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放浪記

僕はちょっと活字中毒気味のようなところがあって、文字であれば片っ端から読む。
なので、ジャンルに関わらずいろんな本を読むのだけれど、意外にも、いわゆる「古典」というものはほとんど読んでいないのです。

文庫本の文字が小さすぎる、とか、旧仮名遣いが煩らしい、ということもあるのだけれど、それ以上に拒否感があるのは、中学生高校生の頃に教科書や副読本で読まされたものや、教師が読めと薦めたものが、つまらなかったり、説教臭かったりしたせいだと思う。
リズム感っていうか、スピード感っていうか、そういうものが足りない、と、その頃の僕が具体的にそう感じたわけではないけれど、今思えばそういうことだったのだろうと思う。
いわゆる古典文学というものは、もっさりしていて、めそめそして、やけにどろどろしていて暗くて湿っぽいものばっかりだ、と当時は思っていた。当時新しかった、村上龍や山川健一のビート感や村上春樹の透明な浮遊感、高橋源一郎のシュールさや椎名誠のポップさにはほど遠いものだと思っていた。
ロックじゃないんだよな、昔の文学は。
そう思っていた。
まぁ、実際のところはちゃんと読みもせずそう決めつけていたのだけど。

そんなわけで漱石も鴎外も芥川も三島も谷崎もろくに読んではいない。海外ものは言わずもがな。寺山修司や開高健ですら古臭くて胡散臭いと感じていた。
気に入って読んでいたのは、梶井基次郎、坂口安吾、中原中也、中島敦、くらいだろうか。それも、ごく一部の作品が気に入ったに過ぎない。


先日たまたま某B○○K OFFをうろうろしていて、100円文庫本のコーナーで林芙美子さんの「放浪記」を見つけて。
この人のイメージも、例の森光子のでんぐり返りの印象しかなくって、なんか押し付けがましい人生讃歌系なんだろ、と思っていたのだけど、なんとなく気になって手にとってみて、、、ほんの数行読んでぐいっと引き込まれてしまったのです。

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放浪記 / 林芙美子

生まれついての根無し草。底なしの貧乏。宛てのない無軌道な青春。
ころころと職を変え、男のところに転がりこんではすぐに嫌気がさして飛び出して。
自暴自棄と紙一重の自由気ままさ。
自由と表裏の不安や孤独感。
ちょっとしたことでぽわんと浮いたり、ぶちんとキレたり、どぼんと沈んだり・・・の不安定な情緒。
おそらく周囲にこんな人がいたらきっと迷惑する。今で言う「イタイ奴」には違いない。
でも、その屈託のなさ、朗らかさ、縦横無尽のバイタリティーに圧倒される。
なにより言葉のリズムがすごくいい。
へヴィーな感情ををたった一言でぐさっと決める。

「信ずるものよ来たれ主のみもと・・・
遠くで救世軍の楽隊が聞える。何が信ずるものでござんすかだ。自分のことが信じられなくて、たとえイエスであろうと、お釈迦さんであろうと、貧しいものは信じるヨユウがない。」

「この人は有難い程深切者である。
だが、会っていると 憂鬱なほど不快になってくる人だ。」

「あぶないぞ!あぶないぞ!あぶない無精者故、バクレツダンを持たしたら、喜んで持たせた奴らにぶち投げるだろう。
こんな女が、一人うじうじ生きているより早くパンパンと、地球を真っ二ツにしてしまおうか。」

「右へ行く路が、左へまちがったからって、馬鹿だねぇと云う一言ですむではないか。
悲しい涙が湧きあふれて、私は地べたへしゃがむと、カイロの水売りのような郷愁の唄をうたいたくなった。」

「パン屑が虫歯の洞穴の中で、ドンドンむれていってもいい。只口の中に味覚があればいいのだ。」


この救いようのなさはまるでジャニス・ジョプリンだな。
この自由奔放さと底なしの絶望感はまるで若き日のパティ・スミスだな。
このぶちギレて狂気すら孕んでいるにも関わらず愛らしくてキュートな感じはまるで戸川純だな。
そんなことを感じながら、一気に読み尽くしてしまったのです。


林芙美子さんは1903年の生まれ。
放浪記の舞台になっている1920年代前半頃といえば、ニューオリンズでジャズが興り、ミシシッピーデルタでブルースが演奏されはじめた頃。
ルイ・アームストロングが1901年、サン・ハウスが1902年の生まれで、その前後数年にはブラインド・レモン・ジェファーソンやサニー・ボーイ・ウィリアムソン、なんていうビッグ・ネームが生まれている。女性ならシッピー・ウォーレスやメンフィス・ミニー。
そういう人たちと同じ時代を生きた人だった、と想像すると、ずっとずっと昔の人だと思っていた林芙美子さんが一気に身近に感じられる。

この人、国が違えば絶対ブルースを歌ってたはず。
或いは、時代が違っていたら、絶対ロック・バンドで歌ってたよな。
なんて。
タテのりのビートをバックにありったけのシャウトをする林芙美子さんを想像したら、すごく楽しくなってきた。


