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Phantom Rocker & Slick VS Brian Setzer

golden(以下g):「革ジャン、バイクのヤンキーっぽいロックンロールで思い出したんだけど、80年代を代表するロカビリー・バンド、ストレイキャッツのことを書きそびれてた。」
blue(以下b):「ストレイキャッツな、“Sexy+17”とかめちゃくちゃヒットしてた印象はあるけどな、リアルタイムではなんかスルーしててんな。」
g:「そうだったっけ。」
b:「なんかな、チャラいし、ヤンキーっぽかったやん。ああいうロカビリーって、横浜銀蝿とかっぽいんちゃうかという先入観というか偏見があってな。」
g:「不良っぽくない普通の人が演るロックが聴きたかった、と。」
b:「ところがな、だんだんとロックンロールのルーツっぽいものを知るようになっていくと、エディ・コクランとかジーン・ヴィンセントとかカッコええやん、って思うてくるねんな。」
g:「佐野元春が“悲しきRadio”っていう曲の中で♪ジーン・ヴィンセント、チャック・ベリー、リトル・リチャード、バディ・ホリー、Any Old Rock'n'Roll、っていうフレーズがあって、そういう古いロックンロールに興味を持ったんだよね。」
b:「そう、聴いてみたらめっちゃカッコよくて。あぁ、こういうのを演ろうとしてたんやなぁ、ストレイキャッツは、と思うた頃にはあっさり解散しててん。」
g:「なるほど。」
b:「で、そのストレイキャッツの残党が、ギタリストのアール・スリックと組んだのがこのファントム・ロッカー&スリック。」
g:「キース・リチャードが参加したことも話題になったよね。」
b:「ギタリストのアール・スリックっていう人は知らんかってんけど、デヴィッド・ボウイやジョン・レノンと演ってたってきいてめっちゃ期待感高まったん覚えてるわ。」
g:「今やったらちょっと興味を持ったらすぐにSpotifyとかで聴けるけど、当時は“次は誰のどんなアルバム聴こうか”って考えたり想像したりするのが楽しかった。」
b:「今日はこれを聴こう!って決めてレンタルレコード屋へ行ったら置いてなかったり貸し出し中やったり。」
g:「レンタル店になくて輸入盤屋を探して、見つけはしたものの2500円出すべきかでさんざん逡巡したり。」
b:「で、大学2回生になったときにレンタルレコード屋でバイト見つけて、そりゃ働くしかないわって応募して。あれは大きかったなー。」
g:「うん、前回のジョン・ハイアットも、ファントム・ロッカー&スリックもたぶん自分で買うとなると見送ったんじゃないかな。」
b:「そうやってちょっといいなと思っても聴き逃したレコードっていっぱいある。」
g:「で、ファントム・ロッカー&スリック。」
b:「なんかな、ストレイキャッツのイメージとは全然違う、ノリのずっしりした骨太のロックを演ってたからビックリしたわ。」
g:「ストレイキャッツのリズム隊、スリム・ジム・ファントムとリー・ロッカーっていうと、バスドラなしで立ちながらスネアだけ叩いてるドラムとウッドベースっていう印象だったからね。」

Phantom Rocker & Slick/ Phantom Rocker & Slick(1985)

g:「王道のロックっていうか、勢いがあって、かつ、したたかでタフそうで。」
b:「ストレイキャッツのイメージより全然チャラくないねんな。」
g:「硬派っぽいし、せーの、で演った感じの勢い、ノリのよさがあって。」
b:「これ、めっちゃヒットするでーって思ったけど、全然やったな。」
g:「まぁ、デュランデュランやワムかボン・ジョヴィかっていう時代だったからね。」
b:「めっちゃカッコええわっ!って思うてんけどなぁー。」

g:「ファントム・ロッカー&スリックの翌年にはブライアン・セッツァーも待望のソロ・アルバムをリリースしたんだけど。」
b:「これがな、まるでブライアン・アダムスかよっ!っていうくらいのポップなアメリカン・ロックでちょっとビックリしたわ。」
g:「ロカビリーっぽさが全然なくて、えっ、これ、ブライアン・セッツァー?って。」
Brian Setzer / The Knife Feels Like Justice(1986)

b:「レコード会社の思惑とか、いろいろあったんやろな。」
g:「せっかくのファースト・ソロだし、ストレイキャッツとは違う色を出してみよう、とか?」
b:「その後、ブライアン・セッツァー・オーケストラとかでぶりぶりのロカビリーに回帰したんをみると、本人にとっては黒歴史っぽいけどな。」
g:「でも、今聴くとけっこうカッコいいんだよ。」
b:「まぁな。何曲かは50'sっぽいのんとかロカビリーっぽいのも演ってるしな。」

g:「結局、ファントム・ロッカー&スリックもブライアン・セッツァーのソロも長続きせず、86年にはストレイキャッツを再結成。」
b:「あれ何年のリリースやったかな、50年代ロックンロールのカヴァーばっかり演ったアルバムがあって、めっちゃ好きやったわ。」
g:「『Original Cool』、リリースは93年ですね。」
b:「ブライアンは並行してブライアン・セッツァー・オーケストラでも活動、あれはルイ・ジョーダンとかのジャンプブルースみたいなのを演りたかったんやろうけど。」
g:「ビッグバンドで演るロカビリー、っていう感じがカッコよかったよね。」
b:「このあたりの90年代の作品を聴いていると、気負わずに、自分が大好きな音楽を心ゆくままに楽しんでいるように聞こえるんやけど。」
g:「それに比べると、このファントム・ロッカー&スリックもブライアン・セッツァーのソロも、気負いまくってるよねぇ。」
b:「気負いまくってるな。背伸びしてるし、無理もしてる。」
g:「ブライアン・セッツァーは1959年の生まれだから、ストレイキャッツでデビューしたのが21才くらいか。このソロが27才、ブライアン・セッツァー・オーケストラは94年で35才の頃か。」
b:「27才くらいっていうのは、気負いまくるもんやろうな。まだこんなもんやない、もっと別のステージへ行ける、って。」
g:「気負いまくって、惨敗して、改めて自分が一番好きで一番やってて楽しいことに気づくのが30代半ば。」
b:「30代半ばでそういう心境に落ち着けたらラッキーな方ちゃうか。」
g:「そうかもね。」
b:「でもな、この気負いまくって過去の自分を越えよう、新しいステージへ踏み込もうってあがいてる時期がな、なんていうかものすごく貴重っていうか、愛おしくすら感じるねん。」
g:「あー、わかる。」
b:「いやー、思わず、頑張れよって声かけたくなる、みたいな。」
g:「目線が完全にジジイ目線。。」
b:「いやいや、ワシも若い頃にな、、、」
g:「若者から一番嫌われるパターンだよ、それ。」
b:「まぁええやん。いやー、こういうシンプルでストレートでポップなロックンロールっていうのはやっぱりええなぁ。ビシッと来るっていうか。」
g:「こういう音楽を知るに連れ、どんどんルーツ志向になっていって、古いロックンロールやブルースに遡り始めた、っていうのはあるよね。」

