技やな。」

g:「そういう職人っぽいものへの憧れって、あるよね。手に職があれば一生食って行ける。」

b:「いや、そういう腕さえあれば、愛想がなくても多少態度が悪くても許されるからな。」

g:「そこかよっ!」












東風

「東風」とは「冬の季節風が止み、早春に吹く風」を意味する言葉。立春の七十二候の初候が「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」であり、俳句では春の季語だそうだ。

東風吹かば/匂ひおこせよ/梅の花/
あるじなしとて/春を忘るな

というのは、菅原道真が詠んだ和歌で、大宰府へと左遷されることになった道真が、庭の梅に心情を託した歌。
ここでは“ひがしかぜ”ではなく“こち”と読まれます。
この句が教科書で出てきた中学生くらいのこと、この“東風”を“トンプウ”と読んでいちびっている奴がいました。
もちろんYellow Magic Ohchestraのこの曲のこと。



Y.M.Oは思いっきり「世代」なんですが、実は中学生の頃これが流行ったときはチンプンカンプンで、全然聴かなかったのです。
っていうか、中学生の頃に苦手だったヤツがY.M.O好きだったんで敬遠した、っていうのもあるんだけど。若い時って、そういうことあるでしょ。ま、今でもあるけど。

もちろん、細野晴臣・坂本龍一・高橋ユキヒロというメンツの物凄さや、ワールドワイドに革命を起こした日本発の音楽という価値は今ならじゅうぶんわかるけど、それでもやっぱり、なんでこれが当時の中学生に流行ったのか、今聴いてもさっぱりわからない。







坂本龍一バージョンは春を待つ冬の終わり感があるし、矢野顕子のバージョンは春めいた気分があがる。
東洋的なメロディーは不思議な浮遊感があって、わらべ歌のような奇妙な親しみやすさは一度耳につくと離れない独特さがある。
シンプルでありながら複雑さをもったリズムもまた同じように不思議な中毒感がある。

wikipediaによると、曲のタイトルはジャン=リュック・ゴダール監督の映画「東風」から取られている。とのこと。また、当時メンバーの行き着けの中華料理店の店名でもあったらしいが、たぶんこれは後付のボケだと思われる。
いずれにしても、七十二候とも菅原道真とは関係ないようだけど、それでも春の始まりらしい息吹を感じたりもする。

今聴くと、Y.M.Oのバージョンがすごくいいな。
能天気でありながら裏側にひっそりシリアスさがあって、ユウウツを抱えたまま踊りまくるみたいな感じ。
西洋人が見た東洋人観的なの中華風的演出にはあざとさやこれみよがしさを感じていたのだけど、これってリップサービスっていうか、もっと突っ込んでいえば一流のジョークだったんだな、と今更ながらに思ったりする。







Whistle Down The Wind

冬っ間って、なぜかなんにもしなくても疲れてしまう気がしてしまうのは気のせいではないはず。
生命を維持するための体温を維持するためのエネルギーは、きっと春や秋よりもたくさん消費しているのだろう。

ようやく訪れた3月、ふんわりと緩んだ空気。
コートとセーターを脱いで、毛糸の帽子と手袋も脱いで、できればマスクもとって。肌に直に触れる空気のやわらかさを感じたい。



窓の外何かが起きている
覗いてみよう
僕のプリズムを通して
キスを交して友達になろう
僕らしいユーモアさ

窓の外で何かが起きている
僕の時間を何処かへやって
僕が大事に過ごしてきた時間
十字架にキスして投げ捨てて
ろうそくを吹き消して
ドアを蹴り破って

ハロー、ハロー
君が素敵な気分だといいね
ハロー、ハロー
君が僕のこと感じてくれるといいな
ハロー、ハロー
君が素敵な気分だといいね
ハロー、ハロー
あの時のことを思い出して

風に乗ってゆく口笛
風に乗っていく口笛

ニック・ヘイワード。
ヘアーカット100というバンドのリード・シンガーだった人だ。
彼の音楽は、春の始まりの風のように、まだひんやりとした肌触りだけどどこか温もりを含んでいて、優しげでちょっとセンチメンタルだ。

ゆるやかに穏やかにサラサラと、懐かしい思い出の香りを運んでくるような、なんとなく感じる懐かしさがなんとなく心地よい気分がする。

冬の間に凝り固まってしまったココロとカラダをほぐさなくっちゃ。







Northern Sky

水を抜いて澱んだ流れになった疎水で、鷺が虚空を見つめていた。



強い寒気もようやく仕舞い支度を始めてくれただろうか。
週明けには最高気温も12℃くらいまで上がるらしい。
昨日の雨も、真冬とは少し違う、やわらかな匂いがした。

どんよりくぐもった空の冬でなく、木枯らし吹き荒れる冬でもなく、凍てつくような冬でもなく。
冬の終わりの始まり。
雲の上あたりでは冷たく厳しい感じるが吹いているのだろうけど、地上はとても穏やかで。



なんとなく冬の終わりの始まりを感じる穏やかな歌。
ニック・ドレイクの“Northern Sky”。

こんなにも強く魔法の力を
感じたことはなかった
海の偉大さを知っている月も
見たことがなかった
この手の平に宿る感動も
抱いたことがなかった
もしくは木の梢にそよぐ甘い風を
感じたことも
でも 今 君はここにいて
僕の北の空を明るくしてくれる

(Northern Sky/Nick Drake)

ひと雨ごとに暖かくなる。
厳しい冷たさが日を追うごとにほどけていくと、春。




Snow Blues

目が覚めたら雪がうっすら積もっていた。
2月も半ばを過ぎて、昼間は少し暖かい日もちらほらしだしたのに。
昨夜はかなり空気が冷たいな、とは思ったけれど。
今年はよく降る。



Snow Blues/Snowy White

スノウィー・ホワイトという、名前に雪を冠したギタリストがいた。
Snowy Whiteというのは白雪姫の原題で、まぁ本名がホワイトさんなんでそこからニックネームになったんだろうけど。
ブリティッシュ・ブルース・ロック界隈のギタリストで、ピンクフロイドやシン・リジィにサポート・ギタリストとして参加していたらしい。
ジェフ・ベックのようにテクニカルで幾何学的なフレーズを弾くわけでもなく、クリアーな音色が特徴で、ウェットで情緒的なフレーズを得意とする人。どちらかというとミック・テイラーに近い雰囲気。
なぜかこの人のことは気に入ってよく聴いていたのを思い出した。

少し暖かくなりそうだと思ったらまたギュッと冷え込んで、寒いんだろうと覚悟していたらお日様の日差しはとても強くて日向では春めいていたり。
三寒四温ならぬ、三寒ニ温くらいの感じの今の季節。
木々は太陽の熱を感じては少しずつ蕾を膨らませる。
まだ、もう少し。まだ、もう少し。
こういう、冬を耐え忍びながら春を待つ感じは、楽しい気分とは言えないけれど、そう嫌いでもない。

電車に乗って街中に着いたら、雪はすっかり溶けていた。


Appendix

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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