敬遠していた古典にも、もっとおもしろいものがあるのかもしれない。
目の前にまだまだ宝の山がたくさんあるのを見つけた気がして、ちょっとワクワクしてきた。







続・音楽歳時記「雨水」

冬の日、穏やかな休日。
奥さんも娘も出掛けてしまって、ひとり新聞など目を通しながらぼけっとテレビを観ている午後。
寒さは少しゆるんできたとはいえ空気はまだまだ冷たくて、今日はなんとなく表に出掛ける気にならない。
こういうのもいいよね。
何でもない休日の何でもない時間。
ふと、無職だった頃の茫洋とした時間を思い出す。

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Hosono House / 細野晴臣

はっぴいえんどは、人が持ち上げるほどには好きでもないし、YMOにも興味を持ったことはないんだけど、細野さんのこのソロ・アルバムは大好きで、時々聴きたくなる。
こういう何でもない穏やかな日に。

アコースティックでシンプルでアナログな音。
ぼそぼそと独り言のような朴訥とした歌。
無気力とは違うけど、とっても脱力した穏やかな世界観。
でも、ひそかにファンキーでリズムは跳ねまくっていて。
でも、何よりも、どっか貧乏臭い感じが好きなんですよね。

明日も明後日も何にも予定がなくって、ただただぼぉーっとしてる。
メシはテキトーにウインナーと玉ねぎを炒めただけの手作りチャーハン。フライ返しでフライパンにご飯をじゅうじゅうと当てて痛めつける。味付けはシマヤのだしの素。フリーズドライの中華スープでもつけばたいしたご馳走だ。
ズボンに穴が空いちゃったけど、まだはけるし。
あ、でもトイレットペーパー切らしちゃったのは買いにいかないわけにはいかないな。
帰りに図書館でも寄ってくるか。
あらら 、自転車空気抜けてるやん、じゃあてくてく歩くかー。。。
そんな暮らしをしていた頃のぼぉーっとした気分をぼんやり思い出すのですよね。

冬越えさ
季節の変わり目さ
くしゃみをひとつ
話すことは多いけど
ただくしゃみをひとつ
(冬越え)


そんなふうに、言いたいことがあるようでないようで、やりたいことがあるようでないようで、くしゃみしてごまかしてた。



2月19日が雨水。
雪が雨に変わりはじめる頃、という意味だ。
僕の無職暮らしも、いつしか雪が止んで雨に変わって、いつの間にかめちゃくちゃ忙しくなった。
時々、あれっ?って思うんですよね。こんなにちゃんと働くつもりなんてこれっぽっちもなかったのになぁ、って。
まぁ、それはそれでいいんだけど。

成るように成ればいいんだ、やけっぱちな意味ではなくて、流れに沿っていけばいい。

いずれまた雪の日が訪れることもあるんだろうしね。











意訳 Thousand are Sailing


The Pogues “Thousand are sailing” 意訳



今はもう、その島は静けさに満ちている。
けれど今もまだ、亡霊たちが手を振っているのが僕には見える。
腹を空かせてこの島にたどり着き、血と汗と涙を流しながら、とうとう報われることがなかった彼らの魂が。

事の起こりは、1845年のことだ。
どこからか紛れこんだじゃがいもの疫病は、またたくうちにアイルランド中に広がり、たくさんのじゃがいもが被害を受けた。
翌年のじゃがいもの作付け面積は1/3にまで減少した。
人々が種いもまで食べ尽くしてしまったからだ。
飢饉は、1849年まで実に4年も続いた。
幼いものと老いたものから順に倒れていった。

「この島はもともとエメラルドの島と呼ばれていた。
東海岸側は実り豊かな田園地帯で、わたしたちは慎ましく暮らしていた。そこにイングランド人たちがやってきたんだ。」

亡霊は、静かな声で語りはじめる。

「日に日に厳しくなるイングランド人たちの支配に、わたしたちは一揆を起こした。が、それは奴らに制圧され、豊かな大地は奪われた。
アイルランド人の農地は没収され、わたしたちは小作農になった。育てた小麦は全部イングランドへ運ばれた。
わたしたちは自分たちが食べるために、アメリカから運ばれたじゃがいもを植えたんだ。
じゃがいもは、小麦が育たないような石ころだらけの荒れ地でも、ほとんど手を掛けることなく育った。
じゃがいもは『貧者のパン』と呼ばれるようになり、アイルランド人はじゃがいもを主食にするようになったのだ。」

そのアイルランドを、じゃがいもの疫病が襲ったのだ。
主食をじゃがいもに依存していた貧農たちはなすすべがなく領主や地主たちに救済を乞うたが、彼らは小麦をアイルランド人へ分け与えることなく、イングランドへを輸出しつづけたのだという。

「栄養失調から病になり、次々と人々が死んでいく。村がまるごとなくなってしまった地域もあった。生まれ育った先祖代々の土地を棄てて、国を出るしかなかったんだ。働き手が流出した故国で、残されたものたちは、家畜を食べ、雑草を食べ、人肉までもを食べたという。」