Marshall Crenshaw VS John Hiatt

golden(以下g):「大学2回生になってからレンタル・レコード店でバイトするようになって僕の音楽生活は一気に広がっていったんだけど、それまでは新しい音楽に出会うきっかけといえばラジオだったよね。」
blue(以下b):「ラジオ、よー聴いてたな。今はもう野球中継以外聴くことないけどな。」
g:「たまに山下達郎の“サンデーソングブック”を聴くくらいか。」
b:「中学生の頃はABCの“ヤングリクエスト”やったけど、高校生になってからはNHKの“サウンドストリート”を聴くようになった。」
g:「当時は佐野元春、坂本龍一、甲斐よしひろ、山下達郎、渋谷陽一、っていうラインナップだったかな、確か。」
b:「渋谷陽一の曜日はそんなに熱心には聴いてへんかってんな。坂本龍一の曜日もほとんど記憶ないわ。」
g:「特に熱心に聴いてたのは月曜日の佐野元春。」
b:「最新のカッコええ曲、しかもちょっとマイナーなのをよーかけてくれてたからな。」
g:「マーシャル・クレンショウも佐野元春のサウンドストリートで出会ったアーティストでした。」
b:「そうやったな。レンタル屋になかって、レコード探し回ったわ。」
Marshall Crenshaw / Downtown(1985)

g:「クールでシャープで都会的なロックンロール。」
b:「バディ・ホリー譲りの朗らかさと、エルヴィス・コステロみたいなちょっと鼻にかかったちょっと皮肉っぽいヴォーカル。」
g:「都市に暮らすモラトリアムな少年のイノセンスを感じさせるところなんか、国籍違いの初期佐野元春って感じだったよね。」
b:「ロックっていうてもいろんなんがあったからな、髪の長い兄ちゃんたちのハードロック系でも、やたらとおしゃれでスノッブなニューウェイヴ系でもないのんが聴きたかってんけど、そーゆーのんってあんまり音楽雑誌とかでは取り上げられてへんかってん。」
g:「ロックンロールっていうとヤンキーっぽいイメージもあったしね。革ジャンとバイクがセットみたいな。」
b:「そやねん。もちろん反逆的反抗的なロックもカッコええし惹かれてんけど、不良少年ではなかった自分としてはその一方で、ああいう見た目から反抗的反逆的っていうんではない普通の人が演る普通のロックが聴きたいっていう欲求があったんやと思う。」
g:「佐野元春のサウンドストリートでは、そういうアーティストをたくさん紹介してくれてたよね。ツッパリではない、精神の不良っていうか。」
b:「そう、精神の不良。見た目やファッションやなくて。佐野元春自身もそうだったけど、髪を伸ばしたり、革ジャン着たりバイク乗り回したり、みたいなことやなくてもロックンロールできるんやっていうのがな。」
g:「マーシャル・クレンショウもね、ポップなんだけど、すごく都市的というか、ストリートっぽい息づかいを感じたんだよね。」
b:「ポップさの中にちょっと翳りがあるっていうか。」
g:「クールな振りをして格好つけながら、どこか胸の内にシャープなナイフを大切に持っているような。」
b:「そういう感じな、表面的にはクールなんやけど、ちょっとしたシャウトとかに熱いもんがあって、スタイルやなくてスピリットっていうか、本当に大切なものは譲らへん、みたいなとこが共感ポイントやった。」

b:「ジョン・ハイアットもサウンドストリート経由やったような。」
g:「確か、コステロとデュエットした“Living A Little,Laughing A Little”だったかな。」
b:「実はスピナーズのカヴァーやったっていうのんを知ったのはだいぶ後やってんけどな。」

John Hiatt / Warming Up To The Ice Age(1985)
g:「この曲が入ってたんが、85年リリースの『Warming Up To The Ice Age』っていうアルバムで。」
b:「ジャケットだけにみたらえらいイモっぽい感じなんやけど、これがめっちゃ良くてな。」
g:「ルーツっぽい埃っぽさやアメリカっぽいワイルドさと、そういう中にちょっとナイーヴな内面が見え隠れするみたいなところがね。」
b:「そやねん。馬面で出っ歯でいかにもガサツなアメリカの田舎のおっさんみたいな冴えへん風体やのに、めっちゃ渋くてカッコええっていう。」
g:「イモとかガサツとか、誉めてるように聞こえないんだけど。」
b:「なんでやねん、めっちゃ誉めてるやん。こういう普通のおっさんが、プレイしたらめっちゃカッコええ、っちゅーのがええねん。“I'm A Real Man”とかもうゾクゾクするくらいカッコええやん。」

g:「太いギターとイガラっぽいシャウト、バックで鳴ってるロックンロールなピアノもいいね。」
b:「骨太なロックからソウルっぽいサウンドまで、奥行きの深さを感じたわ。」
g:「ハイアットはこのあと87年に『Bring The Family』という名作で大ブレイク、その後このアルバムを一緒にレコーディングしたニック・ロウ、ライ・クーダー、ジム・ケルトナーとリトル・ヴィレッジというバンドを結成。」
b:「そのあたりも渋かったなぁ。」
g:「マーシャル・クレンショウの方もブレイクは87年、映画『ラ・バンバ』にバディ・ホリー役で出演して知られるようになった。」
b:「あの役はずっぱまりやったなぁ。メガネをかけたクールでポップなロックンローラーって、マーシャル・クレンショウそのまんまやもんな。」
g:「ヘヴィメタルやエレポップがチャートを賑わせていた80年代にも、実はこういうルーツを追求した渋いアーティストがたくさんいたっていう。」
b:「このあたりから聴くものもどんどんマニアックになっていく。」
g:「他の奴らが知らないものを聴いているっていうプチ優越感?」
b:「それもないことはないけど、ほんまに好きなんはこーゆールーツっぽいやつやなって発見していったっていうことやと思うで。」
g:「まぁ、そうかな。」
b:「チャートを賑わせている最新流行のヒットソングとは違うところでいっぱいええアーティストがおるんや、っていう発見はやっぱりラジオの影響は大きかったな。」
g:「ラジオの、っていうか、信用できるDJを通じてってことだよね。」
b:「そうやねん。信用できるDJ、共感できるDJっていうのがポイントやろな。」
g:「今はDJの代わりがSNSだったりするのかもね。」

Scandal feut.Patty Smyth VS Lone Justice

golden(以下g):「今日のお題はスキャンダル・フューチャリング・パティ・スマイス。」
blue(以下b):「“The Warrior”な、俺的には大ヒット曲やったわ。」
g:「けっこう好きだったですねー。」
b:「いかにもな80年代型ポップ・ロックやけどな。」
g:「『Footloose』のサントラとかに入ってそうな。」
b:「そういうタイプやな。」
g:「プロデューサーはブロンディやナック、古くはスージー・クワトロを手掛けたマイク・チャップマンで、外部からのソングライターも導入して。」
b:「売る気満々で作られたレコードやな。」
Scandal feut.Patty Smyth / The Warrior(1984)

g:「かっこいいね。小柄で華奢っぽいのに、めっちゃパワフル。」
b:「パワフルなんやけど、筋肉系のパワーやなくて、意志の強さからくるパワーを感じるねんな。」
g:「ちやほやされたってあんたたちの思い通りにはならないわよ、妬まれようが謗られようがあたしはあたしよ、みたいな。」
b:「だからといってギスギスに突っ張ったりガチガチの頭でっかちになっているわけでもない、もちろん変に媚びて女としてのセクシーさを売りにもしない。そういうカッコよさっていうか。」
g:「キュートなルックスとやんちゃで明るいキャラの一方で肚は据わっている感じは、リンダ・ロンシュタットみたい。」
b:「アイドル的な人気でありつつ、けっこうちゃんと実力派って感じがな。」
g:「アイドル崩れが無理やりロックバンドに入れられてロック歌わされているんだろう、って当時は思ってたんだけど、そうでもなかったみたいだね。」
b:「山川健一の『今日もロック・ステディ』っていう本にパティのインタビューが載ってるんだけど、ニューヨークのヴィレッジで生まれて母親はライヴハウスを経営していたらしくて。」
g:「小さな頃からステージで歌っていて、ジミ・ヘンドリックスとジャニス・ジョプリンが大好きだったって言ってたね。」
b:「山川健一が“死んだ人ばっかりだな。”って言ったら“だいじょうぶ、私はヘルシーよ。”って。」
g:「最初の結婚相手はリチャード・ヘルだったらしいからね。リチャード・ヘルとの間にできたお嬢さんの名前Rubyはストーンズの“Ruby Tuesday”から採られたとか。」
b:「その割にはめちゃくちゃポップやけど。」
g:「まぁ、レコード会社の戦略とかいろいろあった感じはする。」

g:「スキャンダルっていうバンドはこのあとすぐに解散しちゃうんだけど、パティ・スマイスはソロで再デビュー。」
b:「ソロ・アルバムもけっこう好きやったわ。トム・ウェイツの“Downtown Train”演ってたり、その次のアルバムではドン・ヘンリーとデュエットしてたり。」
g:「ポップな中にもアメリカン・ロックらしい骨太さがあって、今聴いてもけっこうカッコいいよね。」
b:「80年代のリンダ・ロンシュタット的存在といえば、ローン・ジャスティスのマリア・マッキーやな。」