1776年に独立したアメリカは、西へ西へとフロンティアを開拓している真っ最中だった。
彼らが西へ進出するためには、奴隷と移民による労働力が必要だった。

「アメリカへ行けば、働き口はいくらでもある。たらふく食べられてがっぽり稼げる。あっという間に一攫千金だぜ、ってそんな口車に乗せられて、俺たちはアメリカ行きの船に乗った。
棺桶船と呼ばれたその船は、その名に違わずひどいものだったな。
150人程度の定員に300人近くが押し込まれ、6週間近くも大西洋を渡る。
もちろん、たどり着けずに大西洋に消えた船もいくつもあった。」

移民船がたどり着くのは、マンハッタン島の南に浮かぶエリス島。この島に移民監理局があった。

「アメリカには確かに仕事はあった。けど、うまみのある仕事は全部、イングランドやドイツやフランスからのプロテスタントの移民が取り仕切っていた。奴らは俺たちカソリック教徒を露骨に差別したんだ。
俺たちにあてがわれたのは、キツイ仕事ばかりだった。建築現場や線路工夫、炭鉱工夫、それから警備員。警備員っていったってろくに装備もない案山子みたいなもんだ。
線路工夫だった俺は、来る日も来る日もだだっぴろい平原のど真ん中でつるはしを振り回したよ。飯は朝昼あわせてライ麦の硬いパンをひとかけらとじゃがいものスープだけ。ちょっとでもサボれば監視員のムチが飛んでくる。
涙なんてすぐに枯れてしまった。本当に毎日がギリギリの暮らしでは、泣くことすらできなくなってしまうものなんだな。
故郷の古い歌に嘲られたり励まされたりしながら、月日を指折り数えるしかなかったんだ。」

そして、亡霊は歌い始める。
ビールジョッキを片手に高く掲げて歌うドイツ人のように、左腕を高く挙げ右腕を大きく振って。

♪幾千人もの人々が、西の海を渡った
チャンスがつかめるっていうこの土地へ
そのうちのほとんどの奴らは
ごく普通の将来さえつかめなかったんだ
自由への思いを腹いっぱいにして
西の海を渡ったんだ
貧困の鎖をきっと絶ちきれるだろう
そしてみんなでダンスしよう、って



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アイルランドからアメリカへの移民は、1845年からの10年間で200万人にも上ったという。

餓死、病死、そして若い働き手の流出によって、アイルランドは当時の約800万人の人口はほぼ半減してしまったそうだ。

ポーグスが歌うのは、そんな時代のアイルランド人たちの苦難の歴史。

アイルランド人にとってそれは決して歴史上の遠い過去の話ではなく、今も続くイングランドや連合王国との関わりを示すものとして、忘れてはいけない物語なのだろう。


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「思い出せば辛いことばかりの苦しい人生だったよ。空腹と疲労しかない毎日だった。

でも、俺たちはそんな中でささやかな楽しみも見つけてきたものだった。
祖国の音楽にあわせて踊りまくる夜。
あれは楽しかったな。
南北戦争が終わったあとには、労働者としてとして連れてこられた黒人たちとも一緒に歌い踊ったもんだよ。奴らのダンスはとんでもなくエキサイティングだったけど、俺たちだって負けちゃいなかった。アイルランド人はヨーロッパの黒人なんだってそう思ったよ。」

♪幾千人もの人々が、西の海を渡った
チャンスがつかめるっていうこの土地へ
宝くじを当てるんだ
青い空と海の絵はがきを送ってやるから

今、この部屋から明かりは見えないし
クリスマスツリーに明かりすら灯せないけれど
でも、
音楽にあわせて俺たちは踊る
俺たちは踊る

But,we dance to the music
we dance




彼らが歌い踊った音楽は、やがてアフリカから連れてこられた黒人たちが持ち込んだ音楽と混ざりあい、ブルースになりロックンロールになった。
その魂は、200年近い時を越え遠い海をいくつも越えて、僕らの心にもきっと受け継がれているはずだ。



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If I Should Fall Fron Grace With God / The Pogues



意訳 Red Army Blues

The Waterboys“Red Army Blues”意訳



家族を残して故郷を離れることがそんなに辛いことだと、その時はまるで思わずに家を出た。
出発の朝、母さんは僕にこう言ったんだ。
「いいかい、何人のドイツ人を殺すかじゃないのよ。たくさんの人民を解放するのがあなたの使命なのよ。」
母さんが丁寧にブラッシングしてくれたいたちの毛皮の帽子をかばんに詰め込んで、僕は初めて故郷を離れた。
17歳だった。
まだ女の子とキスをしたことすらなかった。

僕たちはヴォロネシ行きの列車に乗せられた。
1943年。まだ夏だったのにロングコートに皮の手袋、鉄板が入ったブーツ、厳重な防寒対策を施され、制服に着替え、銃剣を背負わされた。
自分たちがドイツ人を追い払うと信じていた。本当に信じていたんだ。
神様の福音が聞こえた気がしたんだ。






そもそものことの始まりは2年前。
ヒトラーのドイツ帝国が、独ソ不可侵条約を破っていきなりポーランドに攻め込み、ワルシャワを陥落させて我が祖国の国境まで進軍してきたのだ。
我が祖国は防戦一方だったものの多くの同胞たちの犠牲と引き換えに、なんとかこの奇襲攻撃を耐え忍んだ。
冬になると形勢は逆転した。
奇襲攻撃で一気に攻め落とす計画を練っていたドイツ軍は、ロシアの凍える冬に備えていなかった。補給線は伸び、兵士たちは凍え、飢えた。ドイツが誇る高性能の装甲車は雪のなかで立ち往生し、その間に我が祖国は態勢を立て直したのだ。

翌年ベルリンに入った僕たちは、暴虐の限りを尽くした。
それが我らがスターリン同志からの指令だったからだ。
ダイナマイトを仕掛けたビルディングは粉塵をあげて崩れ去る。逃げ惑うドイツ人たちに向けて僕たちは背後から機関銃を連射した。街の隅に追い込んでから、戦車から高速砲をぶっぱなし、街中のあらゆるところに紅い旗を翻らせた。
それが我らがスターリン同志からの指令だったから。
まるでゲームみたいな感覚で、僕たちは腕を競いあった。
どれくらいの命が奪われたのか、そんなことは知らない。
そんなことを考える必要はない、というのがスターリン同志からの指令だったからだ。

そういえば、そこで僕は初めてアメリカ人というものを見た。
同胞たちから聞いていた話では、アメリカ人は鬼のように大きな体つきで肌はざらつき口元が悪魔のように割けている、とのことだったけれど、僕が会った男は、見た目僕らとそう代わり映えはしなかった。赤ら顔で煤けた皮膚の農夫の顔つきをしていた。
捕らえられた彼は、テネシー州のハザードっていう町に妻子がいると命乞いをした。自分が戦争に出たせいで麦の種を蒔くこともままならずに困窮しているのだと。
僕は故郷の母や兄のことを思い出して、引き金ひくことを一瞬躊躇してしまったんだ。
その時、隣にいた同僚がすかさず引き金を引いた。
農夫のような男は、目の前でばったりと突っ伏して痙攣し、やがて動かなくなった。
同僚は僕を見下すような目付きで一瞥し、あごをしゃくって隊列に戻ることを促した。




召集されてからふたつの厳しい冬を越えた1945年の5月、突然に戦争の終結が知らされた。
我が軍がプラハを陥落させ、ヒトラーを自決に追い込んだのだ。
僕にも解放指令が届いた。
僕と200名近くの仲間は列車に乗せられステッティナーへ連れて行かれた。
人民委員が告げたのは、キエフへ行けという命令だった。
けれど、僕らがキエフにたどり着くことはなかた。
そして、故郷に帰り着くこともなかった。

列車はタイガを越えて北へ向かったのだ。
蚊柱が音を立てて迫ってくるような沼と泥だらけのシベリアの大平原で僕らは列車からひきずり降ろされ、果てのないような大地を行進させられた。
針葉樹の立ち並ぶ林で縞のシャツを着せられ、鎖でつながれ、小さな斧とぼろぼろの鍬で林を開墾させられた。朝鮮人らしき男や日本人らしい男たちがあとからあとから送り込まれてきた。
「俺たちは祖国のために命懸けで戦ったんだ。俺たちは戦争に勝ったんだ。なのに、どうして?」
「俺たちはベルリンで西の奴らと交わっただろ。それがお気に召さないらしい。反革命的なんだとさ。同志スターリンの命令だとよ。」
そう教えてくれた男は、次の日から姿が見えなくなった。
そして僕も、別室に呼ばれた。

僕は祖国を愛していた。
僕は祖国のために戦った。
戦勝のあかつきには素晴らしい未来があると信じていた。
それなのに。
母さん、僕がしたことは罪だったのでしょうか。
福音は訪れはしなかったのです。
兄さん、僕の屍が故郷に戻ったら、僕の墓にこう記してほしい。
「The brute will to survive!(野蛮人だけが生き延びる)」と。

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ザ・ウォーターボーイズは、80年代後半に現れたスコットランドのバンド。
荒れた手触りのサックスが氷河を渡る風のようにこだまし、ヴァイオリンが冬の月のように鋭利に輝く。その中で吠えるように歌うマイク・スコットは、まるでブリザードの中に閉じ込められたはぐれ狼の遠吠えみたいだ。

真冬の寒さの中でとぼとぼと歩いていたら、まるでシベリアを行軍させられているような気持ちになってしまい、この歌を思い出した。

“Red Army Blues”は、祖国の正義を信じた若者が、祖国にいいように使われた挙句に、ゴミのように扱われて死んでゆく物語。
そうそうたくさんの人が知っているわけでもないバンドのそうそう知られてもいない曲を訳してどうなんだ?って感じはあるけれど、そのストーリーをモチーフに妄想を広げて3倍くらいに膨らませてみた意訳です。

国家は人民のために存在するのか。
国家のために人民が存在するのか。

それは、決して「戦争があった頃」のテーマなんかではない。
それは、形を変えて、今も、僕らの暮らしと隣りあわせなのかもしれない。


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A Pagan Place / The Waterboys






意訳 Luka

スザンヌ・ヴェガ 「ルカ」 意訳




少年は、わたしの部屋の二階に住んでいた。
時折、大きな物音がしたり、泣き叫ぶような声がするのが気にはなっていた。
最初は、やんちゃな子供がふざけているんだろうと思っていたのです。小学校低学年くらいの子供なら仕方がない、その程度で苦情を言うのはあまりに大人げないだろう、と。
思い起こせば、それらの物音は、ずいぶん以前からしていたような気がする。
やんちゃな子供がふざけているにしてはおかしい、もっと恐怖に満ちて怯えるような、やめて、助けて、ごめんなさいという叫び声。