Lone Justice / Lone Justice(1985)

b:「けっこうカントリーっぽい音やったよな。それこそ70年代のリンダ・ロンシュタットのバンドっぽいようなカントリーっぽさとロックっぽさ。」
g:「プロデューサーはジミー・アイオヴィンなんだけど、トム・ペティやEストリート・バンドのスティーヴ・ヴァン・ザントが曲提供してたり、ハートブレイカーズのベンモント・テンチやマイク・キャンベルが参加してたり。」
b:「で、紅一点のマリア・マッキーが惚れ惚れするくらいカッコいい。」
g:「青い瞳のお人形さんのようなルックスとは裏腹に、恐いもの知らずの堂々とした佇まいと、ちょっとパンクっぽさもあるむき出しのワイルドな歌い方が素敵。」
b:「黙っておすまししてれば可愛らしいのに、顔を歪めてシャウトしまくるところがええな。」

g:「なんていうんだろう、、心の底から歌いたくってしかたがない衝動、あふれるような気持ちが抑えきれないマグマのようにとめどなく噴き出しているような感じ。」
b:「自分の中にある吹き荒れるような感情を、コントロールしないままぶっ放しているような感じやな。」
g:「当時ジャニス・ジョプリンの再来とも言われてた。声質やスタイルは違うけど、わかる気もするよね。」
b:「そもそも1985年という時代に古くさいカントリーロックを演ろうという気概がええよな。」
g:「気概というか、好きな音を好きに演ろうという感じね。」
b:「ただ、思ったより売れなかったのか、セカンドアルバムではカントリー臭さが取り除かれてふつうのポップロックに路線変更させられた上に解散しちゃったのは残念やったけどな。」
g:「まだまだ女性シンガー紅一点のロックバンドっていうのは、レコード会社がピンでシンガーだけをアイドル的に売りたがる時代ではあったんだろうね。」
b:「Go-Go'sのベリンダ・カーライルとかも、けっこうパンクっぽい弾けた感じやったのに、普通のアダルトなシンガーになってしもうてたりな。」
g:「でも、同じ1984年デビューのバングルスとか、肩肘張らずにナチュラルにロックしてるっていうか、無理に80年代の最新型を取り入れるわけでもなく、好きな音楽を自然に演ろうとしてる感じがあったけどな。」
b:「80年代半ばっていうのは、女の子が普通にロックできる時代の夜明け前くらい。彼女たちが道を開いていったんだろうね。」
g:「ルックスがいいと自らの意思に沿わずにアイドル扱いされて、女の子も大変だったよね。」
b:「ま、それは男もそうなんやろうけどな。そういうことで困ったことはないからわからんけど。」
g:「ぶっちゃけ、パティ・スマイスもマリア・マッキーも、最初はルックスに惹かれたでしょ?」
b:「いや、まぁ、そりゃぁ、そういう側面ももちろんないではないけど。」
g:「ルックスがいいということも一つの才能だろうから、その才能がある人はそれを活かせばいいわけなんだろうけどね。」
b:「そうでない人はそれなりに。」
g:「樹木希林と岸本加世子かよっ!」
b:「特定の世代にしかわからんツッコミやな。」
g:「あぁ、そう言えば思い出した。」
b:「ん?」
g:「パティ・スマイスって、ちょっと初恋の女の子に雰囲気が似てたんだよね。」
b:「あー。」
g:「小動物系の愛くるしい顔立ちで、でも芯のしっかりした子だったんだよ。」
b:「結婚はしない、60才になっても赤いドレスを着て踊ってたい、なんて言うてたっけ。」
g:「今頃どんな大人になってるんだろうね。」
b:「たぶんパティ・スマイスといっしょで、陰のある悪い男にひっかかって、子ども産んでから離婚してるはず。」
g:「すごいキメつけ(笑)」

David Bowie VS Bryan Ferry

golden(以下g):「80年代は新しいアーティストたちもたくさん出てきてた一方で、70年代から活動しているベテランたちもすごく頑張ってた時代でした。」

blue(以下b):「ロバート・パーマーやスティーヴ・ウィンウッドもブレイクしたし、フィル・コリンズやエルトン・ジョンも70年代組やな。」

g:「スプリングスティーンやジャクソン・ブラウンもそう。」

b:「ポール・マッカートニーやジョージ・ハリソンも現役バリバリやったし。

g:「新しいテクノロジーに刺激を受けたのか、ベテランたちもこぞって80年代的なサウンドを取り入れていた。」

b:「80年代サウンドが似合う似合わないに関わらず、そうせざるを得ないような感じやったんやろな。

g:「で、今日のお題は、デヴィッド・ボウイとブライアン・フェリー、と。」

David Bowie / Tonight(1984)

Bryan Ferry / Boys and Girls(1985)
 

b:「ん?この二人の80年代の代表作って、ボウイなら『Let's Dance』、フェリーならロキシー・ミュージックの『Avalon』なのでは?」
g:「いや、そうなんだけどね、その2枚ともリアルタイムではちゃんと聴いてなかったから。」
b:「あー、そーゆーことか。確かに聴いてなかった。名前とかは知ってはいたけど、なんかゲイっぽいよなーみたいな印象があって。」

g:「そんな身も蓋もないストレートな言い方は今の時代アウトですよ。」

b:「せやけど実際そーゆー印象やったんやもん。82〜83年、高1男子の無知と偏見なんかそんなもんやで。」

g:「まぁ確かに、妖艶というか淫靡というかスケベぽかった。」

b:「田舎の童貞高校生とはまったく縁のない世界やろ。」

g:「デヴィッド・ボウイやブライアン・フェリーってそもそも聴く側の美的センスが問われそうだよね。」
b:「耽美的とでもいうか、このヌメリのある淫靡な感じは、ブライアン・アダムスやアラームとは対極やからな。」
g:「あれくらいの年頃は、熱く拳を振り上げるのがしっくり来るからね。」

b:「とりあえず、バキューン、ギャギャギャーン、イェー!が気持ちいい年頃には、ボウイやフェリーは大人過ぎたな。」
g:「で、この2枚。『Let's Dance』と『Avalon』には到底敵わなくて日陰っぽい扱いをされてるけど、けっこう素晴らしい作品だよな、って、最近思って。」
b:「最近かよっ!」
g:「うん、まじでこの十年くらいかな。」
b:「当時は熱心に聴いてへんかったけど、後々に良さがわかるっていうのはあるけどな。」

 

g:「まずはボウイの『Tonight』。当時、メディアでは酷評されていたという印象があります。」
b:「そうそう。あ、駄作なんや、じゃあ聴かんでええわ、ってスルーしたもん。」
g:「“Blue Jean”とかはヒットしてたけどね。」
b:「そのヒットが、いわゆる売れ線狙いとか『Let's Dance』の二番煎じやとか言われてたな。」
g:「ボウイの歩んできた歴史を辿っていくとね、常に世間のアウトサイドでダークな部分を可視化しながら、しかも作品ごとにコンセプトを持って変化し続けてきたアーティストだからね。ボウイでさえも売れ線に走るのか、『Let's Dance』が売れて日和ったのか、って当時のボウイのファンは思ったんだろうね。」
b:「ボウイからしてみたら、この路線も変化し続ける過程のひとつ、というつもりやったんやろうけど。」
g:「良くも悪くも、肩の力が抜けた感じはするけど、その肩の力の抜けた感じがいいなぁって思ってて。

b:「力作や問題作を世に問うというのではなく、自然に心地よいものを演ろうとしたような。」

g:「“Don't Look Down”や“Tonight”はゆるめのレゲエ。“Tumble and Twirl”なんかはけっこうソウルっぽいし、“I Keep Forgettin'”はチャック・ジャクソンの62年のヒットをモータウン風に。」

b:「そのへんはけっこう好きやねんけどな、“Neibourfood Threat”とかロックっぽい曲がな、ちょっと無理矢理感っていうか取って付けたような感じがするねん。」
g:「カッコいい曲なんだけどね、ちょっとゴージャスな80年代っぽい音質が浮いてるっていうか。」

b:「ビーチボーイズのカヴァー“God Only Knows”なんてずいぶんトゥーマッチなアレンジになってて、最初はカヴァーって気づかんかったわ。」
g:「サブカル的なカリスマから、表社会のスーパースターを目指したみたいな。」
b:「タモリなんかはサブカル界のカリスマから表社会のスーパースターになったし、ビートたけしもアブナイ側の人だったから、充分あり得る話ではある。」

g:「本人がそういうことを狙ったのか、周りがそう仕立て上げようとしたことに乗っかったのか。」
b:「そういうものが結果的にキャリアの中で問題作とされてしまうのが、ボウイらしいところなんだけど。」
g:「でも、そういう諸々を取っ払って素直に聴けば、やっぱりクオリティの高いポップミュージックだと思うんだよね。」

b:「“Loving The Alien”とかイギー・ポップと共演の“Dancing With The Big Boys”とかな、ふつーにカッコええと思うわ。」


g:「ブライアン・フェリーの方も『Avalon』の二番煎じの印象があるんだけど。」
b:「うーん、フェリーの場合は二番煎じというよりは、長年演ってきて辿り着いた世界観を更に継承・発展させようとしたっていう印象?」
g:「いかにもブライアン・フェリー、っていう型を完成させたっていう。」
b:「ロキシー・ミュージックのことを語りきれるほど聴き込んでへんからよーわからんねんけどな、印象としてはそんな感じちゃう?」

g:「ソウルフルなリズムのうねり+うねうねとした歌にゴージャスなコーラス、っていうのが王道パターン。」
b:「正直ゆーてブライアン・フェリーの歌い方はあんまり好みではないねんけど。」
g:「水分量が高いというか、ヌメリがあってジェル状みたいな声質がね。」
b:「でもな、リズムがめちゃくちゃかっこええねん。ドタバタせずに余裕があって空間の広いドラムと、その間でモゾモゾとうねるベース、パーカッションも効いてるし。」
g:「ギターもかっこいいよ。ナイル・ロジャースやデイヴ・ギルモア、マーク・ノップラーらが参加してるけど、いずれもツボを心得た演奏っていうか。」
b:「弾きまくるんじゃなくて、ぎゅっと凝縮されたプレイやな。」

g:「ハードロック系とは対象的な(笑)」

b:「どの曲も基本は同じパターン。」
g:「『Avalon』もそうなんだけど、この心地よいリズムに身を委ねる快感みたいのが、聴いてるうちにだんだんクセになってくる。」
b:「そのリズムの反復が、どんどん心地よさを増幅させる仕掛けなんやろな。」
g:「気がついたらブライアン・フェリーの妖しい指使いに襲われてた、みたいな気分になるときってない?」
b:「そんな性癖はないねんけど。」

g:「まぁそれは冗談としても、アヤシイ世界、イケナイ世界にずるずると引き込まれていくみたいな。」
b:「まぁ、それはわかる。」
g:「デヴィッド・ボウイもブライアン・フェリーも、見た目イケメンでありながらどこか脆さというか危うさがあるよね。」
b:「ちゃんとしようとすればするほど、こぼれでるどうしようもなさ、みたいな。」
g:「大人になればそういう大人だからこそのどうしようもなさってわかるんだけど、子供の頃にはよくわからなかったなぁ。」
b:「ほんまはレコードに18禁のマークとかつけとくべきやで(笑)、ガキにはわからん世界や。」

g:「もう一回18才をやり直せるなら、こういう音楽を聴いてる大人っぽいティーンエイジャーをやってみたいなぁ、とか思ったりするんだけど。」

b:「いやぁ、十代をもう一回はええわ。いろいろめんどくさい。大人の方がラクやで。」





Glenn Frey VS Don Henley

golden(以下g):「年をとったら年月を感じるのが早くなるっていうけど。」

blue(以下b):「そやな。1年なんてあっという間に過ぎるし、10年くらい前のヒット曲くらいだと感覚的には“最近”やもんな。」
g:「あれ、どうしてなんだろうね。若い頃の一年とは濃密さが全然違う。」
b:「若い頃は初めての経験が多いからちゃう?」
g:「この80年代シリーズ、1983〜4年くらいはもうめちゃくちゃ書きたいこといっぱいあって、あの頃はものすごく濃密だったんだなぁって思ったんだよ。」
b:「音楽シーンがとかではなくて、ちょうどその頃の自分がなんでもかんでも刺激的を感じる年頃で、それがたまたま84年あたりやった、ってことやろ。」
g:「僕らが音楽をちゃんと聴き始めたのって79〜80年くらいじゃない?中学生になってすぐ。」
b:「僕ら、って、そもそも同一人物やからな(笑)」
g:「その79〜80年って、イーグルスはまだ解散してなかったんだよね。」
b:「ツェッペリンもやな。」
g:「海外のアーティストを好んで聴くようになったのが高校生になった82年だったけど、そのときすでにイーグルスって歴史上のバンドっていうイメージじゃなかった?」
b:「今日のお題の二人、ドン・ヘンリーとグレン・フライのソロが84年に相次いでリリースされたときには“あのイーグルスの中心人物が満を持してソロ・アルバムをリリースするのかっ!”って思った。
g:「イーグルスの解散からたった4年だったのに、っていう感じがするんだよね、今思うと。」
b:「80年から84年までの4年と2020年から2024年までの4年が同じ長さとは到底思えんな。」
g:「不思議でしょ?」
b:「リアルタイムを知ってるかどうかっていうのはあるやろうけどな。例えば、タイガースの掛布選手が一軍で活躍しだしたのが1974年、俺小学校3年くらいだったんだけど、それは鮮烈に覚えてんねん。」
g:「また古い話だねー。」
b:「今の40代くらいだと掛布は伝説の選手やろうけど、俺的には若手の頃から追ってきたリアルタイマーなんやな。ところが村山実になるともう超伝説的人物やねん。」
g:「ふむ。」
b:「村山実って1972年まで現役やってるから、掛布と村山って今で言えば中野拓夢と鳥谷敬くらいの距離感なんやけど、自分的にはものすごく離れてる感じがする、っていう。」
g:「要は、自分が認知する以前は紀元前的な感覚になる、っていうことだね。」
b:「田中角栄と佐藤栄作もそんな感じやな。田中角栄はリアルタイム、佐藤栄作は歴史上。西城秀樹はリアルタイムやけど錦野旦は歴史上。キャンディーズはリアルタイムで木之内みどりは歴史上。それから・・・」
g:「いや、それはわかったから、、、音楽の話をしようか。」
b:「お、おう、そうやったな。」

Glenn Frey / The Allnighter(1984)

g:「グレン・フライのシングル“Sexy Girl”が夏頃ヒットして。」
b:「ギンギンのロックではないけど、クールでええ曲でやなって思うたわ。」
g:「兄がなぜかイーグルスの『The Long Run』を持ってて、グレン・フライは一応認知はしてたんだよね。」
b:「“New Kid In Town”とか演ってた、イーグルスの軽い方の人っていう認識やったな。」
g:「今で言う“じゃない方”(笑)」
b:「“Hotel California”とか“Desperado“とか、名曲はだいたいドン・ヘンリーのヴォーカル曲の印象やもんな。」
g:「確かに。」
b:「たぶんベスト・ヒットU.S.Aで観たんやろうけど、“Hotel California”のライヴ動画、ドン・ヘンリーがドラム叩きながら歌ってて、ヒゲモジャで存在感があって。グレン・フライの方は、どれが誰やら全然わからんかった(笑)」

g:「そういうグレン・フライらしい、ソフトな軽さがこのソロでも印象的だよね。」
b:「“I Got Love”とか“Lover's Moon”とかA.O.Rっぽいのが特にグレン・フライっぽいイメージどおりでけっこう好きやったわ。」
g:「初期のイーグルスのカントリーっぽいヒット曲はグレン・フライのヴォーカル曲だったね、思い起こしいぇみると。」
b:「“Take It Easy”に“Peaceful Easy Feeling”。」
g:「カントリーっぽいイメージがあるよね。」
b:「“Tequila Sunrise”もグレン・フライか。」
g:「ところがこの人、A.O.Rだけじゃなくて、ノリノリのロックンロールがけっこう好きみたいで、タイトル曲の“The Allnighter”もわりと50'sっぽいし、“Better In The U.S.A”なんて軽いノリのロックンロールも演ってたり。」
b:「サントラかなんかでも“The Heat Is On”とか派手なん演ってたしな。」