名前はルカって言います。
あなたの上の部屋に住んでいます。
きっと見かけたことがあると思います。
お願いがあるんです。
もしあなたが夜遅くに、
もめ事や喧嘩みたいな音が聞こえたとしても、
何があったんだい?って
僕に尋ねないでほしいのです。
何があったんだい?って
僕に尋ねないでほしいのです。
何があったんだい?って。


その日の夕方、学校から帰ってきた彼を見かけたわたしは、つい呼び止めてしまった。
少し怯えるような目をした彼の顔には傷ひとつないのだけれど、まくりあげた袖からのぞく腕や伸びた髪の襟足からのぞく首元には、ひっかき傷や火傷のあとのような傷がぎょっとするほどあった。
どうしたの、その傷。
思わずわたしが発した言葉に彼は慌てて袖を隠してうつむいた。

僕がのろまなせいなんだ、きっと。
大きな声は出さないようにしてるんだけど。
たぶん、僕、どこか狂ってるのかな。
生意気にならないように
気をつけてはいるんだけど。
あの人たちは、僕が泣けば気が済むんです。
だけど、どうかこれ以上
詮索したりしないでください。
もうこれ以上いろいろ言わないでください。
どうか、もうこれ以上。


でも、その傷。
腕でこうなら、背中はきっともっとひどいだろう。
少年の両親とはほとんど面識はない。
すれ違ったときに挨拶を交わす程度。
特に神経質そうでもなく、真面目で社交的な印象だった。奥様は少し控えめで口数が少なそうで、4時頃までパートに出ているとかいう会話を交わした覚えがある。
そう言われれば一度だけ、その父親らしき男が訪問販売に来た営業マンに狂ったように罵声を浴びせているのを聞いたことがある。
あんな真面目そうな人が?よほど何かあったのかしら、とそのときそう思ったっきりすっかり忘れていたけれど。

お父さんに叩かれるの?
お母さんは助けてくれないの?
少年は口をまっすぐにつぐんだ。
目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

僕ならだいじょうぶです。
またドアにぶつけちゃっただけ。
もしあなたがこれ以上尋ねるのなら、
あなたには関係ないでしょ、って
言ってしまうかもしれません。
一人になれたらいいんだけどね。
そしたら、何も壊れないし、
何も投げつけられない。
どうなんだなんて聞かないでください。
どうなんだなんて聞かないでください。
どうなんだ、なんて。


それからしばらく、少年の姿を見かけることはなかった。
いつも何かしら物音がしていた上の階は、奇妙なほど静かになった。
そうして数日が経った日のこと。
仕事から帰ったわたしのマンションの入り口が封鎖されていた。
たくさんの警官が警備をしていた。
尋問を受け、階下の住人であることを伝えた。
何かあったんですか、というわたしの質問は無視され、警官が矢継ぎ早に質問を行ってきた。
住人とは面識はありましたが、どういう人だったのかは知りません。
真面目そうなごく普通の人でした。
何かあったんですか?

そこでわたしは、少年の悲しい事実を知った。

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スザンヌ・ヴェガの歌う“Luka”は、児童虐待に関する歌だ。
この歌を訳しながら、勝手にイメージを広げたショート・ストーリーにしてしまいました。

集団生活をする生き物には、自分よりも弱いものを標的にする傾向があるのだと思う。
人間も元々はそういう性質を抱えていて、自分が充たされていないとき、弱いものへ当たることで憂さを晴らそうとする。

行政の対応には落ち度があったし想像力に欠けていたけれど、苦情の電話を掛けても問題は改善には向かわない。まして、ワイドショーを観てかわいそうねと呟いたところで。

本当に必要なことは、虐待された子供を引き離すことでもなく、まして暴力を振るう者をもっともな理屈で非難したり、誤りを指摘して啓蒙しようとすることでもないのかもしれない。

本当に必要なことは、暴力を振るうその人を抱きしめてあげることなのかもしれない。
ただただその人を受け止めてあげることなのかもしれない。
本当に必要なことは。


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Solitude Standing / Suzanne Vega



続・音楽歳時記「立春」

今日が節分、明日は立春。
暦の上ではここから春。
今日はわりと暖かかった。
このまま暖かくなるわけもなく、まだまだ寒い日は続くだろうけど、なんとなく底を打った感はあって、どこか気分が明るくなるのですよね。
お日様の光も心なしか力強さが増してきた気がする。
季節が巡っているのを感じる。
少しずつ気は満ちて来ている、と。
陽当たりのいい土手ではもう菜の花もすっくと背を伸ばして早くも小さな花を咲かせていた。

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The Crossing / Big Country

冬の冷たさの中で、力強さや勇気を与えてくれる音楽といえば、僕ならこのアルバムだ。
バグパイプのようなギターのフレーズと跳ねるリズム、素朴だけど力に満ちたヴォーカル。真冬の平原を煙を吹き出しながら走る蒸気機関車のように、無骨で力強い音楽。
それと、彼らの唯一の大ヒット、“In A Big Country”のサビ前でスチュワート・アダムソンが歌うこのフレーズが好きで。