b:「そもそもグレンはエルヴィスとか大好きやったんやろな。粋なロックンロールと甘いバラード。若く勢いがあった頃のアメリカン・ドリームへの憧れ、みたいな。」
g:「グレン・フライとは対称的に、ドン・ヘンリーはビターチョコレートみたいに苦くて重い雰囲気を漂わせてるよね。」
Don Henley / Building The Perfect Beast(1984)
b:「大ヒットした“The Boys Of Summer”なんて、イーグルスへの郷愁が漂いまくってる。」
g:「通りには誰もいなくなった/浜辺にも誰の姿もない/吹きぬける風がもう夏は過ぎてしまったことを告げていく、みたいな歌だよね。」
b:「ただ、郷愁に浸るだけじゃなくて、音楽的にはミッド80'sっぽい音を追求してたりもする。」
g:「“All She Want To Do Is Dance”とか、ファンキーな要素もあるソウルサウンドだったり。」
b:「“Man With A Mission”みたいなロックンロールや“You Can't Make Love”みたいにグレン・フライが演りそうなミディアムのポップもあったりけっこう幅広い。」
g:「ドン・ヘンリーのイメージにしっくりくるのは“You're Not Drinking Enough”みたいな渋めのバラードだけどね。」

g:「長いこと同じ釜の飯を食った同士でもあり、バンドのイニシアチブを巡るライバルだった二人には、本人たちしかわからないような愛憎入り交じるような感情ってあったんだろうね。」
b:「お互いが影響を与え合ったり受け合ったり。顔も見たくないと思う時期もあれば、コイツこそ最高のパートナーだと思うようなこともあったやろな。」
g:「おまえがそっちへ行くなら俺はこっち、みたいな。」
b:「少年の頃は似たようなタイプだった二人が、そうやってそれぞれの路線を確立していったりするもんやねんな。」
g:「この二枚のアルバムを聴く限りでは、二人ともイーグルスという偉大な過去からどうやって遠ざかろうかとしている感じがするよね。」
b:「グレン・フライはけっこう未練なく軽々と、イーグルス時代にはできなかった本来の自分らしい音を演ろうとしていて、ドン・ヘンリーの方は逆に、未練たっぷりながらも無理してイーグルスとは違う方向を見出そうとしてる感じがするねんけど。」
g:「グレン・フライの方が、ちょっと立場逆転してスッキリしてる感じ。」
b:「初期はグレンがリードしてたのにいつの間にかドンの存在感が増して、気がついたら“じゃない方”扱いにされてた鬱憤がありそうやな。」
g:「ドン・ヘンリーは、昔のライバルを無視してるフリしてめっちゃ意識してる(笑)」
b:「イーグルスをちゃんと聴くより先に二人のソロを聴いてるから、イーグルス時代から追いかけてきた人が聴くのとはだいぶ印象が違うんやろな。」
g:「初期からイーグルス聴いてる人からしたら、イーグルスそのものも初期と末期では違うバンドみたいだろうし、聴いた時代によって印象がずいぶん変わるかも。」
b:「改めて聴くと二人とも、アメリカンのルーツ・ミュージックに根ざした音を吸収しながら、自分流に消化して表現していたアーティストやったんやな。」
g:「若い頃にはなんとなくいいなと思ってただっけだったけど、聴き直してみると感慨深いね。」
b:「わりと普通にまとめたな(笑)」

The Jacksons VS Prince & The Revolution

golden(以下g):「80年代といえば、マイケル・ジャクソンとプリンスは避けて通れないよね。」
blue(以下b):「モンスター級のアーティストやからな。」
g:「実は二人とも、そんなに熱中して聴いたわけじゃないんだよね。当時も今も。」
b:「うん、正直なとこ、そうやな。もちろん嫌いではないんやけど。」
g:「でも、積極的に聴いてなくても聴こえてきてしまうくらい、ビッグヒットを連発してたよね。」

b:「マイケルの『Thriller』なんか、あらゆる場所で目にしたし、聴こえてたしな。どこがええんか全然わからんかったけど。

g:「マイケル・ジャクソンってやっぱりすごいんだな、って思ったのは『Thriller』よりも、その後ジャクソンズ名義でリリースされた“State Of Shock”を聴いてからでした。」

b:「これ、ミック・ジャガーがめちゃくちゃかっこええねんけど、そのミックと完全に渡り合ってるんよな、マイケルが。」
g:「ムーンウォークとか、そういうダンサーやパフォーマーとしてではなく、ヴォーカリストとしてやっぱりすごい人なんだな、って。」
b:「あの曲が入ってたアルバムって、一応ジャクソンズ名義なんやけど、実質はソロの寄せ集めっぽかったけどな。」

The Jacksons / Victory(1984)

g:「このアルバム、マイケルは“State Of Shock”以外には兄ジャーメインとの“Torture”に参加してるのと、完全にソロの“Be Not Always”の2曲のみなんですね。」
b:「でも、その2曲がまた秀逸な出来という。」
g:「“Torture”のジャーメインとの掛け合いはいいよね。」
b:「俺、マイケルはほんま好みではないんねんけど、マイケルのバラードは好きなんよ。なぜか。」

g:「“Be Not Always”なんて、バックはキーボードだけのドラムレスなシンプルなアレンジでこれだけ聴かせてしまうっていうのは、歌の持つ力そのものだよね。」
b:「ほんまマイケルのバラードはええよ。ダンスナンバーはチャカチャカとやたらうるさくて全然聴いてられへんねんけど。」
g:「さっきも言ってたよね。」
b:「『Thriller』で聴くのは“Human Nature”だけ。『Bad』は“Man In The Mirror”。」
g:「どっちも名曲だよね。」
b:「“I Just Can't Stop Loving You”もええし、もっとええのが『History』に入ってた“You Are Not Alone”な。“Earth Song”もええし、ベタやけど“Heal The World”も泣ける。」
g:「マイケルは苦手といいながら、けっこう聴いてんじゃん(笑)」

b:「それはともかくな。プリンスもいまいち苦手でな。」
g:「そう言いながら聴いてるんでしょ(笑)」
b:「まぁ、聴いてんねんけど。」
g:「でもほんと、最初に“When Doves Cry”のMTVとか観たときは、なんか気持ち悪い感じしかしなかったよね。」
b:「まぁ高校生とかくらいやと、自分の共感の範疇以外はなかなか受付けられへんもんやからな。あれに共感できる高校生の方が異常なんちゃうか。」
g:「プリンスって実はかっこいいの?って思ったのは、『Around The World In A Day 』を聴いてからでした。」

Prince & The Revolution / Around The World In A Day(1985)

b:「“Raspberry Baret”がなんともポップで、気色悪いなりになんかだんだんと気持ちよくなってきたんや。」

g:「全然意識してないときにふと♪ラーズベリベレ♪なんてフレーズが出てきて、それがずーっと頭から離れないようになるような、そんな病みつき感があるよね。」
b:「そーなんよ。プリンスって。」
g:「いつの間にか脳みその中に入りこんできてる。」
b:「嫌よ嫌よも好きのうち、みたいなね、倒錯感がやがて中毒になっていくみたいな(笑)」

g:「“America”を聴いたときに、普通にロックだな、って思ったけど。」
b:「『Purple Rain』もかなりロック寄りやったけど、このアルバムはギンギンのロックというより中期ビートルズっぽい感じもあったから入りやすかったな。」

g:「“Condition Of The Heart”みたいなサイケデリックっぽい作り込んだ曲があったり、“Tambourin”みたいな実験的でミニマルなファンクがあったり、曲のバリエーションも広くて。」

b:「気色悪いヌメヌメ感も低めやしな。プリンスのレコードで一番アクが少ないんちゃう?」
g:「プリンスの作品としては、今思えば大人しすぎるくらいだけどね。」
b:「まぁ、確かに。ただ、『1999』や『Purple Rain』でのドぎついプリンス臭を薄めてくれたから自分のように拒否感があった人にも届いたという面もあるかもな。」