砂漠の中で花が開くことを期待してはいない

けれど、僕は生きて、呼吸をしているから

この冬の時期にお日様が見えているから




花が咲くためにはいくつかの条件が必要だ。
水、気温、光。
条件が整いもしないのにいくら花を咲かせようったって無理な話。
花を咲かせるためには、条件を整えなくっちゃいけない。
しかもその条件は自分だけの力で整えることはできないんですよね。
機を待つことも必要。
何より枯れないこと、地に根を張ること。
花を咲かせようと躍起になるよりも、地中の養分をしっかり吸い上げて茎や葉をしっかり保つこと。
葉を広げて太陽の光をちゃんと受け止めること。
あとは条件さえ整えば花は咲く。
いや、花を咲かせることだって、実をつけ種を作るためのプロセスのひとつでしかないんだから、花を咲かせることだけがそもそも目的ではないはずだ。
何より枯れないこと、地に根を張ること。



朝は晴れていたのに、いつの間にか雨が降ってきた。
春はまだ遠い。
でも、季節はちゃんと巡っている。

Stay,alive.







ことばの生まれる景色

何の予備知識もなく店頭で見かけた単行本をその場で買ってしまうのは、とても久しぶりだったような気がする。
何気なく本屋さんのコーナーで見つけて(いつも立ち寄る本屋さんでは、音楽関係の棚と美術関係の棚が隣どうしなのだ)、あぁ、いい感じ、これは借りたり立ち読みしたりではなく、手元に持ってじっくり読みたいなぁ、って思ったのだ。

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ことばの生まれる景色 / 辻山良雄、nakaban

著者の辻山良雄さんは、杉並区荻窪で『Title』という本屋兼カフェ兼ギャラリーを経営しておられる方だそう。
その『Title』にて、画家のnakabanさんが読んだ本の印象を絵にした絵画展を行われ、そのnakabanさんの絵に辻山さんが短文をつけたのがこの本。

40にも及ぶ、nakabanさんの絵と辻山さんのエッセイを、毎日1~2編ずつ、じっくり味わうように読んだ。
選ばれた40編は、星野道夫さんや須賀敦子さん、武田百合子さんといった大好きな作家さんから、サリンジャーやガルシア・マルケス、アーヴィングといった海外の作家、村上春樹「1973年のピンボール」や高橋源一郎「さようなら、ギャングたち」など僕が思春期の頃に画期的だった作品、谷崎潤一郎、宮沢賢治、太宰治、チェーホフ、カフカ、フォークナーといった近代の古典、柳田国男に深沢七郎、山之口貘、ミヒャエル・エンデにマーガレット・ワイズ・ブラウン、果てはゲーテに鴨長明「方丈記」まで、時代も国籍もジャンルも実にバラエティー豊か。
お二人の手にかかるとそれらの作家/作品が何か見えない糸ですぅーっと繋がれているように感じられるから不思議だ。

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本について語られてはいるけれど、書評やブックガイドの類いではない。読書感想文の類いとも少し違って、描き出されるのは辻山さん自身の心もようのようなもの。
本を読んで揺さぶられたり浮かび上がったりしてきたロールシャッハの模様みたいなものを、個人的な経験や感慨を踏まえて「あんな感じ?こんなふうかな?」と呟いているような印象。
少し控えめでとてもさっぱりとして、ある種の清潔感や奥ゆかしさが感じられる文章だけど、この心持ちに至るまでにはきっといろいろなモヤモヤやウズウズがあったのだろうとも思い起こさせる。

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絵については、僕はあまり多くを語れるほどの言葉を持ってはいないのだけど、nakabanさんの絵にはとても惹き付けられるものがある。
それがなぜだかは、うまく言葉にすることができない。

ただ、見えないものを見えるような形にすることが芸術の根本的な役割だとすれば、nakabanさんの絵も辻山さんの文章も、確かにその役割を果たしている。

心の奥底に沈殿していたり、隙間に挟まりこんだり、ジグソーパズルのピースのようにバラバラに散らばってしまっているもの、或いは泥を被ったり、透明すぎたり、小さすぎて目に止まらなかったり、巨大すぎて全体像が把握できなかったりすること。
そんな、意識して見ようとしなければ見えないものが、nakabanさんの絵と辻山さんの文章からは見える気がする。

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あとがきでnakabanさんが書いていらっしゃる文章がまたとてもいい。


本は遠いそのどこかからまるで鳥のように羽ばたいて、
僕たちの窓辺にやって来る。
そしてその故郷の言葉を報せてくれる。
ページをひらいた本のフォルムはほんとうに鳥に似ている。
僕はただ、本になった鳥たちの肖像を描くことに夢中になった。


そうか、本は鳥だったんだな。
窓辺に飛んできた鳥がさえずる物語。
辻山さんもnakabanさんもそうやって本の世界から、いろんなことをたくさん感じとってこられたのでしょうね。

そんなお二人の魂が呼び会ったような素晴らしいコラボ。
まだまだじっくりと味わっていきたい感じ。
たぶん、こちらの心の在りようによって、見えるもの、心に残るものが違うような気がするから。



余談だけど、『Title』という本屋のレビューをネットで見ていたら、評価★☆☆☆☆で「店主が無愛想」というものがあった。
こんな文章を紡げる人が愛想ええわけないやろ、ってひとり突っ込んでしまった。
むしろ愛想だとかとは無縁であっていてほしいものだな、と。





めれんげ@四日市CLUB ROOTS

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行ってきました。
四日市CLUB ROOTS。

京都と四日市って意外と近くって、距離にして100kmほど。車なら1時間半、直通の高速バスも出てて、あー、これが一番いいや、って当日バス停へ行ったら、前日の雪のせいでまさかの運休。
慌てて時間調べて電車の駅へ。
近鉄特急だと京都ー四日市は2時間9分。
のぞみで東京行くよりちょっとだけ早い。
シートは快適、ビールは旨い、トイレもタバコもオッケーだ。いいぜ、近鉄特急~♪

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こないだ数えてみたんだけど、めれんげのライヴに行くのは2011年の六本木以来、これで10回め。
前にもどこかで書いたけど、ただ友達が演ってるからというだけでは、わざわざ四日市まで足を伸ばしたりはしない。
やっぱりめれんげの音が好きだから、生で観たいっていうのがあって。

この日はMAMORU & the DAViESのツアーの一環ということもあってのマモルさん含め計5バンドの対バンライヴ。
久しぶりに若い人たちのバンド(←この言い方、おっさんくさいけど、まぁ事実。)をたくさん観て、逆にめれんげの良さがはっきりと浮かび上がってきた。そんな気がしました。

やっぱりなんといっても「歌」がいいよね。
タテのりでビートをガンガンにきかせてジャンプしたりモッシュさせたりするようなバンド、嫌いじゃないけどね、残念ながら「歌」が響いてこない。
「歌」が響かないということは、結局のところ「人」が見えないということで、それじゃあせっかく人前でステージに立っている魅力が見えてこないんだな。

めれんげの演奏には歌心がある、、、って言っちゃうと「演歌歌手かよっ!」って突っ込まれそうだけど。めれんげの曲には心に響く言葉がある、っていうと、「フォーク歌手かよっ!」って突っ込まれそうだけど。
そういうのとは違う、ロックとしての歌心であり言葉。これ、説明するのはかなり難しいんだけど。

めれんげの歌がいい、というのはつまり、歌を聴かせることを大切にしたバンドだということ。
ビートやギタープレイや丁々発止のインプロビゼーションを聴かせるためのバンドではなく、歌が真ん中にある。
konomiさんのヴォーカルは、言葉を濁したり舌巻いて英語っぽく聴かせるのではなく、ちゃんと言葉が聴こえるような発声で歌われる。
下村さんのギターは、曲によって実に様々なスタイルで弾いていてものすごくテクニカルなんだけど、その事を感じさせないくらい歌とリズムを立てて弾いている。
今回サポートで久しぶりのめれんげだった金城さんのソウルフルでノリに徹したベースもそう、馬橋さんのリズム感バリバリのピアノもそう。
そしてなんといっても藤倉さんのドラム。
ドンドコバシャバシャと髪降り乱して手数ばっかり叩きたがる自称ロックなドラマーが多い中で、まるでリンゴ・スターやチャーリー・ワッツみたいに歌を立ててビートの屋台骨をどっしりと守っているドラマーを僕はアマチュア・バンドで観たことがない。
大袈裟に誉めすぎてる感じがするけど、ほんとにそう思うんですよね。

そしてもちろん、曲がいい。
konomiさんの曲はとても言葉を大切にして作られている、っていうとメッセージ・ソングっぽく受け取られそうだけど、そうではなくって。
その言葉は、先に伝えたい物語なりメッセージがあって無理に持ってきたものではなくて、メロディーが連れてきた言葉なんだと思う。メロディーに乗ったときに響く言葉。
その言葉がメロディーにうまくはまったとき、情景が浮かんでくる。その情景の中にいる心象風景が浮かび上がってくる。
そういう歌。

その歌で歌われる物語は、かっこいいばっかりじゃない。
むしろ、かっこわるくてどうしようもなくイケてない方が多い。
でもね、無理に背伸びして精一杯かっこつけてみたらとんでもなくかっこわるくなってしまうことってあるじゃない。
そういうのとは逆に、かっこわるさをフツーにさらけ出してしまうからこそのかっこよさってのがあって。
それってめちゃくちゃロックなんじゃないのかな、なんて思ってしまうのですよね。
っていうか、それこそがロックだろ、と。
だって、誰もがスーパースターや美男美女じゃない。なかなかうまくいかない事の方が多い中で、それでも楽しく元気にやっていくための支えになってくれるロックっていうのは、そーゆーもんだ。

そういう感じを目の前で思いきって演ってくれる人たちがいるっていうのは、心強いよね。
そういう感じを目の前で体験できる、ってのは、レコードやビデオで経験するのとはエネルギーが何百倍も違う。
やっぱり生。現場。

雪の散らつく中、四日市まで足を運んで、週明け眠い目こすってぼけっと仕事するもとになっても、それを補って余りあるコーフンと感動、いや感動は言い過ぎか(笑)、エネルギーっていうか、人生に於いて楽しむべきサムシングが満ちあふれた感があります。