g:「ジャクソンズの『Victory』もプリンスの『Around The World In A Day』もどっちも、本人のナンバーワン・スタイルというよりはアナザーサイドっぽいかもね。」
b:「大ヒット作の揺り戻しというか、こういうのも演っちゃえるんだけど的な。」
g:「そういうのがサラッとできるところが天才の天才たるところかも知れないね。」
b:「サラッとかどうかはわからんけどな。」
g:「大ヒット作では本来やりたいものよりもやや力み気味・飾りすぎでウケ狙いに寄り過ぎたから、もっと自分自身の本質に近いものをスッと出してみた、っていう印象もある。」
b:「ヒット前だったらプロデューサーに修正されるけど、ヒットした後だから口をはさませへん、みたいな。」
g:「マイケル・ジャクソンって、本当のところはどんな人物だったんだろうね。」
b:「プリンスもな。」
g:「二人とも、後年になるに連れて、演じたキャラの仮面が脱げなくなって過剰なプレッシャーに追い込まれていたような気もするんだよね。」
b:「そういう点でも、この時期の『Victory』や『Around  The  World  In A Day』はちょっと余裕を感じるな。大ブレイクまで必死に登り続けて、ちょっと力抜いて軽く演ってみた、みたいな。」
g:「そういうものすら絶賛されるに至って、揺るがないモンスター・アーティストになっていってしまった?」

b:「そういう面もあるやろな。」
g:「数年後にリリースされる『Bad』や『Sign Of The Times』みたいな弩級の作品は、ひょっとしたら作らなかったほうが本人にとってはよかったのかも知れないね。」
b:「いやぁ、天才にとっては、自分の才能を押し留めることのほうが不幸なんちゃうか?」
g:「そうなんだろうか。」
b:「いや、知らんけど(笑)」



Howard Jones VS Eurhythmics

golden(以下g):「80年代イギリス発のニューウェイヴ・サウンドは、ギター系のロックだけではなく、エレクトロ・ポップ的なものもすごくヒットしてました。」
blue(以下b):「俺はあんまりその手のは聴かんかったけどな。ウルトラヴォックスとかヒューマン・リーグとかそういうのやろ。」
g:「けっこうたくさんいろんなバンドがありましたね。デペッシュ・モードとかO.M.D、ヤズー、ブロンスキービート〜コミュナーズとか。」

b:「ニューオーダーが苦手やってん。なんかイラッとするっていうか。」
g:「けっこう暴力的なくらいの打ち込みビートだったですね、あれは。」

b:「正確に言うとな、レンタルレコード屋でバイトしてたときの同僚でニューオーダー好きやった奴がおって、そいつが嫌いやってん。

g:「坊主憎けりゃ袈裟まで憎いパターン(笑)」

b:「ふにゃふにゃナヨナヨしててな、異常に潔癖症で、またそいつがよー休みよんねん。」

g:「いるね、そういうタイプ。」

b:「そのくせ厚かましくて。出勤したらニューオーダーがんがんかけよんねん。」

g:「人の迷惑顧みず(笑)」

b:「そういうたらその手のエレクトロ・ポップには珍しく、ハワード・ジョーンズは好きやったわ。」

Howard Jones / Human's Lib(1984)

b:「なんかな、そのニューオーダーとか、ああいう裸でクネクネ踊ってるようなんとはちょっと感触が違うやろ?」
g:「すごい偏見(笑)。まぁでも、音質もやわらかいというか、ギスギスしてないよね。」
b:「そうそう、ヒューマニスティックっていうか、音がやわらかい。」

g:「一人でシンセ弾きながらインカムマイクで歌うっていうのは斬新だったよね。」
b:「ヘアスタイルとかも注目されてたな。」
g:「奇抜な印象の割に音はちゃんとしてて。80年代にデビューしたからエレクトロ・ポップを演ってたけど、10年早く生まれてたら弾き語りっぽいのを演ってたかもしれないですね、この人は。」
b:「そんな感じやな。」
g:「このアルバムは大ヒットしたけど、“New Song”が大好きだったなぁ。」
b:「あれもええ曲やな。」
g:「目に見えるものや聴こえてくるものに惑わされちゃいけない/物事の両面を見て/心の鎖を解き放って、みたいな歌詞がいいんだよ。」
b:「いかにも好きそうやな。ちょっと優等生っぽい理想主義な感じな。」

g:「ユーリズミックスも、デビューした頃はエレクトロ・ポップっぽいグループでした。」
b:「最初観たときはなんか気色悪うーって思うたけど。」
g:「アニー・レノックスのユニセックスっぽいルックスは、ちょっと異様な感じだったよね。」
b:「“Sweet Dreams”とか、無機質なビートで平坦なメロディーの歌を無感情に歌うのがな、怖かった。」

g:「でも実は、サム&デイヴの“Whap It Up”をカヴァーしてたり、初期からソウルフルな一面も覗かせていたりもするんだよね。」

b:「最初に、あ、このバンドはちょっとちゃうんやな、って思ったんは“Right By Your Side”っていう曲やったな。ちょっと跳ねたリズムのファンキーな曲調で。」

g:「サンバやらカリプソっぽいリズムも取り入れてて、“Sweet Dreams”でのユーリズミックスとはイメージ違う印象だったかな。」

Eurthyhmics / Touch(1984)

b:「で、この曲で聴いたあとに“Here Comes The Rain Again”とかを聴くと、なるほど、エレクトロ・ポップ的な面がそれほど気にならず、むしろソウルフルなアニーの歌がよく聴こえてきたりしたから不思議なもんやな。」
g:「無表情な歌のトーンの中に、ところどころエモーショナルなフックが入ってくるのがいいよね。」

b:「人間嫌いのシュールな感じがぐるっと一周回って、結果的にヒューマニスティック、みたいな。」

g:「真っ直ぐ素直に、じゃなくて、ねじれてねじれた結果、一番ド真ん中にたどり着いた、みたいな感じがあるよね。」

b:「ピュアすぎる誠実さは眩し過ぎてしんどいけど、ユーリズミックスの誠実さはなんとなく受け入れてまうねん。」

b:「ハワード・ジョーンズもユーリズミックスも、西欧人特有のヒューマンライツやらエコロジーやらアニマル・ウェルフェアやらの匂いが時々鼻についたりはするけど、演ってる音楽そのものは過去のソウルやポップミュージックの伝統をしっかりと吸収したうえで、時代のトレンドをつかんだいい音楽を演ってるなぁ、って思ってまうねんな。」
g:「最初は異端のような登場をしてきたけど、実は超正統派。」
b:「そうなんよ。正統派。」
g:「異端から正統へ、という点で言えば、実はビートルズやストーンズも、デビューした頃は異端中の異端だったんだよね。」

b:「ああ、そう言われるとそうやな。」
g:「新しい時代を切り拓く人たちっていうのは、そういう出現の仕方をするものなのかも知れないなぁ、とか思ったり。」
b:「ただ、やっぱり芸に普遍性があったから受け入れられたんやろな。」
g:「ファッションや音のデコレーションは奇抜でも、音楽そのものは普遍的な魅力があったんだろうね。」
b:「ユーリズミックスが次のアルバムでアレサ・フランクリンをゲストに招いたりしてたけど、やっぱり基本にはソウルがあるんやで。」
g:「ハワード・ジョーンズの曲なんかも、たぶん黒人シンガーが歌ったためちゃくちゃソウルフルだろうね。」
b:「アレサ・フランクリンが歌う“New Song”とか、ルーサー・ヴァンドロスが歌う“No One Is To Blame”とかな。」
g:「ホイットニー・ヒューストンが歌う“There Must Be Angel”とかプリンスの演る“Sweet Dreams”とかも聴いてみたかった。」
b:「ほんまやな。かっこええやろな。演ってほしいなあー、って、もうみんな亡くなられた方ばっかりやん。。」

 

 

 

Joe Jackson VS Elvis Costello

golden(以下g):「80年代ロックをテーマにしようと思ったときに、この人のことは書いておきたいと思ったのがジョー・ジャクソン。」
blue(以下b):「今や忘れられかけた存在だけど。『Body and Soul』っていうアルバムが好きやったなぁ。」
g:「独特の存在感があったよね。」
b:「このアルバムジャケットがソニー・ロリンズのオマージュやったということすら当時は知らんかってんけど。」
g:「ソニー・ロリンズの『Volume2』だっけ。聴いたことないけど。」

Joe Jackson / Body and Soul(1984)

b:「なんか飄々として人を食った感じがあって、リスペクトなのかおちょくってるのかよーわからんねんな、この人のやることは。」

g:「アルバムジャケットほどジャズ寄りでもないけど、ブラスセクションやジョー自身の吹くサックスがいい感じで。」
b:「1曲めからブラスセクションがパーラパーラパーラララ~って鳴り響くジャズっぽいというか都会的な感じで始まって、2曲めはラテンっぽいリズム、しっとりと歌い上げるバラードをはさんで、ホーンが高らかに鳴り響く“You Can't Get What You Want”と流れもすごくいい。」

g:「“You Can't Get What You Want”は

けっこうヒットしたイメージがあったんだけど、ビルボードで最高15位か。」
b:「俺の中では大ヒット曲やってんけどな。ホーンもカッコええねんけど、ピアノが粋やしベースはファンキーやし。スラッピングとかバリバリで。」

g:「当時はチョッパーって言ってたけどね。」

b:「ちょっとぶっきらぼうなジョーのヴォーカルもカッコええし、You can't get what you want,till you know what you want、自分が求めているものが何かを知らない限り手に入れることはできない、っていうメッセージもクールでええなと思うたんや。」

g:「Still everybody want to happy ending、みんな結局未だにハッピーエンドを求めてる、って歌う“Happy Ending”もよかった。」

g:「エレイン・キャスウェルっていう女性シンガーとのデュエットしてたやつね。」

b:「ポップな歌メロとシニカルな歌詞のギャップがね、この人らしい。」

g:「そもそもジョー・ジャクソンってパンクのシーンから出てきた人で。」

b:「後になって聴いた『Look Sharp』や『I'm The Man』もカッコよかったなぁ。シャープでソリッドで。」
g:「その後『Jumpin' Jive』ではサックスを吹き出して40年代のジャンプブルースを演ったり、『Night and Day』ではパーカッシヴなビートに乗せて粋なピアノを弾いたり。」
b:「パンクのシーンから出てきたとはいえ、実は英国王室音楽院を出たエリートやったりして多才やねんな。」

g:「クラシックを学んでたらしいね。ラストの“Heart Of Ice”なんかではそういう片鱗も見えたりする。」

b:「ピアノやクラリネットで始まって徐々にベースやドラムが入ってくるとことかええな。」

g:「その多才さ故なのか、アルバムごとにしっかりコンセプトを定めて突き詰めたり、コロコロとスタイルを変えたり。」
b:「わりと理論派で、まぁいわゆる偏屈やな(笑)」
g:「でも実はチャーミングなところやロマンティックなところもあったりするんだよ。モータウンっぽいリズムをいただいてきた“Go For It”とか、イメージにはそぐわないくらいの元気なポップ・ソングだったり。」
b:「つい♪Sugar Pie,Honey Pie〜って歌い出しそうなイントロな(笑)」
g:「ベイブ・ルースやレイ・チャールズが出てきたり。」

b:「多才で偏屈でコロコロスタイルを変えていくといえば、やっぱりエルヴィス・コステロやな。」
g:「84年というと『Goodbye Cruel World』の頃か。」
b:「当時は“Everyday I Write The Book”がヒットした前作『Punch The Clock』とか、次作の『King Of America』の方が好きで、今いちこれはピンと来んかってんけど。」
g:「ちょっと地味だよね。コステロ自身も失敗作だったって言ってるらしいけど。」
b:「でもな、今聴いたらけっこうカッコええで。」

Elvis Costello & The Attractions / Goodbye Cruel World(1984)

g:「“The Only Flame In Town”ではダリル・ホール、“I Wanna Be Loved”ではスクリッティ・ポリッティのグリーン・ガートサイドがゲスト参加。」
b:「その人選からもわかるように、このアルバムのコンセプトはソウル・ミュージック。」
g:「しかも、わかりやすいモータウンやアトランティックではなく、もうちょっとマニアックなところを狙ってるよね。」
b:「コステロ流のフリーソウルやな。」

g:「“I Wanna Be Loved”とか、ひねくれ者のコステロが歌うからこそ響く感じがあったりする。」

b:「パーカッションとか、ちょっとダブっぽいリズムとか緊張感のあるストリングスとか、カーティス・メイフィールドあたりの影響が伺えるし、コステロ独特のカスレ声のシャウトとか、ソウルフルやなぁ。」

g:「コーラス隊とか湿った感じのサックスとかもね。」

g:「2人とも、多才で器用でいろんなスタイルを演ってしまうし、興味が広くて博学というか知識が広いというのが共通項。」
b:「コンセプトを定めるとそこに没頭して突き詰めていくし、やりきったあとはそのスタイルを捨てるのも早い、ちゅーのも共通してるな。」

g:「ちょっとおかしな大学教授みたいな感じでもある。

b:「音楽そのものが批評的というか、表現姿勢がジャーナリスティックっていうか。

g:「理屈っぽそうだし、物事を斜めから見ては皮肉っぽい表現をする。」

b:「いや、それは分析的であり論理的であるっていうこと、それをある意図の元に意識的にやっているっていうことやねんけど。」

g:「まぁ、肉体派や直情派ではないよね。冷静というか。」

b:「でもその割には毒は吐きまくる(笑)」
g:「うーん、なんとなく自分が共感しやすいキャラだというのはよくわかるね・・・」
b:「ま、理屈っぽいし、凝り性やし、偏屈やわな・・・自分でも認めるわ。」

g:「ジョー・ジャクソンやエルヴィス・コステロが好きでそういうふうになっていったのか、そもそもそういうキャラだからこそ共感していったのか。」
b:「ま、両方ちゃうか。」

g:「クールでアカデミックでありつつもロックンロールのスピリットを体現しようとする姿勢、不良やヤンキーじゃなくてもロックンロールできるんだっていう態度。」
b:「広い額のうすらハゲでも、メガネのチビデブでもロックンロールできるんやっていう。」
g:「ピーッ。身体的特徴をからかうような発言はハラスメントです。」
b:「いやいや、ジョー・ジャクソンもコステロもそんなん気にせーへんって。」

g:「まぁいいんだけど炎上はご勘弁を。」
b:「自分的には、こういう偏屈で理屈っぽいアーティスト、不良っぽい風体ではないアーティストがこうやってヒットを飛ばしていたのはめちゃくちゃうれしいことで。」
g:「共感要素ありまくりだもんね(笑)」
b:「理屈っぽくて偏屈でええやんか、チビハゲでええやんか、と。」
g:「でも、チャーミングなところやロマンティックなところもあるってことも言いたいわけだよね。」
b:「いやいや、そこは自分で言うとこちゃうやろ。」

The Style Council VS Sade

golden(以下g):「10代半ばの頃ってやたらと激しい音を求めてたんだけど、時代的にはすごくスノッブでおしゃれなのが新しい音楽としてもてはやされてたんだよね。」
blue(以下b):「スタイル・カウンシルは、ポール・ウェラーが元ジャムやなかったら聴こうと思う接点がなかったかも知れへんな。」
g:「いや、実際、最初に『Cafe Bleu』聴いたときは全然ピンと来なかったもん。」

The Style Council / Cafe Bleu(1984)

b:「めちゃくちゃおしゃれな音やからな。しがない田舎の高校生とは接点がなさすぎた。」
g:「そもそも、ロックのギターの音は歪んでいるものだと思ってたからね。」
b:「そうやなー。」
g:「今まで王将のチャーハンや餃子とかせいぜいファミレスのハンバーグくらいしか食べてなかったのに、いきなりフレンチのコース料理に連れていかれた感じっていうか。」
b:「出てくるもんがみんな食うたことないもんばっかり(笑)」
g:「なんとかのテリーヌとか、なんとかトリュフのなんとか風とか(笑)」
b:「そもそもポール・ウェラーが歌ってへんラップの曲が入ってたりとかな、意味わからんかった。」
g:「ミック・タルボットのインストとか、D.C・リーがメインの曲もあったね。」
b:「翌年にセカンド『Our Favoulite Shop』が出る前くらいか、シングルで“Walls Come Tumbling Down”がリリースされて。これ聴いてカッコええやんっ!って思ってから聴き直した覚えがあるわ。」
g:「あの曲はジャムにも通じる、ポール・ウェラーのモッズ好みがわかりやすい曲だからね。」