それでは、現地からの動画をいくつか。
モニターのすぐそばだったので、幾分音が割れていますが、そこはご容赦を。





オレンジ&ターミナル

乗り遅れてもいいのだ
あの汽車には用はないのだ
乗り過ごしてもいいのだ
降りたところが君の居場所なら
( どこかの駅で / 福田ユウイチ)


日曜日、西成区の難波屋。
学生時代からの友人である男のライヴがあった。
富山をベースにこの数年は年間50本近くも演っている彼にとってもはやライヴは日常なんだろうけど、大阪で演るのはしばらくぶりのこと。
転勤で長いこと東北のほうへ赴任していた別の友人が関西へ戻って来ていて「久しぶりに会おうや。」とか言ってたところでの大阪ライヴの話があって、「じゃあライヴの時間までジャンジャン横丁で飲もう。」ってなことに。
わりとしょっちゅう会ってる珍しくない奴からかなり久しぶりの奴までなんだかんだで7人ほどが集まってのまだ明るいうちからの飲み会に発展。
結局、ライヴ前にすっかり出来上がってしまった。

普段は富山でパン屋を営んでいる彼が本格的にライヴ活動を再開してから、かれこれ10年少しだろうか。
当時は「まだ子供が小さいし」となかなか出かけてこれなかった女の子も子連れで参加。その娘が22才、息子が20才っていうからちょっとびっくりしてしまうよなぁ。
ちょうど彼らくらいの年頃だった僕たちも、まぁいろいろなんだかんだありつつも、それなりの大人になった。

時刻表通りに進んできた奴なんて誰もいない。汽車に乗り遅れてたり乗り過ごしたり、敢えて汽車から降りてみたりしながら、降りたところでそれなりにやってきたってことだ。

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オレンジ&ターミナル / 福田ユウイチ with 後藤トシロウ

このCDは、彼がギター弾きの後藤トシロウさんと組んで一年ほど前に録音したアルバム。

なんだかんだでかれこれ40年近くも音楽を聴いてきてかなり自信をもって言えることは「いい音楽」と「それほどでもない音楽」がはっきりわかることだ。
友人だから言うわけじゃなく、このアルバムに収められた音楽はとてもいい音楽だ。

アクの強いヴォーカルで叫ぶように歌い、叩きつけるようにギターを鳴らす。
毒を含んでシュールでナンセンスな言葉の中に、まるでぬかるみの中にぽっこり咲いたような美しい言葉が浮かんでくる独特の言葉選び。
言葉のリズムの上に成り立っているメロディーは、クセがあるようで意外に素直で、時々、幼いときに見た夕焼け雲みたいに日本的に美しかったりする。

彼はいつの間に、こんなにいい歌を書くようになったんだろう。
僕の隣でからだを揺らしていた松たか子似の女の子がため息をつくように「かっこいいー。」ってつぶやいた。
ん?僕が知っている彼は、女の子から「好い人」とか「おもしろい人」ならともかくも「かっこいい人」と言われるようなタイプの男ではなかったはずだ。
でも、その夜、彼は僕の目から見ても、実際とてもかっこよかった。



お時間がありましたら、数曲聴いてみてください。













続・音楽歳時記「大寒」

1月20日が大寒。
昼間はあったかかったけど、夜は冷えるね。っていうか、凍えると言った方がいいのかもしれない。

冬はあんまり好きではないけれど、星がきれいなのは冬のいいところ。
空気が澄んでチーンと静まり返った夜。
南西から北東にかけてうっすら流れるうろこ雲。
南東の空に白く輝くのがシリウス、その少し南にオリオン座のリゲル。お月様が明るくてプロキオンやベテルギウスはちょっと見えないけれど、もう少し月が西へ動けば見えるのかな。
冬の大三角の少し先にはふたご座のカストルとポルックス、天中にはぎょしゃ座のカペラ、南にはおうし座のアルデバラン。小学校のときに習った。
はるか昔から、人は星の位置に何かしらの意味を読み取って、物語を紡いできたんだよな。

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Adventure / Television

テレヴィジョンの音楽には、どこか冬の星空を見上げているときに感じる気分と同じような感じがする。
匂いっていうか、佇まいが冬空っぽい。
冷たく張り詰めた空気と闇。
遠く手が届かないその闇の中にかすかに、けれどはっきりと灯る光。
絶望の中のかすかな希望、なんて例えてしまうととても陳腐だし、そこまで深い絶望感も心の闇を抱えているわけではないけれど、冬の夜空のの闇と灯りは、昼間の明るい空よりもよほど意識的で自覚的で、どこか意味ありげで何かを指し示してくれているような気がしてくる。

遥か昔の人たちは、星空を見上げながら、そこにある星の並びに意味を受け取り、物語を当てはめた。
見上げると、自分が今まで出会ってきた、人や音楽や物語たちも、そこに連なって星座を形作っているような気がしてくる。
ひとつひとつの星が、なんらかの意味を持って、僕を今いる場所に導いたのかもしれない。

真冬の凍えるような夜には、そんな感傷もたまにはいいだろう。




Days / Television





Appendix

Profile

golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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