b:「で、その後、ファーストの方がいろんなことにチャレンジした充実作やったんやなって思い直したんよ。今聴くとファーストの方が楽しめる。」
g:「今もおしゃれとは程遠いけど。」
b:「おしゃれかどうかはどうでもええねん。ファンクやソウル、ヒップホップ、ジャズ、ボサノヴァ・・・いろんな音楽のスタイルを片っ端から演ってみたっていう感じがな、カッコええ。」
g:「スタイル・カウンシル=形式評議会、ていう名前のとおりだね。」
b:「ロック以外ならなんでも演るっていうのは、ある意味、当時の音楽シーンに対するポール・ウェラー流の反逆精神の現れやったんやろうな。」
g:「形骸化して形式を模倣するだけのロックにスピリットが感じられないことへのアンチテーゼ的なことだったんだ、と。」
b:「ジョン・ライドンがフリーキーな方へ行ったり、クラッシュがレゲエやダブを取り込んでいったのとスピリット的には同じことやったんやろな。」
g:「おしゃれで非ロック的といえば、シャーデーも大ヒットしました。」
Sade / Diamond Life(1984)
b:「シャーデーって、ヴォーカルのお姉さんのソロやなくてバンド名やってんな。」
g:「シャーデー・アデュというヴォーカリストを擁するバンドがシャーデー。」
b:「わかりにくいな(笑)」
g:「いや、ヴァン・ヘイレンとかもそういうバンド名だし。」
b:「まぁ、それはええねんけど。」
g:「音楽としてはいわゆるロックとは程遠いスムーズ・ジャズ。」
b:「なんかなぁ、ヌメっとしてて湿気が高いねんなぁ。」
g:「しっとりしてて潤いがあるというべきでしょ。」
b:「苦手やったわ。」
g:「これもいいなぁと思ったのは数年後だったかもね。」

b:「もっとジャズっぽいと思ってたけど、聴き直してみるとむしろソウルっぽいんやな。」
g:「実は、ティミー・トーマスの“Why Can't Live Together”というソウルの名曲をカヴァーしたりもしてます。」
b:「なんかいやらしい音色のサックスばっかり目立ってた印象やったけど、けっこうパーカッションが効いてるな。」
g:「パーカッションの生み出すナチュラルなグルーヴ感と、エレクトリックピアノの硬質な音色が、異なる風味と食感を作りだしてるよね。」
b:「シャーデー・アデュの歌もわりとさっぱりしてて。」
g:「さっぱりしてるけど、濃厚なコクもある。油切れは意外とよくて胃もたれしない。」

g:「あの当時にこういう音楽に触れていたっていうのは、後々にいろんな音楽を聴けるようになるための素養になったりしたのかも知れないですね。」
b:「高校生くらいの頃までって、正直カッコええかそうでないか、聴いてガツーンとくるかそうでないか、しかなかったと思うわ。今思うと。」
g:「興奮剤、カタルシス生成装置としてのロック。」
b:「とりあえずテンション上がればOKっていう、な。」
b:「こういう音楽で鳴っている音の豊穣さ、複雑さ、トータルのアンサンブルとしての美しさみたいなのに気づいたことが、音楽を聴くという行為を、若い頃の一時期の熱病ではなくずっと楽しめる感性の生成に役立ったんちゃうかということやな。」
g:「・・・という仮説。」
b:「いや、ほんまそうやで。うちの兄貴とかはメタルしか聴いてへんかったから、もう還暦にもなるのにメタルしか聴いとらへん。」
g:「それはそれですごいことだけどね(笑)」
g:「子供の頃はハンバーグやフライドポテトが大好きでも、大人になると出汁の旨味やらそーゆーもんがわかるようになるでしょ。」
b:「そやな。」
g:「でも、大人になってもハンバーグやフライドポテトしか食べてなければ、出汁の旨味には気づかないわけですよ。いろんなものを食べてはじめて、そういう舌が育っていく。」
b:「その理論には賛成やけど、いちいち料理に例えんでええねん。」

Van Halen VS Twisted Sister

golden(以下g):「前回のハードロック/ヘヴィメタルの話の続きなんだけど。」
blue(以下b):「まだ続くんか。」
g:「兄の棚から失敬してはひととおり有名なバンドは聴いてみたんだけどね。」
b:「ブラック・サバスからアクセプトまで、クワイエット・ライオットからヨーロッパまで(笑)」
g:「結局一番気に入ったのはヴァン・ヘイレンだったような。」
b:「めちゃくちゃ売れてたな、『1984』。」

Van Halen / 1984(1984)

g:「ヴァン・ヘイレンってさ、エディーが超絶テクニックのギタリストだったからハードロック/ヘヴィメタルにカテゴライズされてるけど、例えばジューダス・プリーストやアイアン・メイデンみたいなゴリゴリのメタル・ゴッドとは全然立ち位置が違ったよね。」
b:「本人たちは“Big Rock”を自称したりもしてたからな。広まらんかったけど。」
g:「『1984』にしても、オープニングからシンセだし、大ヒットした“Jump”もハードロックというよりはポップロックだし。」
b:「その一方で“Panama”みたいなバリバリのギター・ロックを演ってたり、その振り幅の広さが魅力でもあった。」
g:「あと、ヘヴィメタルバンドがなぜか演りたがる、臭いパワー・バラードをデイヴ・リー・ロス期のヴァン・ヘイレンは一切演らないんだよね。」

g:「ヴァン・ヘイレンは、もっと健康的でスポーティーっていうか、アメリカらしい開放感や明るさがわかりやすくて、すんなり受け入れられた気がするんだよね。」
b:「ま、明るすぎるのもどうかとは思うけど、有無を言わさず巻き込まれてしまうようなパワフルさエネルギッシュさがあったな。」
g:「デイヴ・リー・ロスが抜けてサミー・ヘイガーになってからはバカっぽい底抜けのテンションがなくなって普通のロック・バンドになっちゃったけど、僕はデイヴ時代の底抜の明るさが好きだったかな。」
b:「そうやねん。サミー時代もあれはあれでまとまってるけど、やっぱりデイヴの破天荒さがヴァン・ヘイレンの魅力やったかな、って思うわ。」
g:「バカっぽい底抜けのテンションっていう意味では、トゥイステッド・シスターだけは大好きだったかな。」
b:「確かに、バカテンション(笑)」
Twisted Sister / Stay Hungry(1984)
b:「ジャケットからしてエグい。」
g:「インパクトだけを狙ったケバい衣装とメイク。」
b:「こういうぶっ飛んだスタイルそのものが、バカを承知でやってますっていう開き直りがあって好きやけどな。」
g:「トゥイステッド・シスターはまさに、バカを自覚してバカをやってるっぽいよね。」
b:「一番カッコ悪いのは、自分のバカさに自覚なくカッコつけてる奴。逆に、自分のバカさを自覚した上で振り切ったバカができる奴って実はクレバーでカッコええ。」
g:「そういうところ、“様式美”だのなんだの言って前例踏襲してる感より好感が持てたよね。」

g:「このバンドって、メタルっぽいことも演ってたけど、本質はグラム・ロックの進化系だったのかも知れないね。」
b:「ヒットした“We're Not Gonna Take It”なんて普通のロックンロールやからな。」
g:「俺たちはもう我慢できない/俺たちは正しい/俺たちは闘う/俺たちは自由だ/今に見てろよ、っていう歌詞も王道のロックンロール。」
b:「元々ロックンロールはティーンエイジャーのための音楽で、思春期特有のやり場のない苛立ちなんかをぶっ飛ばすための音楽やからな。チャック・ベリー〜ザ・フー〜セックス・ピストルズと続いた系譜を80年代に蘇らせたのはトゥイステッド・シスターやったんかもとも思ったりするねんけどな。」
g:「それはさすがに買いかぶりすぎ(笑)」
b:「いや、あの“We're Not Gonna Take It”や“I Wanna Rock”のビデオでのわかりやすさは実際かなり影響力あったんちゃうかな。」
g:「親や教師の言うことなんて聞かなくていいんだぜ、っていうティーンエイジャーらしい価値の再提出。」
b:「ロックンロールはティーンエイジャーのもの、っていうのも、古き良きアメリカへの回帰のひとつかもな。」
g:「古き良きアメリカへの回帰はいいんだけど、ただ今回のこの2枚のジャケット、、、今の時代だったらどっちもアウトだね。」
b:「確かに。まぁそれも時代らしさってことで。」

Appendix

Profile

golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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